焼き菓子の里(7)『苺パイ』『うずまきパイ』『ピスタチオパイ』

大阪市東淀川区、阪急京都線・淡路駅から北東に15分ほどのところにある、お菓子の迷宮「焼き菓子の里」さん。ドイツ菓子マイスターである古井和也シェフのお店です。
ご本人曰く「うちは駄菓子屋みたいなもんやから」、とドイツ修業歴10余年ほどのバリバリの職人さんからの言葉なのが、虚をつきますね。
たしかに、自宅を改造した小さなスペースに所狭しと並べられた景観は昔懐かしさに誘うものがあります。さまざまな生地、多彩なフレーバーが取り揃えられ、欲しいものばかり。どれにしようか迷って出られなくなるかも、嗚呼!
今回、第19回「3.14=π(パイ)の日R」キャンペーンのために、3種のパイを用意してくれました。それぞれ生地の作り方が違っていて、どれにしようかなぁ状態が加速。
そんな時は、全部どうぞ。ほんとうに駄菓子屋さんみたいに、普段着値段なのですよ。いまどき、とても貴重なお店です。


●『苺パイ』  長さ12.8cm 幅最大3.8cm 高さ最大3cm 50gほど。
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きゃっラブリ~! 可愛いしコルネ型だし握って食べたくなりますね。実際そうしてパクッといきました。

さて。今回のパイは古井シェフがドイツで習った、3つの方式に分類されます。
これはオランダ式。広げた生地にバターをちぎってパラパラ散らして折り込む方法。いわゆるラピッドです。
薄く伸ばした生地を円錐状の器に巻き付けて焼き上げ、苺のダイス、クリームチーズ、砂糖を和えたものを詰め、真っ赤な苺で蓋。
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くるくるくるっと、きれいな巻き。意外なほど繊細な食感のパイです。ラピッドは比較的ゴワッとした上がりが多いのです。昔のアップルパイがそうでしたよね。2・3・3と折り数を減らしているのが、かえって生地にストレスを与えなくていいのかもしれません。

バター控えめのさっぱりとした風味。砂糖も控えめですがクリームチーズのほのかな塩気が甘味を引き立てています。苺はクッキリとした酸味で印象的。
うんうん、優しくて、品のいいおやつです。


●『うずまきパイ』  12.5×6cm 高さ3.5cm 90gほど。
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こちらはドイツ式。いわゆる普通折り。生地でバターを包み込んでから折るパターン。パイがドイツ発祥という訳ではないのですが、一番一般的な方法にドイツの名を冠しているようです。

このパイでは折りは普通ですが、薄く伸ばした生地をクルクルと巻いて、小口切りにしたものを1個1個の生地として使っています。
イタリアのスフォリアテッレのやり方です。この方法だと、せっかく包み込んだバターが生地の外に流れ出し、焼いている時に水蒸気で生地を持ち上げてくれません。そのかわり溢れだしたバターで生地を揚げ焼きする形になるのです。
そう、かりんとうのように、ガリガリとした生地の出来上がり。最後にカラメリゼ。

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イタリアではリコッタチーズにオレンジ(の花水)が一般的ですが、ここでは林檎とクレームダマンド。ふっくらと上品な甘味のダマンドと、甘酸っぱいとろっとした林檎。生地の強烈なガリガリ感を癒してくれる事うけあい。
いゃあ、このガリガリッボリッ感、凄いっ。顎を疲れさすほどの強者ですぞ。ふふっ。


●『ピスタチオパイ』  11.3×5.7cm 高さ3.5cm 85gほど。
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フランス式。いわゆる逆さ折り。バターで生地を包み込むタイプ。生地にもバターが入っていて、バターにも少し粉を入れ、お互いの性格を近づけています。
表面にバターが来るので慣れないと折りにくいのですが、熟練した人はかえって操作性が良くて折りやすいと言います。
古井シェフもドイツ以来久しぶりのトライでしたが、浮きの良さと、焼いた時の変形の少なさ、クープの入れやすさなど操作性の高さには惚れ込んだようです。

3・2・4・2と少し少なめの折り数。奇麗な層が出来た繊細な焼き上がり。なかのクリームはクレームダマンドのアーモンドをピスタチオに置き換えたもの。

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わぁ! 一口ごとに舞い上がる、芳ばしいパイの香り。ふっくら、さわさわ、サクサクッと気持ちよく崩れてくれます。
と同時に、おぉピスタチオがた~っぷり香っています。ナッツ感も豊か。ピスタチオ党も納得の、ピスタチオ感。やるねー。
全体の甘さのバランスもぴったり。素晴しい味わいです。お見事! 
なお、このお菓子は3月14日(土)の一日だけの限定です、ご注意あれ。


どうです、オランダ式・ドイツ式・フランス式の3種のパイ。多彩な表情を持つのが良く分かります。
「パイは面白いですね。やる度になにか発見があるんですよ」。いいですねぇ、勉強不足の若手に聞かせてやりたいほど。
シェフが業者さんから聞いた話しでは、修業らしい修業もせずにお店を持って、仕入商品を並べて誤摩化しているような人が増えてきているそうです。手作りの良さを知らない(できない)なんて、うーむ。
当たり前ですが、あえて書きましょう。お菓子を愉しむひとときは、職人さんがいるお店から始まります。「地道にこつこつが一番」と頼もしい言葉もありました。こういう信念を持った人こそ職人さんの鑑ですね。

●『苺パイ』280円 『うずまきパイ』280円 『ピスタチオパイ』400円 (※内税)
●「焼き菓子の里」
 大阪市東淀川区菅原4-10-35  TEL06-6648-8357  定休日/第1・3日曜、第2・4水曜  営業時間/10:30~19:00