パティスリー ミャーゴラ(3)『お花のようなりんごのタルト』

京都、名刹大徳寺の北東5分ほどのところにある「パティスリー ミャーゴラ Miagola」さん。“人と同じものを作るのはイヤ!”というやんちゃな精神の持ち主 奥山智浩くん(1984年生まれ)のお店。オープンは2018年10月です。
従来シェフのことは、業界も違うので年齢キャリア関係なく“さん付け”でお呼びしていますが、「独りで作っているからシェフでもないし、昨日まで業者さんに君と呼ばれていたのに、店を持ったからといって急に偉くなった訳でもないし、君にして下さいよぉ」との、たってのご希望に添っての呼び名変更です。
2回目の訪問の時に「冷蔵ケース、やめるかも」と聞いていたのですが、その時はオフレコだったのでブログでは書かずじまい。年末にお邪魔すると、冷蔵ケース、きれいさっぱり跡形もなく無くなっていました。替わりに、其処には大理石の台が。
ということで、生ケーキは見本(精巧な作りで眼が釘付け)だけ置いて、注文次第完成させるスタイル。わぉ、珍しいっ! こんなパティスリー、めったにないなぁ。もうそれだけで痺れるよ!!
普段フィユタージュを作っていないのですが、ちょうどやりたかった林檎のタルトがあったらしくて、今回の第19回「3.14=π(パイ)の日R」キャンペーンにタルト(煉りパイ)で参加してくれました。
嬉しいですね、だって新人のパティスリーではこちらを一番評価していたし、なにより彼の作るタルトレットプチガトー、いつも勢いがあって“凄いよ~”と吠えまくりたくなる美味しさだったのですから。


●『お花のようなりんごのタルト』  径12cm 高さ測り忘れ 350gほど。
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わぁ、美しい花! 思わず眼がハートに。菓名通り、お花のように咲き誇っています。
しかも、圧倒的なヴォリューム、なにこの背の高さ。一口に花と言っても、大輪の花ですね。

分厚い空焼きしたシュクレにドリュールを塗って焼き、カラメリゼしてしっかり湿気防止。同割りのクレームダマンドを詰め、角切り林檎(この日はサンフジ)、軽く焼いて器づくりはここまで。
その上に、グラニースミスで作った青林檎のピュレにレモン汁・砂糖・ペクチンを加えたゆるい粘度、低い糖度のジュレのようなものにグラニースミスの細かなダイスを混ぜたものを = 奥山くんの命名で『フレッシュコンフィ』! 
薄切りにしたサンフジ(本当は津軽のパリパリした食感が欲しかったとのこと。ただ、長野の契約農家が送ってきたのがサンフジだったのでやむを得ず)を花びらに見立てて、うずたかく積み上げて行きます。丁寧に、一ひら一ひら。
中心部分に隙間が空くのでカスタード5にシャンティ1の比率で作ったクレームレジェールを詰め、花の芯の部分を作り上げます。刷毛で溶かしバターを塗って、オーブンで10分ほど焼きます。ナパージュはなし。

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では、いただきましょう。ほぉぉぉ、美味しいよぉ!
ほぼフレッシュなシャリシャリ林檎に、クレームレジェールの豊満な味わいがまとわり、その甘やかな世界を青林檎のフレッシュコンフィ(その場で試食させてもらったのですが、“果実は酸味があってこそ”と三人でニコニコ。にしても、衝撃的な美味しさ。これ瓶詰めにして売っちゃう?)の鋭い酸味が打ち消す。このドラマ性、じつに鮮やかです。ラストは、たっぷりした土台が全体をまとめあげ、存分に満足感に浸ることが出来ます。
核は、青林檎のフレッシュコンフィです。清らかな酸味を伴いながら“爽やかな薫りが花開く”、まさにそんな印象でした。

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奥山くんが懸念していたように、パリパリだったらさぞかし存在感があっただろうなとは思います。でもこれだけのヴォリュームを強い食感で食べるのは難しいかも。サンフジがよく熟れていてジョナゴールドのような柔らかさになっていて食べやすかったですからね。
彼は熟したぐじゅぐじゅの果物は苦手だそうで、シャキッパリッ命とのこと。「僕はその食感が大好きで、それが食べたいの! お客さんにはつきあってもらいます」、生の林檎はすこし色が付いてしまいますが、レモン汁も漬けたけど水っぽくなるのが嫌ということで、結局、手は加えず。
ふふっ、自分が大好きな味を提供したい、という一途さ意気軒昂さ、気に入った! 若いってそういうことだもん。

たしかに、ブラッシュアップできる余地を残しているとは思いますが、それを上回るアグレッシブな挑戦意欲に満ち満ちたタルトです。
ぜひ、皆さんにお試しいただきたい。予約販売のみですので、意を決してお電話下さい。奥山くん、腕を奮おうと待っているはず。


お店を持つとき、自分がどうしたいのか。とても大事なことですね。奥山くんの場合、自分のやりたいことを貫いてしまうバイタリティには目を見張るものがあります。冷蔵ケースを無くしてしまった一幕にも驚きましたが。大学に1日行っただけでパティスリーに勤めに出た話、勤めてみたら同僚たちは専門学校出が多く、ずっとサッカー一筋だった彼は知識で負けていたので、働いたお金で職業訓練校に通っていたことが「パティシエ イナムラショウゾウ」での採用の極め手になった(そんな稲村シェフ、素敵ですね)話など、話題満載の人物です。
話し好きでケーキを作りながらでもノンストップで喋り続けるところにも、お菓子への滾る想いを抱えていることが伝わってきます。
有為の若手に末永く寄り添って行きたいと思わせますね。すっかり彼のペースに乗せられてる? では、手の平の上で無邪気に遊びましょ~。

●『お花のようなりんごのタルト』2500円(予約販売のみ) (※内税)
●「パティスリー ミャーゴラ」
 京都市北区紫野上門前町105-2  TEL075-204-5337  定休日/日曜  営業時間/10:00~19:00
※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらのお店の生ケーキ&プリンをご紹介しています。
※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらのお店のボンボンショコラをご紹介しています。