グロスオーフェン(14) 『松の実のタルトレット』『すぐりのタルトレット』『アプリコットのタルトレッ

大阪府箕面市、阪急箕面線・桜井駅から1分。おなじみの「グロスオーフェン」さん。
素朴な焼菓子が美味しいお店です。が、構成は素朴でも味わいは洗練の極致と云ってもいいでしょう。清水シェフに秘訣を訊いても「普通に焼いているだけです。特別のことはなんもしてません」とはぐらかされてしまいます(秘密主義ではないのです、本当にそう思っておられるのです)。
つまり、美味しくなるためのこと以外、余計なことや手抜きは一切していないと解釈したいところです。
当ブログの特集“トップパティシエの眼光”でもお伝えしたように、市井の職人としての在り方に徹した人だけに、誇ることもなくアルチザンとしての技術の洗練の先に、一つひとつのお菓子の輝きがあるのではないでしょうか。改めて一口ごとに、滋味溢れる美味しさと豊かな香りに満たされたのでした。


●『松の実のタルトレット』  径7cm 高さ2.5cm 60gほど。
画像
じつは松の実、大好物です。
ジェノヴェーゼはもちろん、お粥や月餅のなかの餡も。ただぽりぽり摘むのも好き。

お菓子ではやはりタルトにつきるでしょうか。「オグルニエドール」(閉店)の『松の実のタルト』が印象に残っていて、誰も注目していないようでしたがあのお店で一番好きでした。

では、うきうきと逸る心のままに、サクッと一口。
おや、松の実のほかに南瓜とヒマワリの種も加わっている? 元々松の実だけでしたよね。悩ましいところですが、タネ好きとしてはそれも嬉しいっ。

パートシュクレに薄くフランボワーズのジャムを塗って、クレームダマンド。
ほぅ、ビッシリというほどでもないのによく香っています、松の実。大粒の質の高いものを選んでいることとよくローストしているからでしょう。
松の実と種の力強い噛み応えに、シュクレのザクッとした食感とダマンドのふっくらとした食感の対比もいい。松の実だけでなく、南瓜・ヒマワリの種の味の重層感も面白い。マイルドで膨らみのある味わいで豊かな気持ちにさせられますね。ふうぅ。

さて。松の実の香りとフランボワーズの風味が合うとは想像がつかないのですが、これが不思議と合うのです。ほんのかすかな酸味が味を締めて、松の実の香りの値打ちを数段高くしているようです。この小技に毎回感心させられますね。



●『すぐりのタルトレット』  径7cm 高さ2.8cm 75gほど。
画像
うーん、ソソル度高い姿。

パートシュクレにダマンド、トッピングはカシス。
なんでもない、カシスだけの果実感溢れるタルト。

が、遠慮なく“すっぺー”世界を創り出していることで、なんでもないはずが“とんでもないタルトだね”などとほざいているうちに、あっという間にペロリ。

あら、このタルトだけ重いのは、カシスの重さだけではないような。
この酸っぱさを受け止めるにはダマンドを多くしているのでしょうか。何もしません、と言いつつ、ギリギリの酸味が立つレベルに調整しているのでは? 
ともあれ、美味しいったらないですね。お見事。



●『アプリコットのタルトレット』  径7cm 高さ2.7cm 70gほど。
画像
パートシュクレにダマンド、トッピングはアプリコットとアーモンドスライス。

おぉ、杏仁香凄いですね。
ダマンドを使い分けているはずはないし、ふむふむ、これはアマレットでマリネしているのでしょうか。

「お宅たちには全部ばれてるからね」と、かいかぶってくれるので教えてくれないんですよぉ。まァ隠し味的なことは本来書かなくてもいいのかな、と思うこともあるのでいつもこの流れに身を任せてしまいます。

アプリコットがフレッシュではないので、酸味が刺すような強さではありません。ひゃあ~と叫ぶような強いアプリコットが好みではありますが、なぜかこういう優しい味わいもありだよねぇいいよねぇと思わせるのは、香りがいきいきと立ち上がって来るからでしょう。
やはり清水さんのタルト、好きにならずにはいられませんね。

ところで、この3つとも290円(外税)! もぅ言葉がありません、脱帽です。


ということで、毎度のことながらお菓子についてのやり取りはすぐに終わってしまい、ついつい政治談義、社会批判に熱くなるのでした。世の中の趨勢に丸め込まれない気骨の人、健在。会う度に背筋がすっとのびるような気持ちになるのです。



●『松の実のタルトレット』290円  『すぐりのタルトレット』290円  『アプリコットのタルトレット』290円  (※外税)

●「グロスオーフェン」
  大阪府箕面市桜井1-1-31  TEL072-723-9151  定休日/水曜・月2回木曜  営業時間/10:00~19:00