セセシオン(13)『ヴァイナハツシュトゥルーデル』(クリスマスのシュトゥルーデル)

神戸市東灘区、阪急神戸線・御影駅から南西に3、4分のところにある「コンディトラトリエ セセシオン」さん。来年3月にオープン20周年を迎える技術、品質などすべてに信頼のおけるお店。すでに老舗の風格すら身に付けてきています。
ウィーンの伝統菓子をベースに置きながら、今食べて美味しいという意味であえて“前衛”のお菓子作りを唱え、グスタフ・クリムトらが活躍した芸術運動 SECESSION(分離派 Sezession)を名乗っています 。もちろんオリジナルの作品も豊富にあって前衛を名乗る資格は十分でしょう。
本日はクリスマスシーズンならではのお菓子をご紹介しましょう。


●『ヴァイナハツシュトゥルーデル』  12×5.5cm 高さ3cm 185gほど。
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真っ白な粉糖が雪のよう。Weihnacht は独語でクリスマスのことです。
ディレクターの吉谷さんが同じクリスマス菓子のレープクーヘンの研究に現地を訪れた際に、冬のシーズンによく飲まれるホットワインのようなお菓子が出来ればと考えたことが発端です。
ちょうど厨房でスタッフが二人がかりでシュトゥルーデル生地を伸ばしているところでした。長さ50cmほどの薄い生地づくり、こういう作業が見られるのも嬉しいですね。

まずは、た~っぷりのフィリング。洋梨を赤ワインとスパイス(シナモン、カルダモン、クローヴなど)、無花果、ナツメヤシの実、松の実、レーズン、クルミなどでコンポートし、シュトゥルーデル生地の上にシナモン風味のクラム(? ダマンドやビスキュイなどのことも)を敷いた上に、それらのフィリングをたっぷりと載せて巻き込んで焼いています。
コンポートした後に残ったワインは、洋梨などの果汁も加わり、スパイスの癖といいホットワインそのものだそうです。

secession_xmasstrudelcut.jpgどっしりとなんとも動かし難い存在感、ヴォリューム。
スパイスとワインの香りが馥郁と立ち上ってきます。いえいえ、持ち帰る時から箱から出さずともすでに魅惑の香りが漂っているほどの凄さだったのです。
スピリッツのようにふわんと舞い上がるようなアルコール感ではないのですが、赤ワインがはっきり利いています。洋梨の甘味にワインの酸味、タンニンが重なり、重厚な味わいに。ナツメヤシのクニュッと感、無花果のプチプチ感、松の実の脂っぽい風味と、わぁいろいろ賑やかに楽しませてくれます。

生地は完璧に焼けているのですが、如何せんフィリングが水分たっぷりなので、やや湿気っているところも。時間をかけて焼き戻す方法もありますが、そのままで食べるとパラチンケン(オーストリア・ハンガリーのクレープ)のような感触で、あらん、これはこれでありだなと思いました。Palatschinken に馴染んでいるウィーンの人たちに習ってみるのも一興ですね。

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そうそう、クリームも付けてくれます。
より濃厚になるのかなと思ったら、意外とスッキリと感じられ、もっともっと! と食べるスピードアップ。あっはは~。


一口ごとに、芳醇な赤ワインの薫りに、クラッとするような濃厚な果実やナッツ類に、そして生地の優しさに、思わず微笑んでしまうでしょう。ふぅぅ~大人の味わい。なんとも贅沢の極致です。
ともあれ。古典に基づいた前衛精神の体現であるような味わいに、久々大感激したのでした。しばらくご無沙汰していましたが、やっぱり“関西随一”という言葉を使いたくなります。お見事です。


こちらのお店にてくてくと歩きながら近づくと、いつもいい香りがふわぁと漂ってきます。それが毎回なのです。材料を吟味し惜しみなく使っているので、生地を焼く幸せな香りもスパイスの刺激的な香りも、とても品がいい。これほど芳しい客寄せの方法もないですよね。
この香りに魅了されれば、お菓子を食べてまたとない幸せなひとときが…。では、Frohe Weihnachten!

●『ヴァイナハツシュトゥルーデル』500円  (※内税)
●「コンディトラトリエ セセシオン」
 神戸市東灘区御影2-8-7  TEL078-854-2678  定休日/水曜  営業時間/10:00~19:30

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