サ・マーシュ(9) 『フルーツとパンデピスのパイディスク』

日本を代表するパン職人の筆頭格である、西川功晃シェフのお店「パンと暮らしのサ・マーシュ」さん。神戸・三宮の中山手通を少し上がったところにあります。全国に轟く西川ブランドでありながら、相変わらず日常の糧としての価格を守ろうとしてくれています。何ごとにも真摯に取り組む西川さんらしいですね。
昨年9月から製造を一人で賄う新体制に切り替え(詳しくは当ブログの特集で)超々多忙な中、無理を押して
パンパカパ~ン! 第18回「3.14=π(パイ)の日 R 」キャンペーンに参加してくれました。
私たちも大感激&大感謝ですが、なによりパイファンにとっても嬉しいことですよね。今のところ、パイはこの時しか作っておられないようですよ。


●『フルーツとパンデピスのパイディスク』  径12cm 高さ3cm 130gほど。
画像
パイディスク? 
なんだか面白いネーミング。
パイで“ディスク”という言葉は初めてかも。たしかにディスク状に円く、薄いパイです。

じつは、パイディスクだけ重石をかけてあらかじめ焼いてありました。
私たちの到着と同時に、上に載っけることを始めた西川さん。横でその作業を見ながら、「それは何?」といった会話(途中、チョコレートの話やらカンパーニュの話やら売上の話やら…現状の「サマーシュ」話は尽きません)を交えながら、このパイ菓子が完成したのです。

「商品名、何にします?」と聞くと、「うーむそうだなぁ…果物、いやパンデピスも外せないし」と直ぐ決定。
お値段も「いくらぐらいかな、300円ぐらいかな、どう?」とシェフ。「いや安過ぎますよ、盛りだくさん載っているし。360円は欲しいところですよ」と言っても、「んっ360円? それはちょっと…う~んやっぱり300円で」
てな具合で、値段も商品名もその時に決まりました。百戦錬磨の西川シェフらしい。いゃあ、ライブ感満載の新作なのでした。

画像では、上に載っけているものをご紹介しましょう。

自家製の林檎のコンポートにパイナップルのリキュールを加え、さらにこれまた自家製の蜜柑ジャムを混ぜます。
これをパイディスクにたっぷり塗り付け、パンデピスのクルトン、セミドライのクランベリー、生の刻み胡桃を散らし、ナパージュヌートルをソミュール(オレンジリキュール/これも「ナパージュ濃度がまだ高いな、じゃあソミュールを入れよう」と言って、くるくる混ぜながら)で伸ばしたものをたらっと振りかけて、出来上がり。

いたって簡単な作り、んはははっ~。だけど美味しいんだな、これが!
まず、林檎と蜜柑の合わせ技がなんとも不可思議な美味しさ。アップルパイ的な安心出来る美味しさがベースにあるけれど、蜜柑の甘酸っぱさにどこかマーマレード的な強さが折り重なり、さらにパイナップルリキュールのトロピカルな香りも微かに加わるのです。
そこへパンデピスの馥郁と立ち上がるスパイシーな香り。クランベリーの甘酸っぱさ、胡桃の食感と香り、ソミュールのアルコール感とスッキリした香り。
組合せの妙といいますか、幾重にも味覚と香りが層をなして広がって行きます。

画像この刺激しつづけるフィリングをじっくりと支えているのが、ザックリと力強く焼き上げたフィユタージュ(普通折り3ツ折り6回、ピケ有り)。
強い食感が見事に多弁なフィリングを手懐けているのです。

お店にある素材をうまく使い回すアドリブ的な創作方法なのに、しっかり着地が決まっているところが、いかにも天才職人たる所以ですかね。うぅむ、参った、参りましたよ。



画像パイディスクさえあれば、キッチンにあるものを適当に(この適当が意外とセンスのあるやなしやの分かれ道かも)載せれば、あっという間に一品出来上がりますね。シェフの構想ではほかにベシャメルとベーコンなど料理的なものも視野にあったとのこと。それもいいな。
パイ生地の包容力豊かな融通無碍な可能性の大きさを示していると云えますね。

ちなみに、3月中(木曜~日曜開店)は作る予定だそうですが、1日6個ほど。なにせ18時間労働という信じられない日々の中での、貴重なパイですぞ、ぜひ!




●『フルーツとパンデピスのパイディスク』300円  (※外税)

●「パンと暮らしのサ・マーシュ」
  神戸市中央区山本通3-1-3  TEL078-763-1111  定休日/月曜・火曜・水曜  営業時間/10:00~18:00