新店登場! パティスリー ミャーゴラ(1) 『タルトシトロネ』『タルトショコラ』

朗報です、大注目の新店登場です! 京都、大徳寺の北東に2018年10月にオープンした「パティスリー ミャーゴラ Miagola 」さん。
なに? ミャーゴラって聞き慣れない名前? 変わった店名ですが、イタリア語で猫の鳴き声だそうです。
シェフの奥山智浩さん(1984年生)に聞くと、人と同じになるのが嫌で、仏語でパティスリーに似合う言葉はありきたりになるので避けたとのこと。まァ猫も飼っているしねとも。
ご本人曰く「ひねくれ者です」と宣言するだけあって、お菓子作りも人と同じことは嫌。誰もやっていないことがしたい、姿はシンプルだけど切って中を見たら驚くぜ、どうだ! ということにこだわりを持って作っているそうです。
この意気軒昂さ、明朗さ、いいねぇ。久々面白いパティシエに会いました。
ではシェフのお勧めで試してみましょう。


●『タルトシトロネ』  径7.5cm 高さ3.5cmほど。
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華やかなレモンのタルト。奇麗ですね。

ずっと以前、「ピエール・エルメ青山」の『タルトシトロン』に衝撃を受けたそうです。レモンカードにジュリエンヌのみというシンプルなスタイルだったとか。
が、しかーし。衝撃的と言いつつ、踏襲はしません。

ヘーゼルナッツのプードル入りのシュクレを空焼きし、卵黄と生クリームのドリュールを塗って軽く焼き、粉糖を振ってしっかりカラメリゼ。
底にフィヤンティーヌショコラと、自家製プラリネ(アーモンド&ヘーゼル)とミルクチョコを混ぜたものを薄く塗って、その上にマイヤーレモンに浸けたジョコンドを置き、上に箕面の柚子のコンフィ(丸ごと)を薄く忍ばせ、マイヤーレモンと柚子のカードを流しています。
周囲にイタメレを絞り、真ん中にナパージュにリモンチェッロを混ぜたものを落とし、ライムのシロップ煮のゼストと金粉で飾り。

画像は~~ッ、なんとも恐ろしいほどのお手間入り。
これでもかと、わんさか詰め込まれています。凝りまくっていますねぇ。

どれどれ。おっ柚子ですねえ。でも強くない。檸檬のスッキリした酸味が逆に柚子を少し円やかにしているように感じられます。
湿気防止を念入りにしたシュクレはサックザク。フィヤンティーヌとプラリネの甘いチャリチャリ、そして奥行のある芳ばしさも。柚子のコンフィも利いているし、イタメレの甘さもほどほど。レモン柚子カードがキュンとした強さで印象に残ります。
…… 要するに、爽やかで濃厚な檸檬のタルトです。わぁ美味しいっ!

不思議なことに、これだけいろいろ手を尽くしているのに、舌が応対に忙しくないし、煩わしくもなく、味が濁っていない。否それどころか冴えた味に仕上がっているのは希有のこと。
ふぅむ、「新人として甘く見るのは止しな」と云われているような精度の高い仕事をしますね。やるなお主!



●『タルトショコラ』  径8cm 高さ2.3cmほど。
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姿はシンプル。巷でよく見かけるチョコレートのタルトです。

が、これまた“奥山印”が全開でした。
さぁまた長々と書きますぞ。

プレーンのシュクレ生地にプードルドカカオを加えたシュクレカカオを空焼きし、表面にフィノデアロマ社のマランタ(カカオ61%)を塗って湿気防止。
ジョコンドにVSOPをビショビショになるまでスプレーしたものを敷き、クレームショコラ(アングレーズにマランタとミルクチョコを同量ずつ加えたもの)を流し、自家製のプラリネで蓋。
表面はねっとりとしたグラッサージュショコラを流し、チョコプラック、カカオニブ、金箔で完成。

グラッサージュが美しいですね。しばし眺めて、さて一口。
画像ワオッ、VSOP!  まったく躊躇なくガツンと香り、食道を熱くしながら通り過ぎて行きます。
なんだかウィスキーボンボンみたい、ひやゃ~。

その強さにチョコレートが負けていないのが、凄い!  
断面をよぉく見ると、あれぇ、そんなにチョコ使っていないのに、これまた業師ですな。

じつはチョコレートタルトは、チョコレートそのものを食べているようなガナッシュたっぷりのものが好みですが、このブランデーとチョコの激しいせめぎ合いは“あり”です。
お酒とチョコが芳醇に香り、ナッツが奥深さを演出し、苦みを帯びているはずのタルトが優しい合いの手に回り、ほろ苦ニブがカリコリッとスタッカート的なリズムを刻む。
ほぉぉぉ、美味しいなぁ。パンチのある大人のチョコレートタルトに仕上がっています。

修業先の一つである「パティシエ イナムラショウゾウ」さんの“稲村魂”を遺憾なく発揮していますね。
あちらは素材の味がダイレクトに強く主張していますから。いいセンスを受け継いでいます。お見事!



奥山シェフ、京都は長年の憧れの地だったとかで、出身は奈良。ケーキに関しては奥手で、高校生まではサッカー少年。高校生の時に中田ヒデがイタリアに行ったことも影響したのか、突如イタリア料理に目覚めて、週ごとにブックレットをファイルしていくタイプのレシピ本を購入。パスタをはじめ、いろいろ料理に挑戦したのが飲食への興味の目覚め。ケーキについてはある日友だちと格安のケーキバイキングに行って、初めてクレームブリュレを食べたことが火をつけた切っ掛け。
ご両親や担任の勧めもあって同志社の英文科に進んだものの、飲食への意欲止み難く、はや二日目で退学すると決意。タウンページを見てケーキ屋さんに順番に電話をし、「モンナポレオン」(本店八尾)の奈良店にこっそり就職。大学に行くと言って早朝に出掛ける生活をしばらく続けた後、前期だけで大学を中退。本格的にケーキの道へ。1年はいなかったそうですが、「料理王国 パティシエ101人」を参考にして、東京へ。
及川シェフの「アンプチパケ」2号店への採用の口もあったそうですが、待機期間が長く断念。その後運良く「イナムラショウゾウ」に入店。4年ほど勤務。
関西に戻って奈良・新大宮の「ラ・ポーズ」で4年ほど、知り合いに誘われ「マダムシンコ」に1年ほど、その知り合いが独立するのについていき、高槻の「カントナ」で4年ほど。
ほかにレストランも経験しているようですが、比較的腰を据えた修業歴といっていいようですね。修業期間中にはコンテストにも参加。“ルコント杯”では準優勝の経験もあるそうです。

おしゃべりでもそうですが、味についても自分の考えを伝える能力に恵まれています。
たった3個しか食べていなくて、一体なにが分かるといったところですが、ただ、これだけははっきりと言えます。
彼のお菓子に対する“溢れるような熱い想い”。若い人ならではの勢いがあって、しかも着地点がきれいです。
表現意欲満々の若い時代は想いを整理しきれないものですが、奥山さんに限って、構成は複雑でも、味はメインで食べさせたいものに集約されていて、分かりやすいケーキに仕上がっているのです。若さに似ず、天晴な創作力だと感心しました。

これからどんどん注目を浴びること、請け合います。



●『タルトシトロネ』530円  『タルトショコラ』530円  (※内税)

●「パティスリー ミャーゴラ」
  京都市北区紫野上門前町105-2  TEL075-204-5337  定休日/日曜  営業時間/10:00~19:00

  ※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらの檸檬のケーキ『リモーネ』をご紹介しています。