初登場! パレットローヴ(1)『ミルフィーユ キャラメル』『バトンキャネル』『タルトオートンヌ』

神戸市東灘区、阪急岡本駅を降りて、商店街を突き当たりまで下って左折、100mほどのところにあるのが、2018年8月オープンのパティスリー「パレットローヴ」(PALETROVE)さん。パレットの名前通り、色とりどりの美麗なケーキが揃うお店です。
先日、いつも通る道で裏窓に張られている“東灘スイーツめぐり”のポスターでお店の存在を発見。ちらっと覗くとバッケンのオーブン。えっ、こんなところにパティスリーがあるっ! と早速ぐるっと回って表へ。外から見ると、美しいケーキが並んでいるではないですか。なんだ、ここ!

というわけで、「ほかに所用があって買えないんだけど」と断ってケーキを見せてもらって、少しお話を伺っただけで惚れ込んでしまうほどの出来映え。今日は買わないという失礼な客なのに、明るく接してくれた優しい奥様とついつい話し込んでしまい、先ごろ、苦楽園にオープンした「ルメルクール」さんの大江正シェフとこちらの江原康之シェフ&奥様の夏子さん(パティシエール)は、神戸国際調理製菓専門学校の同期生(1985年生まれ)だということも判明。シェフはオープンのお手伝いもしていたというから、世間は狭いものですね。その時は近々の再訪を約してお店を後にしました。

今回、期待に満ちあふれて訪れてみると、シェフ自ら歓待してくれました。赤穂出身で専門学校卒業後、「リーガロイヤルホテル」に2年務めた後、神戸の人気パティスリー「リッチフィールド」で11年に渡って勤め上げ、製造責任者としての重責を果たしています。その間、洋菓子協会の裏方仕事も引き受け、コンテストにも参加して優勝経験もあるという、技術・教育・経営・社会性という幅広い能力を身に付け、視野の広さも自分のものにしている、得難いキャリアの持ち主だということが分かりました。34歳という若さですが、どっしりとした落ち着きさえ感じさせるのもこういう背景があるからこそでしょう。
奥様の夏子さんも専門学校を卒業後、西区出身で地元の「リッチフィールド」で修業。製造と販売の両方で活躍してきたとのこと。

またアーティスティックなケーキを作っているのに、少しも神経質にならず、お客様が望むのであれば、お誕生ケーキにキャラクターケーキも作りますとのこと。「私たちの仕事はお客さんに歓んでもらうための仕事ですから、笑顔を見るのがなによりも嬉しい」と柔軟な姿勢も併せ持っています。奥の深い人柄、きっとケーキも!
さぁて、お待たせしました、そろそろケーキのご紹介と参りましょう。


●『ミルフィーユ キャラメル』  4.8×9cm 高さ6.2cmほど。
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あら、最近珍しい縦型のミルフィーユ。クリームディプロマットを挟み、カラメルシャンティを絞って、フレッシュの無花果。
季節によって果実は苺に替わるそうです(その際はカラメルではなく普通のシャンティへ)。
フィユタージュはアンヴェルセ。デトランプは強力:薄力=1:1。醗酵バターで、こちらには強力粉のみ。3ツ折り5回。圧さえて焼いています。1cmほどの厚みの生地は芯までしっかり焼き込んでいますが、風味だけ抽き出して苦みは出していません。
縦型にするのは以前はフィユタージュが湿気ないようにという理由の人が多かったようですが、「切って食べやすいように」と実用本意の狙い。本体部分はとてもオーソドックスな仕上がりです。

ナイフ入刀、サクッと心地いい切れ味。口へ運べば、わぁ~サクッほろほろ、優しいなぁ、繊細だなぁ。
アンヴェルセならではのサクサクサラサラとしたややクッキーに近い食感とともに、粉を焼き込んだ香ばしい香りと醗酵バターの芳醇な香りが立ち上ってきます。クリームはディプロマットの軽やかさを発揮しつつ、パティシエールの卵の風味もたっぷり。
生地の微かな塩気が味わいを深くして、そこへ、カラメリゼの甘~い香りも覆いかぶさってきます。なんという満足感。さらにカラメルシャンティで追い打ち。最後にフレッシュの無花果の青い香りで、冷静さを取り戻す感じですね。

なお、無花果がなくても完成していたので、個人的にはなくてもいいかなという気がしましたが…、客層との兼ね合いもあるのでしょうね。
と言いつつ、やっぱり美味しい、生地が良すぎるから、パイそのもので勝負して欲しくなっちゃうんだろうな。


●『バトンキャネル』  1.6×7.5cm 厚み1cm 全50gほど。
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きゃっ嬉しい、フールセックのパイ菓子があるなんて!
ミルフィーユと同じ生地を折り数を増やして、8回にしているとのこと。普通6回を越えると層が潰れてしまって、むしろマイナスとされているのですが、江原シェフは「よく浮いていますよ~」と問題無しの様子。余程温度管理に優れていて、生地の展性を高く保っているのでしょうね。
バトン状に切り分け、アーモンドダイスとシナモンシュガーをたっぷり振りかけて焼いています。焼きは浅め。

palet_cinnamonpac.jpgなるほど、さっくりと軽やかな食感、たしかに浮いていますねぇ。
シナモンが優しく香り、甘味も品良く、生地の旨味にアーモンドのコクが加わって印象が深いですね。

あまりの軽やかさに、二人で取り合いになり手が止まらず、ほとんど秒殺で完食!




●『タルトオートンヌ』  径6.5cm 高さ7.5cmほど。
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パートシュクレ(アーモンドプードル入り)に、フランジパーヌにマロンペーストをたっぷり加えたものを流し込んで焼いています。

洋梨に栗、ときましたか。洋梨を載せていますから、焼き込めば定番の洋梨のタルト“ブルダルー”。元々ヘーゼルパウダーを加えるのが定法だったようで、まァ諸説ありますが…。ともあれ、洋梨とナッツ類は合うのです。そういえば「ロトス洋菓子店」さんが栗をフードプロセッサーにかけたものを少量ダマンドに入れていましたけっね。
さて。こちらはマロンペーストをかなりの割合で入れたようで、マロン色だし、よく香っています。この土台の上に、ディプロマットを芯にしてフレッシュの洋梨が取り囲んでいます。トップにはカラメルのシャンティ。

では、ひと口、…… わぁ美味しいなぁ!
サクサクと軽やかなシュクレ、焼き込んだ香りも広がります。と同時に、マロンフランジパーヌが明確に主張してきます。ふわっと豊かな風味で、洋栗の香りが馥郁と、ふうぅ。どんなものでも受け入れる包容力の大きさ。
洋梨はフレッシュの瑞々しさをフルに振りまいて、ディプロマットとカラメルのクリームを伴って、するっとした滑らかさを強調。プリマドンナの妍を文句無しに焼き付けています。
土台に力があるからこそ、主役が魅力を存分に発揮できる好例です。やるなー。菓名通り、automne 秋を満喫するタルトですね。


オープンして1年が過ぎていますが、紹介が遅れた感がありますね。即、注目すべき実力者だったのです。
生ケーキ常時15種程度、ケーク6種、マカロン数種、焼菓子も15種以上あったかな。焼きっぱなしも欲しいところですが、十分に意欲的な品揃えと云えるでしょう。
お若いのに経験豊富なパティシエ&パティシエール夫婦という強力タッグに、スタッフも育っているようで、来年にはさらに初期にバイトで手伝っていた専門学校生がフランス校を卒業して加わるとか。恵まれた体制でどこまで充実して行くことやら、ますます期待の高まるお店です。目が離せませんぞ!

●『ミルフィーユ キャラメル』520円  『バトンキャネル』500円  『タルトオートンヌ』540円  (※外税)
●「パレットローヴ」
 神戸市東灘区本山北町3-6-10  TEL078-585-7428  定休日/不定休  営業時間/10:30~19:00

※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらのお店のプチガトー&プリンなどをご紹介しています。
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