グロスオーフェン(18)『シュネッケ』(カタツムリ型のチョコパイ)『キッシュ』

大阪府箕面市、阪急箕面線・桜井駅の改札からまっすぐ、小さな交差点の先にあるのが「ドイツ菓子グロスオーフェン」さん。先代の下でともに修業したことのある清水久弘さん(1969年生まれ)と智子さんご夫婦のお店です。
2019年10月に先代から引き継ぎ、ベテランスタッフ立山さん臼井さんも健在。久弘さんはどちらかというとフランス菓子の経験が長いので、今後ドイツ菓子を真剣に研究して、先代が築き上げたドイツ菓子の基盤をより強固な物にして行きたいとのこと。あぁ、それは嬉しいなぁ。
今回の第19回「3.14=π(パイ)の日R」キャンペーンにも引き続き、ご参加していただきました。すこぶる美味しい2品を用意してくれましたよ。


●『シュネッケ』  径8cm 厚み1.8cm 20gほど。
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ぐるぐるぐる~、シュネッケ( Schnecke 独)とはカタツムリのこと。こういう渦巻き型のパイをフランスでもエスカルゴと呼んでいますね。

このチョコパイ生地は粉にもバターにもカカオを加える念入りパターン。粉は強力粉、薄力粉、1対1ですが、強力粉にバターとカカオを加えて馴染みを良くするとともに上がりを軽くしています。バターは四ツ葉の無塩。
折りは3334と折り進んだところでいったん生地を延ばし、シナモンシュガーを振りまいて折り込み、さらに33と折っています。焼く時に渦巻きが弾けないように端をしっかり止めると、伸びようとする力の逃げ場がなくなり、厚みの方向に浮こうとするのを圧えています。
焼き上がりに自家製のチョコを流しかけています。

ちなみに前回訪問した時も思ったのですが、“自家製のチョコ”って…えっ、本当? ショコラトリーとも名乗っていないところでは、珍しいのではないでしょうか。
カカオマス、カカオバター、砂糖を混ぜて加熱し練り合わせて自家製のクーヴェルチュールを作り上げるのですが、カカオバターの量を調節することで簡単に自分の狙っている流動性が得られるので、手間は掛かるけれどかえって便利とのこと。自分の好みの味にもなりますしね。最後にもう一度テンパリングし直して使います。

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サクッと一口食べると、チョコの香りにフワンと包まれてしまいます。なんと香りのいいことか。
追いかけて溶け出すたっぷりのスウィートチョコの、どこか懐かしく美味しいことといったら。しばし、うっとり。もうこの時点で魅了されてしまっています。

ところが、です。次第に生地自体の素晴しさに集中しはじめるのです、そのあまりの凄さに。
生地にもカカオが入ったのに、その上圧えているのに、まったくキシキシなし。普通、粉にカカオを入れると生地が締まって伸びにくくなるのですが、そんな欠点は影すら見えません。バターとともに加えたことで、カカオはコーティングされた状態で粉と接して、悪い影響を及ぼさなかったのかもしれませんね。
バターが加わったことで生地は軽やかになり、軽さの印象がとっても強く残ります。あり得ない、軽やかさ!

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えぇい、解説なんて、今どーでもいいっ! という気分になるほどの美味しさなのです。
シナモンシュガーが溶け出し、生地はくまなくカラメリゼされていて、カリカリッとした食感も痛快。
カリッサクッカリッサクッ、美味しいぃ美味しすぎるっ! 日持ちのする焼き菓子なので、見つけたら全部買い占めたくなる、可愛いチョコパイ。
フィユタージュショコラでこれほど感心させられたことはありません。天晴れ、お見事です。


●『キッシュ』  辺10cm 高さ3.5cm 70gほど。
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わっ可愛い、これがキッシュ? いかにもケーキ屋さんらしいデコレーションの可憐なキッシュ。
編目模様の覆いを載せれば簡単にできるデコレーションですが、なかなかこの一手間がかけられないんですよね。サイドから見ても、アパレイユがスフレ生地のように見えるではないですか。いかにもパティシエが作ったキッシュといった風情。いいですねぇ、個性があって。

生地はいろいろ使い分けているパイ生地の2番を集めて再利用しているとのこと。それがサクッフワッと驚くほど軽いのですから、吃驚仰天。
アパレイユはチーズに卵、生クリーム、少量のコンスターチ。トマトと茄子、ベーコンが入ります。焼き上がりにトリュフ塩をパラリと掛けて仕上がり。
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焼き戻して食べましたが、生地の軽いこと軽いこと。よく香ること。とても2番とは思えません。
アパレイユは塩分控えめで食べやすく、アパレイユが甘く感じられ、ますますケーキ屋さんのキッシュイメージが高まります。
トリュフ塩がいい働きをしていて、全体の薄味指向をキリッと引き締めているし、パイ生地の香りを格段に良くしているようだし、野菜との相性がよく、全体のまとまりを作り上げる働きまでしているようです。お見事です。
おっ、ちょっと待ってください。聞いたこともないようなお値段、キッシュ280円(内税)って…、清水シェフ!


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オーナーが替わり新たなスタートを切ったことで、新鮮な空気が流れています。訪れた時も、新オーナーの前の職場の後輩が訪ねてきたり、奥様の智子さんがホームページのための写真を撮っていたり、馴染みのお客様もショーケースとじっくりにらめっこ。変身ぶりを確認したくなるのですね。
今は以前からのアイテムをしっかり踏襲するのに一生懸命。しばらくして余裕が出てきたら新シェフ久弘さんらしさが今以上に積極的に出て来ることでしょう。なにしろ、多くの抽き出しを持った多才なシェフですからね。愉しみがまたひとつ、増えました。

●『シュネッケ』250円  『キッシュ』280円  (※内税)
●「グロスオーフェン」
 大阪府箕面市桜井1-1-31  TEL072-723-9151  定休日/水曜  営業時間/10:00~19:00
※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらのお店の『レーズンバターサンド』をご紹介しています。