アグレアーブル(京都)(8)夏のタルト3品『タルト オ アブリコ』『タルト オ スリーズ』『タルト オ シトロン』

京都、御所南で着実に存在感を高めているのが「パティスリー アグレアーブル」さん。ケーキの美味しさでまっ先に評価されるべきですが、サービスも欠かせません。
代表でサービス担当のかをるさんの接客が一流な上に、シェフの加藤晃生さんが開店の10時に完全に品出しを終えると、お客様のお相手をするのもシェフの仕事ですからと、気軽に厨房からでてきてくれるのです。お菓子のことについて、フランスの生活について、長い経験からあれこれユーモアを交えての話しは尽きることなく、こちらも興味津々。いつもながら居心地がいいですね(もちろん話したくないお客様には付かず離れずの絶妙な距離感で接してくれますからご安心を)。
さて今回は、タルト名人による、夏という季節を満喫する“夏タルト”を3つご紹介しましょう。


●『タルト オ アブリコ』  辺8.7cm 高さ4.8cmほど。
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まずは、待ちに待った杏のタルト。ヤッター!
杏LOVERの私たちは、もう何年も前から「アプリコット、アプリコット、アグレアーブルさんの杏のタルト食べたいっ」とお願いしつづけていたのです。が、シェフの加藤さんが気に入るアプリコットがないとのことでお預けを喰っていました。
それがついに昨年、いい出会いがあってスタートしたという話しを秋になって聞かされたのです、ふむ。
「連絡してくださいよぉ」と言ったら、「お忙しい中、わざわざ京都まで来ていただくなんて申し訳ないですし…」とこちらを気遣ってくれる優しい言葉。そうなのです、こういう気遣いがあるやなしやでやはりお店の格が決まるのではないでしょうか。

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香港在住のご夫婦(南仏エキサンプロヴァンス出身のご主人と、長野県出身でダンサーの奥様)が「アグレアーブル」を贔屓にしてくれていて、昨年、奥様の実家がアプリコット農家だということが判明(もぎ採っている写真も見せてもらったのですが、長閑な雰囲気でもう美味しさは確定したようなもの)し、シーズンも押し迫ったころになって取寄せたのだそうです。

信州大実の杏。小さな桃くらいある、杏としてはビックリするくらいに大きな果実です。その大きさと甘酸っぱいたっぷりの旨味にシェフも納得。ついに禁が破られたのです。
昨年、その話しを聞いた時に、来年作りはじめたら連絡して欲しいと言った甲斐があり、今回は手書きのお知らせファックスが届きました。
可能な範囲で最短の日時で飛んで行きました。それまでの毎日、そのファックス用紙を仕事部屋に貼り、朝な夕なに見てはニッコリ、指折り数えて過ごす私たち。

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スッゴーイ! なんていうタルトの背の高さなの。しかも縦に突き刺してびっしり詰め込んである!! このヴォリューム感だけでもノックダウン寸前ですが、姿も迫力あって美しいですね。
いつも通り、アーモンドプードル入りのシュクレを空焼きしてフランジパーヌ。杏を大きな実の場合は7~8個、小さめの場合は8~9個ほども盛り込み、焼き込み。アプリコットのナパージュをたっぷり塗り、ピスターシュのダイスを振って仕上がり。

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さて、いよいよ実食です。
がぶっと豪快に行けば、ふっふっはっははぁ~、なんてダイナミックな味わい、極上の甘酸っぱさ、わぉ! 
一口に収まり切らないくらいの大きさを頬ばると、口一杯にぎゅっと凝縮した杏の果実・果汁が溢れかえります。
サックサクのシュクレが快音と香ばしい香りを残してスルスルと消えて行き、フランジパーヌとともに果汁と一体になリ、口の中はもはや旨味の坩堝と化すのです。ふうぅぅ~。
この歓びが10回近くも(1カットでさえ)繰り返されるのですから、いやはや堪りませんね。二人ともしばし、沈黙。陶然としてしまったのです。

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果樹園直送、もぎたての味と言ってしまいそうになります。
が、いやいや、手を掛けている分、さらにその上を行く想像以上の美味しさ。天馬空を行くと言えるほどの圧倒的な力量の差と、その結果としての清々しさ。いやはやご立派!


●『タルト オ スリーズ』  径7cm 高さ7cm程。
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可憐な姿。おっこれまた凄いヴォリューム。盛ってますね~。
こちらは空焼きのシュクレにダマンド。ピスタチオのムースリーヌをたっぷり盛った上に、アメリカンチェリーを山盛り。グリオットチェリーのナパージュをたっぷり塗っています。
初夏になると、チェリーのタルトはよく見掛けますが、タルトが邪魔というかチェリーだけ食べた方が…という残念な気持ちになることが少なくないのです。

へへっもうお分かりですね、これっこれですよ。タルトとチェリーとクリームが出会うことで、より一層お互いがお互いを高めあって三位一体となる、といいましょうか。
チェリーのほのかな杏仁香とピスタチオがぴったり合うのですね。みずみずしい果実の甘酸っぱさの魅力に、クリームの油脂分の深いコクが加わった魅力はえも言えない美味しさ。うっとりしてしまいます。そして、小気味いいタルトの香ばしさに、ダマンドの豊かさがずっと響いています。
甘味の勝ったアメリカンチェリーを使っているからこその味わい。しかもグリオットのナパージュにしているので、ちゃんと酸味も補われていて満足感も高いのです。見事なバランス感覚です。


●『タルト オ シトロン』  径7cm 高さ6cmほど。
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おやっ、たっぷりのメレンゲの絞り方が独特で気を惹きます。
柑橘の旬は本来は冬のものですが、檸檬の清々しさは夏に欲しくなりますよね。

シュクレを空焼きして、ロイヤルティーヌをアーモンドペースト、ミルクチョコ、バターで和えたものを塗り、レモンクリームを流します。
イタリアンメレンゲを絞り、たっぷり粉糖を振って240℃というかなり高温のオーブンに40秒ほど入れて、表面を焼き固めています。バーナーで焼く方法もありますが、どうしても焦げ臭くなるのでシェフはしたくないそうです。
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ひゃあ、甘酸っぱーいっ、檸檬だ! レモンクリームのきゅんとした魅力は当然ですが、イタメレにしては甘さが控えめで、軽やかな味わい。表面のクシュッと儚く崩れる快感はオーブンで焼いた甲斐ありですね。
おう、来た来た、ロイヤルティーヌが利いていますね。主にミルクチョコ、そしてアーモンドペーストも檸檬とよくマッチしていて、味をよりふくよかにしてくれています。メロウな優しさ。
ほほう、このシュクレだけは少し焼きを甘くしているのでしょうか。あえて香ばしさを出さずに、レモンの清純さをきれいに保っています。見事な繊細さです。

いずれも、“初夏から夏の風物菓子”となりそうですね、シェフ。
たまたま訪れた日のランチに鱧のパスタを注文したのですが、お店の可愛いおばあちゃんが「京都は鱧を食べて夏を迎えるのよ、ねー」とニコニコおっしゃったように、『タルト オ アブリコ』を食べて夏に突入と相成りました。


加藤さん曰く「お菓子を美味しく作れるかどうかは、作る作業の一つひとつの意味を“理解して作っているか”どうか」にかかっているとのこと。
なるほど。例えば、今回のタルトで言うと、フランス人は果実を食べるためのタルトとは考えていない、ということなのです。果実の載っていない、ダマンドを詰めただけ、アプリコットのナパージュを塗っただけのアマンディーヌのようなものが元々大好きなのです。タルトのベース(日本人ならタルト台と言ってしまう)をより以上に美味しく食べるかのためのフルーツと考え、口溶けをよくするためにナパージュをたっぷり塗るのだそうです。修業中にミュロさんから言われたのは「bien napper」だったそうです。
本当にこちらのタルトの美味しいことと言ったら、もぅ。たしかに理解の通りの美味しさを再現してくれているからこそですね。

●『タルト オ アブリコ』550円  『タルト オ スリーズ』500円  『タルト オ シトロン』500円  (※内税)
●「パティスリー アグレアーブル」
  京都市中京区夷川高倉東入ル天守町75-7  TEL075-231-9005  定休日/月1~2回不定休  営業時間/10:00~20:00

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