ツッカーベッカー エミル(6) 『ムシェル』『モーンエッケ』『ピスタチオエッケ』

神戸市灘区、阪急神戸線・六甲駅から南東に5分ほどのところにある「ツッカーベッカー エミル」さん。ベテラン奥村豊さんのお店です。
神戸の老舗「フロインドリーブ」で30年ほどのキャリアの持ち主なので、当然ながら『シュトーレン』のようなドイツ菓子に本領のあるシェフです。
が、イタリア、フランスなど国にとらわれず、ご自分の好きなお菓子を作っています。これが底光りをするような美味しさなんですねぇ。ということで、今回は私たちも大好きなお菓子を選んできました。以前にもご紹介していますので、手短に。


●『ムシェル』  8.2×7.6cm 厚み3.3cm 50gほど。
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貝の形のパイ。パイの中でも、最右翼と呼びたくなるほどの力強く独特の食感のお菓子です。

一般にはイタリア菓子の“スフォリアテッレ”といえば、馴染みがあるでしょうか。形から独語で“貝”に当たる Muschel を商品名に。

さぁ手に持って、ガブッといけば …… バリッバリッ! 
わぉ目覚ましい食感&音。軽快な音が頭のなかにまで盛大に響きます、凄すぎるッ。

パイ生地はラードを折り込んだ独特の食感。1層1層が油で揚げられたようなバッリバリの強い食感。50層以上もある各層がそれぞれに主張するのですから、もう痛快この上なし!
クリームはダマンドに、オレンジピール(とても小さなダイス)、リコッタとクリームの2つのチーズを加えている、と以前聞いています。

激しい音を楽しんだ後、オレンジの香気が品よく漂い、ほのかな甘味と優しい味わいにほっとする。チーズも入っていて豊かな印象ですね。ふうぅ。
久しぶりに食べて満たされた気分。地方菓子に特有の生活に根付いた野太さのようなものがあるのもいいですねぇ。お見事です。



●『モーンエッケ』  7.5×5cm 高さ3.5cm 80gほど。
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こちらの顔というべき大人気商品。

四角(エッケ)く成形した、焼きっぱなしのタルトシリーズ。季節ごとにいろいろなものが出て来るので、年間通じると10種類くらいのはありそうです。

モーン(黒芥子)はドイツ・オーストリアのお菓子には無くてはならない特徴的な素材。
日本では芥子粒の食感を利用していますが、ドイツ系ではすりつぶしたものを生地に煉り込むのが主流。ほんのりと特有の香りが漂います。

あえて分厚いシュクレ生地(アーモンドプードル入り)で、芳ばしいアーモンドカラメル風味の土台を築き上げ、ダマンドでより豊かにしています。
その上にモーンの味わいが載って来るのです。味に奥行きが感じられるので、モーンだけではないのかもしれません(といってもほのかに)が、濃厚で強い土台に太刀打して、存在感を示せるのですから、モーンには不思議な力が秘められているのですね。
だからこそ、惹き付けられるように求めてしまうのです。



●『ピスタチオエッケ』  7.5×5cm 高さ2.8cm 80gほど。
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これまた、大好物のひとつ。

土台は、生地の風合いが素晴らしいシュクレ。ダマンドにピスタチオのペースト入り。
可愛いチェリーが3個。振りかけているシュトロイゼルにもピスタチオの細かなダイスが入っています。

ダマンドピスターシュがややねっとりとして舌に絡み付き、ナッツ感、油脂感を強く伝えてくれます。クランブルの香ばしさに加えて、瑞々しいチェリーの酸味が対比されてピタリと決まっています。
組合せの妙でピスタチオの魅力を抽き出す当たりがベテランの技ですね。

この焼きっぱなしのエッケはいずれもバターの芳醇な香り、タルトの芳ばしさ、サクッとした心地よい食感、ダマンドの豊満さ、季節の食材の風味、それからそれから…… 嗚呼、これさえあれば何もいらないなぁ、としみじみしてしまう秋の夜長です。


パイやシュクレ、ダマンドなどの基本中の基本がとても素晴らしいので、何を食べても美味しいという安心感があります。私たちにとって大切なお店です。



●『ムシェル』330円  『モーンエッケ』360円  『ピスタチオエッケ』360円  (※外税)

●「ツッカーベッカー エミル」
  神戸市灘区日尾町2-3-17  TEL078-843-1880  定休日/水曜、第1&3木曜  営業時間/10:30~19:30