グレゴリー コレ(2)『ミルフィーユ フランボワーズ』『タルトタタン』『ショーソンポム』『マロンパイ』

神戸市中央区、少し坂を上った異人館街にある「パティスリー グレゴリー コレ」さん。2018年1月に元町商店街から移転するとともに、新たに日本人シェフを招聘しての再スタート。創業20年目の転機だったのです。
HPによると、新シェフ西嶋一力さんは「ノリエット」やリヨンの「パトリック・ロザ」(「コレ」シェフ)のところで修業した人。ショーケースを見ただけで腕の良さが分かる素晴しい出来映えです。冴えを感じる美しさです。
販売員の女性スタッフは感じはいいのですが、お菓子の知識はゼロ。ということで推測記事ですのでご容赦下さい。さて、その味やいかに。


●『ミルフィーユ フランボワーズ』  7.5×3.3cm 高さ4.8cmほど。
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フランボワーズの赤が映える、可憐な姿。
フィユタージュは多分アンヴェルセ。ムースリーヌを挟んでいます。ガルニチュールのフランボワーズは、フレッシュとシロップを含んだピュレもしくはゼラチンの弱いジュレが使われているのではないでしょうか。

サクサクサラサラと軽快に崩れてくれるフィユタージュ。鮮烈に迫ってくるフランボワーズの清らかな酸味。優しく円やかに受け止めるムースリーヌ。フィユタージュは苦みを出さないレベルに抑えられ、醗酵バターと表示されていましたが、ムースリーヌともどもバターの香りも控えめ。collet_millup.jpg
重く感じる要素をすべて抑制して、フランボワーズの清らかさに焦点が絞り込まれているのです。ミルフィーユを食べてこれほど清冽なイメージを抱いたのは、久々。シトロンなどを使った爽やか系はあるのですが。
ミルフィーユからこの味わいを創造したシェフのイマジネーションに脱帽。各パーツの完成度の高さ、そして絶妙のバランス。見事です。


●『タルトタタン』  6×6cm 高さ5.8cmほど。
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スタイリッシュなタルトタタンですね。
底のパイはやや層を潰して、さらにバターを控え、焼き込みも抑えているようにも感じられます。
林檎は紅玉。何時間焼き込んだのか、トロトロン。カラメルを加えたり、カラメリゼを強くしたりはせず、甘酸っぱさを前面に押し出しています。
トッピングのシャンティはやや黄色みを帯びていますが、なにかが加わっている訳ではありません。ほとんど無糖に近いレベル。乳糖の甘味が感じられます。少しシナモンが振られ、スッキリ感を狙っているようです。

フィユタージュがタタンを載せていながらサクサク感をまったく失っていないのは素晴しいですね。チョコやカラメリゼなどの防湿処理もしていないにも関わらずですよ。

collet_tatinup.jpgシャンティも甘味が弱いので林檎の旨味をストレートに味わえます。トップのリンゴスライスもペラペラの薄さにも関わらず林檎らしさをしっかり主張できるレベル。いい素材を使っています。

普通、林檎にシナモンが使われるときは味わいを濃厚にする方向で用いられています。でも、今回のものはシナモンの清涼感が選ばれていて、食後感がスッキリ。
この狙いは賛否が分かれるところかもしれませんが、『ミルフィーユ フランボワーズ』の爽やかさといい、ケーキの甘い魅力をスッキリした食後感に置き換えようとしているように思えてなりません。西嶋シェフの手腕は要注目ですね。


●『ショーソンポム』  11×8.3cm 高さ4.2cm 90gほど。
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『ショーソンポム』という伝統菓子の名前ですが、なんとバナナとカラメルが同居しています。この組合せが悪い訳ではなく、それなりに新しい味が出来ているので、名前を変えるべきだったような気がします。林檎感が思い切り後退していますからね。
3つの要素が均等に力を発揮していて、林檎でもバナナでもカラメルでもない味わいに。美味しくないというのではないのですが、新しい味に出会った歓びや衝撃には至らない。
まァ、ショーソンに期待しすぎ、と言われそうですが、否、ショーソンで心を動かされたことがある身としては、やはり云いたくなってしまうのです。
collet_chaussoncut.jpgただ生地は相変わらず素晴しい。軽やかな食感でサクサワ~ッと歯切れよく、折り曲げる細工をしていてもきっちり層が残されています。丁寧な仕事ぶりが垣間見えます。


●『マロンパイ』  8.5×7.5cm 高さ6cm 40gほど。
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2個残っているうちの失敗作の方を選ばれてしまいました。結構な黒焦げ。あえて取り替えるように、という注文は出しませんでした。
焦げていても時にはカラメリゼで止まっていて、かえって美味しい場合があるからです。えぇそういうパイには何回も出会っています。
ところが、炭化のレベルまで行っていて、はっきり苦い。これはキッチンで廃棄処分にすべき品だと思うのですが。販売員も疑問に感じなかったのでしょうか。
collet_maronpiecut.jpgちなみに、渋皮栗の甘煮もダマンドも質は高く、フィユタージュはショーソンと同じものですから文句のないもの。味的にはまったく問題ないのに、ちょっとした管理ミスで、美味しい歓びを伝えるはずのお菓子が …… うーむ、本当に惜しい話です。

collet_maronpieup.jpg今日1回のミスであればいいのですが、焼きっぱなしはラフでもいいものではあるのですが、他の生ケーキの完成度の高さ、美しさの基準からすると、あまりにもかけ離れています。
これを見逃す背景として、移転とともに経営方針が変わって、観光客中心の一見客だからクレーム無視、ロスを認めない利益中心主義に陥ったのでないかなどと心配し過ぎてしまうのです。


たった1個のマロンパイから、少し厳しい内容になったかもしれません。
でも、小さなところから始まる。どれも大切に扱う。それがお店の在り方の基本のひとつだと思うので、あえて取り上げました。
オープン当初『アプソリュ』や『ショートケーキ』『ミルフィーユジバラ』などの味や姿に心を奪われた私たちとしては、「グレゴリーコレ」さんへの期待値は高く、洋菓子の街・神戸を代表する名店であり続けてほしいのです。本来、その企業力もあり、シェフの技術や感性のレベルの高さからしても、絶対に力を維持しているはずですからね。

●『ミルフィーユ フランボワーズ』520円  『タルトタタン』500円  『ショーソンポム』380円  『マロンパイ』350円  (※外税)
●「パティスリー グレゴリー コレ」(2階にはカフェあり)
  神戸市中央区山本通2-3-5  TEL078-200-4351  定休日/水曜  営業時間/10:30~19:30

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