ミャーゴラ(5)『サントノーレ』

京都、大徳寺近く、北大路バス停から10分余りのところにある「パティスリーミャーゴラ」さん。他所のお店で食べられるようなケーキは作りたくないという奥山智浩くん(1984年生)のお店です。わがままのようにも映りますが、創造力こそが自身の存在意義だと考えている奥山くんにとっては、それが当たり前なのです。トップクラスの技術を身に付けていますが、誤解を恐れずに言えば、技術の追究よりアイデアによって差別化したいタイプですからね。
そんな彼が、第20回「3.14=π(パイ)の日R」キャンペーンの対象商品は『サントノーレ』。フランス伝統菓子だというのでちょいと吃驚。食べてみるとそのアレンジ力に2度驚いたのでした。

●『サントノーレ』  径6.5cm 高さ8cmほど。
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えーっ、これがサントノーレ? 既成概念を打ち破る姿。まっ確かに、飴がけのプチシュー乗っかっていますがね。いつものスタイリッシュぽさではなく、彼の仏像趣味から時代を飛び越えて土偶のようにも見えてしまう。ほーら、だんだんねっ、ふふふっ、愉快!

普通サントノーレでは底生地にフォンセやブリゼが使われるものの、シュー菓子のイメージが強いお菓子です。
ところが奥山印の『サントノーレ』は、パイのブーシェになっているではないですか。しかも分厚め。
うーむ、伝統回帰と見せて、別次元へワープ(今回の試作ではフリゼの仕込みが間に合わず、たまたまあったフィユタージュで代用していますが、本番ではブリゼ予定)。パイ生地の比率が高まって、明らかなパイ菓子へ。なんだか笑いが止まりません。
ブーシェの中にはカラメルクリームが流してあり、クレームディプロマットを詰めたプチシューを置き(なんと中に入っているのですよ)、ホワイトチョコ(イボワール)のガナッシュを立てたもので埋めています。定番のサントノーレクリームというかシブーストクリームというか、パティシェールといったものではありません。シェフ曰く「甘くしたくなかったのでクリーム無し」なのだとか。
上にもプチシューを2個、それぞれ天辺をカラメリゼ。最後の仕上げはカマルグの塩をパラリと。
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いざ、ナイフ入刀。
おっ、サクッと気持ちよく切れますね。ほろ苦さのでた風味の強いフィユタージュとカラメルクリーム、ホワイトチョコガナッシュ(ヴァニラ入り)。それぞれがぶつかり合い、より一層の高みへ駆け上るかのよう。
シャンティではなくコクのあるガナッシュにしたことで、やや似たよう雰囲気でありながら、俄然印象が深まっています。プチシューたちもカラメリゼの小気味のいいカリカリとした食感で存在感をアピール。

特筆ものは、最後の仕上げに振られるカマルグの塩。塩はふつう甘さを際立たせる役割ですが、パラッとわずかな塩、これが直接舌に触れることでハッとする強い刺激を与えると同時に、キレよくスッと引いてくれ、パイ生地の持つ塩気の旨味へと引き継がれるのです。それをガナッシュの円やかさとカラメルクリームのたっぷりした甘さで包み込む道程はストーリーが感じられ、つくづく感心させられました。
そうそう、プチシューの中はディプロマットでも邪魔しないでいいのですが、どうせここまで変えるなら(あはは~)檸檬の酸味を加えたり、はたまたウィスキーの芳醇な薫りを漂わせたり…もありかも。うるさくなるかなぁ。なーんて、食べ手の心も刺激されいろいろ夢想したくなってくるプチガトーではあります。
ともあれ。新機軸のサントノーレの誕生ですね、お見事!

ルコント杯で、シュー生地のお菓子で賞を獲得している奥山くんが、あえてシュー菓子をパイ菓子に位置付けを替えてまで挑んだ『サントノーレ』。伝統菓子に新生命を吹き込んだ感があります。いやはや、掟破りの荒技。彼らしさが横溢していますぞ。

●『サントノーレ』680円  (※内税)
●「パティスリーミャーゴラ」
 京都市北区紫野上門前町105-2  TEL075-204-5337  定休日/日曜・月曜  営業時間/12:00~19:00