パティスリー&ショコラトリー エメラ(11) 『アップルパイ』

奈良市、近鉄奈良線・富雄駅から南に2分ほどのところにある「パティスリー&ショコラトリー エメラ」さん。
こちらを初めて訪れたお客様は繊細華麗なケーキの姿に驚かされることでしょう。いや、何度見てもやはり眼が惹き付けられてしまうのです。美しさの点でこちらに上回るお店が全国で何軒あるのだろうか、というレベルに達しています。
味覚の点でも見掛けを裏切らない繊細さ。それほど洗練されたケーキを作る藤原尚樹シェフに、第18回「3.14=π(パイ)の日 R 」キャンペーンの対象商品として、新たにアップルパイを依頼したところ、快諾! フランス、ベルギーのラインナップの中に加えることに「全然OKですょ、ロールとかは嫌ですけど~」とのこと。
果たせるかな、如何にも「エメラ」流の『アップルパイ』の登場です。


●『アップルパイ』  9×7.5cm 高さ最大4.5cmほど。
画像
! なんと赤い果実が載っているではありませんか。林檎のワイン煮? 
いえいえ、なんとビーツのシロップ煮。
一瞬つんのめる、おーい。

今回たまたま「グロスオーフェン」さんでも聖護院大根を使用した『パイナップルのパイ』がありましたが、野菜をフルーツと合わせるのは稀。
しかも、ビーツってどうよ? ボルシチしか思い浮かばない、哀しい発想の私なのでした。たはっ。

ところが、『ビーツのタルト』をすでに作っていて、お気に入りになっているのだとか。そのタルトは、同じ旬の苺と組合せ、ブランマンジェと合わせるというもの(あっそれも食べたいな)。
奈良の農家さんと親しくしていて、旬のとびっきりの素材が手に入るのです。

『アップルパイ』では、林檎は紅玉をカラメルソテーしたもの。ビーツは圧力鍋を使って短時間でシロップ煮。
パイ生地は普通折りの3ツ折6回。底にクレームダマンドを薄く敷いた上に皮付き林檎のスライス。
ビーツは味の極め手として、ほんの少しのバルサミコ酢と蜂蜜で和えたもの。店頭ではエディブルフラワーで可憐に彩られていたようです。


ザクッ。オッ、瑞々しいですね。林檎はそれほど多くないのにジュース感あり。甘酸っぱい林檎の味がメインですが、ビーツもバルサミコ酢をまとってほんのりとした酸味を持っているので、甘酸っぱさの濃淡が紅白色分けで繰り返される感覚が、ほほぅ面白い! 
ビーツの食感がけっこう林檎っぽいのもいい。バルサミコ酢のおかげでしょう、グッと深いコクを醸し出しています。

フィリングの爽やかさとダマンドの豊かさの対比、ダマンドも含めた具材のしっとり感とパイ生地のザクザクした刺激の対比。2つの強力な軸があって、繊細だけど力強い印象を与えてくれます。
素晴しいフランス菓子風に昇華しましたね、あっぱれお見事!



このアイデア、じつはフランスの3ツ星レストラン「アルページュ」のアラン・パッサール氏がテレビでやっていた『トマトのタルト』をヒントにしたものだそうです。そういえば、パッサールは持ち帰り用のタルトをいろいろ開発したのでしたね。林檎を桂剥きにして、クルクルと巻いて薔薇の花のようにした『ブーケ・ド・ローズ』で名を馳せました。美しいパイだったので、当時真似するシェフを見掛けましたっけ。
奈良という土地のテロワールを活かした唯一無二のお店になりたいという藤原シェフ。生産者さんとのお付き合いからどんどん新たな素材との出会いが生まれ、過去に仕入れたアイデアの抽き出しからあれこれ取り出し新作の誕生となるようです。
今回も「アップルパイってやったことがないので挑戦したい」と意欲満々。一般に、キャリア(1973年生まれ)も長く、商品のラインナップも充実している場合、手の内に入ったものでやって行きたいというのが大方の路線です。つねにチャレンジャーでいることは精神的にも技術的にも要求度が高くなり、なかなかできるものではありませんからね。
となると、これから先どんなお菓子が登場するのか、ますます目が離せませんぞ。



●『アップルパイ』  450円(※外税)

●「パティスリー&ショコラトリー エメラ」
  奈良市富雄元町2-6-40  TEL0742-44-6006  定休日/水曜  営業時間/11:00~20:00(平日) 11:00~19:00(日・祝)