パティスリー オー フィル ドゥ ジュール(1)『ミルフィーユ バニーユ』『タタン』『アリュメット フロマージュ』

福岡市中央区、市営地下鉄・桜坂駅から4分ほどのところにある「パティスリー オー フィル ドゥ ジュール」さん。2015年12月オープン。パリの5ツ星「ホテル ルブリストル」のメインダイニング「エピキュール(3ツ星)」で、今は亡き名匠ローラン ジャナン氏の下でスーシェフを務めた実力派 吉開雄資さん(1980年生)が地元に帰ってオープンしたお店です。
ちなみに店名 Patisserie Au fil du jour “パティスリーの流れゆく一日”は、ジャナン氏の本のタイトルだそうです。
美しく整えられた生ケーキの姿は、いずれもホテルメイドのクォリティの高さを感じさせずにいません。輝くばかり。
始めての訪問であれもこれもと欲張りたくなりましたが、見掛けも構成も新味を感じさせるプチガトーと、好物のチーズパイなどを選んでみました。
なお、狭い店内にはほかにお客様もいらっしゃったし、コロナ禍でもあるしで、販売スタッフの方ともほとんどなにも話さずに速攻で購入しましたので、構成など間違っているかもしれません。乞うご寛容。

●『ミルフィーユ バニーユ』  3.5×12.5cm 高さ5.5cmほど。
(ミルフィーユ用に形が崩れないようにしてありましたが、最後の最後、箱から取り出す時に粉糖をこぼしてしまいました、あっちゃあ。申し訳ない)
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スッと奇麗な姿のミルフィーユです。サイズも大きめ。
フィユタージュが2枚、クリームは下からパティシェール、ヴァニラ風味のシャンティ、トップにカラメリゼしたクレームブリュレ。金粉チラリ。
ふぅむ、ミルフィーユにクレームブリュレというのが気を惹きますね。
が、しかーし。後からよくよく考えると、フィユタージュのカラメリゼがブリュレに場所を移し、クレームレジェールがシャンティとブリュレに分解されたと考えれば、姿は違えど構成はまったく同じということ。いわゆる再構築という手法、現代的にアップデートといったところでしょうか。
クラシックなお菓子に、新鮮な気持ちで向き合うためにはとても有効な手だてだと思います。

aufil_millup.jpgフィユタージュはしっかり層が出来ていますが、サックリとしたクッキー風の食感があるのでおそらくアンヴェルセで折られているのでしょう。よく焼き込んだ粉の香りとバターの豊満な香りに包まれます。
3種類のクリームにはすべてヴァニラが入っていて、甘い魅力を盛大に振りまいています。フィユタージュがしっかりした味わいなので、この甘いイメージ(砂糖の甘さはそれほどでもない)は、いいバランス。
さらに、ブリュレのカラメリゼのスモーキーな香りが意外と印象深く響きます、へぇ。ブリュレのカラメリゼは焼ごてにこだわっているようで、古くから受け継がれている手法を大切にしている職人魂(フィユタージュの美しい仕上がりからも当然分かります)も伺え頼もしいですね。
ミルフィーユの昔ながらのオーソドックスな味わいを、気持ちも新たに味わわせてもらいました。お見事です。

●『タタン』  径5.8cm 高さ6cmほど。
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あら、これがタタンなの? 見慣れたタタンの姿とは異なりますね。
底生地もちょっと変わっています。フィユタージュの2番がわりと多いのですが、どうみても分厚いパンです。
仔細に見てみると、折り込んだ様子もあるので、たぶんブリオッシュのフィユタージュとよばれるもののよう。クィニーアマン(大甘ではありませんよ)のようにも見えるかな。あっ、だからか、菓名にタルトタタンのタルトがないのですね、納得。

林檎のカラメリゼとフィユタージュだけ、というシンプルさではなく、お手間入りの作りです。
林檎は、芯を抜いて薄切りにしたものをカラメルソテー。6層ほど積み上げて真ん中の空洞にさらさらレベルのカラメルソースとバターのダイスを和えたものを潜ませています。トップに、ぐるっとたっぷりとシャンティを絞って、これまたシナモンをたっぷり、香る~ぅ。
林檎は酸味のあるものを使っていてシャキシャキ感も残しています。それほど長く加熱されていないようですが、力のあるカラメルを纏って、ほろ苦甘の深い味わい。分厚いブリオッシュと合わせてバランスを取るのももっともです。トップのシャンティとシナモンも力強い林檎に合わせた意味がよく分かります。
手をかけた分、贅沢な仕上がり。元祖姉妹もびっくりの、タタンでした。

●『アリュメット フロマージュ』9×1.7cm 厚み1.4cm 総量100gほど。
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わっ、チーズパイがあるっ! きゃっ嬉しい。
このフィユタージュも繊細ですが、『ミルフィーユ バニーユ』に比べるとやや強い食感がありサクッサワサワとした食感。こちらは普通折りではないですかね。
たしかショーカードにはチーズを折り込んでと書かれていたような気がしますが、パルミジャーノレッジャーノのクリームを表面に塗って焼いているように見受けられます。成分表を見ると卵を使っていないので牛乳で溶いているのかなぁ。
それにしても、美しい焼き上がり。うっとり。 

aufil_cheespiepac.jpgallumette マッチ棒のように、反ったり曲がったりした部分が皆無、ピーンと背筋が伸びた姿。
プラスチックケースに14本収納されていますが、まったく隙なく無理なく詰められているのです。
本当に真っ直ぐに焼き上がっていればこそ。もうこれだけで、お美事。
パルメザンの深い旨味、濃厚な香り、フィユタージュの塩気に、軽やかな食感。チーズパイの王道の美味しさです。
どれもビールを呼ばずにはいません。おーい、誰かビール持ってこい! いやあ、まことにけっこうでげすなぁ。


高齢の母親が心配で毎月福岡へ帰省しているのですが、ずっと気になりつつなかなか寄れていなかったお店。二重の保冷バッグに大きな保冷剤という準備で念願叶ってようやく。そんな面倒な客に販売スタッフの方はとても親切(保冷剤を多めにしてくださったり、長時間の持ち歩きはお勧めしないようだったので新幹線の中で食べるかもと言うと、スプーンを付けてくれました)で、気持ちよく買い物が出来ました。これ、大事ですね。
さて。期待に違わぬ洗練された姿と味わい。ちょっとしか食べていませんのでかなりの独断ですが、どこか優しいトーンが基調にあるように感じました(たまたま?)。
ミルフィーユやタタンから察するに、伝統菓子の解体と再構築によるアーティスティックさが魅力と云えるのではないでしょうか。
でも基本の生地の美味しさ・美しさで分かるように、新しさだけを目指しているのではなく、伝統の技をしっかり受け継ぐアルチザンの姿勢があるのも嬉しい限り。再訪したいですね。

●『ミルフィーユ バニーユ』712円 『タタン』702円  『アリュメット フロマージュ』950円 (※内税)
●「パティスリー オー フィル ドゥ ジュール」
福岡市中央区桜坂1-14-9  TEL092-707-0130  定休日/水曜、不定連休あり  営業時間10:00~19:00
※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらのお店のプチガトーと珍しいペカンのお菓子をご紹介しています。