ブーランジェリー ビアンヴニュ(2)『クイニーアンマン』

神戸市東灘区、阪急神戸線・御影駅から南西に10分ほど歩いたところ、山手幹線沿いにあるのが「ブーランジェリー ビアンヴニュ bienvenue 」さん。お客様が途切れることなく訪れる大人気店。
人気が出るのも当然。シェフの大下久司さん(1976年生まれ)は食品添加物を使用しない、イーストフードもなし、バターは四ツ葉のみ、フィリングなども出来るだけ自家製など、安心安全で美味しい食材を選んでくれています。やるからには、「自分が好きな物を食べてもらいたいし、自分が食べたくないものは作らない。もし儲けのために自分に嘘までついて作らなければならなくなったら、パン屋辞めます」ときっぱり。彼によれば、“物作りは心の問題”、要するに良心が痛むかどうかだとのこと。しかも、ご自分が納得した素材を厳選しているというのに、驚くような価格設定。
それを当然のこととして、神経質に唱わない大らかさがお店に満ちているのです。販売スタッフ達も商品知識が身に付いているだけでなく、気さくで親切。お店全体から、焼き立てのパンのように幸福のオーラが溢れ出ている感じがなんともいえず温かい。そりゃ、誰しも自分の店として通いたくなりますよね。
今回初参加の第19回「3.14=π(パイ)の日R」キャンペーンの商品も、「ずっと作りたいと思っていたんですよぉ」と作る機会を得たことを喜んでニコニコ笑顔。さて、どんな仕上がりでしょうか。


●『クイニーアマン』  径9cm 高さ5.2cm 120gほど。
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kouing-aman クイニーアマン? いや待て、よーくご覧ぜよ。誤字ではございません。
kouing-anman クイニーアマン! 一字違いで、新商品の誕生です。バンザーイ!
定番の人気商品に『クイニーアマン』(280円)がありますが、“アンマン”だけ取り出すと中華まんっぽい(あはは~)けれど、クイニーアマンに粒餡を入れるというのが正解。
これまで、「W.ボレロ」さんのプリュノー入りカネル風味、「パリゴ」さんの塩キャラメル入りは経験しましたが、初めての出会い。菓名も洒落ていて可愛い。お初って、嬉しいな。

クイニーアマンの部分は、粉は中力粉6に強力粉細粒4、バターは四ツ葉の無塩(こちらではバターはすべてこれのみ)。3ツ折り3回とごく標準的。
クイニーアマンに入るべき塩(もともとは有塩バターですが日本ではほとんど無塩を使用)は、クロワッサン生地に普通に入っている塩のみ。型の底にカソナードをたっぷり詰めたところに全体にカソナードをまぶしたクロワッサン生地を敷き、餡を詰めて畳み込んで口を閉じて焼いています。
餡は「ビゴの店」時代から馴染みのある松原製餡所のもの。北海道で特別栽培された小豆を使用した“特別栽培餡”。炊いたものをバットに移して冷ましますが、その状態のまま納品される特別の作り立て、新鮮そのもの。

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さぁ、景気良くガブッといきましょう。わっ美味しいぞぉ! 
分厚めのカラメリゼがパリンッと割れ、バターの風味とクロワッサン特有のふわんとした弾力にニマニマしていると、カソナードがジャリッと大甘、あぁ粒餡、あんこに辿り着いたぁ…というストーリーです。
たっぷりのカソナードがよく焦がしてあり、ほろ苦さを含んで思い切り深い甘さなのですが、塩気が弱いので、ぎゃークドイと品下ることにはなりません。粒餡はむしろ安らぎが感じられるほど。甘味を抑えた品のいい味わいで、小豆の風味が生きていますね。

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クロワッサンがバターの旨味を感じるパンなので、パン+餡+バター = 間違いない組合せなのです。小倉トーストの黄金トリオですね、名古屋だがねえ、おみゃあさん。足し算表記しましたが、味わいは掛け算的美味! 
今やどのパン屋さんにもある“あんバターサンド”は親戚筋になるのでしょうが、クイニーアマン版はここだけ(多分)。クロワッサン生地かバゲット生地かの違いもありますが、よりリッチで甘ーい贅沢にどっぷり浸れます。
クイニーアマン、なんで今までなかったの? と言いたくなる、いやすでに会う人ごとにしゃべりまくっている私です。お見事!


真っ白の洗いたてのコックコートがまぶしい大下シェフがあたたかく迎えてくれました。
「チャレンジしない人に成功はない」シェフの言葉です。小中高とサッカー少年で、今もヴィッセル神戸のスタッフとサッカーに興じることがあるという大のサッカーフリーク(前回お会いした時はアキレス腱断裂で右足にギブスしていたそうですよ)。シュートをしないフォワードは点を取れないという実感に裏打ちされているようですね。
私たちのキャンペーンなどシェフにとっては小さな小さな機会にすぎませんが、すかさず温めていた新作を実現させるあたりの機敏な積極性にも気持ちが反映されているのかな、と思ったりします。
パン職人さんは仲が良くて業界内の友人も多いようですが、じつは業界外の友人の方が多いという、拓かれた世界に住む大下シェフ。今後さまざまなチャレンジをして行きそうな気配がプンプン匂っています。
パン業界だけでなく日本経済の将来を冷静に分析し、次の一手を見据えている姿勢は街のパン屋さんというよりもビジネスマンという感じ。
だけど、ここが肝心なんですが、朗らかで元気いっぱい。眉間に皺なんかあーりません。つねに希望に溢れた雰囲気を纏っていて、どんな話し相手をも元気にしてしまうようなパワー。そういえば、うまくいっている人は“いつも上機嫌”とよく言われていることですが、まさに大下さんがそう。とても興味深い人に、また出会うことができました。

●『クイニーアンマン』350円  (※外税)
●「ブーランジェリー ビアンヴニュ」
 神戸市東灘区御影1-16-15  TEL078-771-2866  定休日/日曜  営業時間/8:00~19:00