ムーラタルト(17) 『琥珀色のタルトショコラ』

日本一長い商店街、天神橋筋商店街の3丁目、南森町交差点からすぐのところにある「フランス菓子工房 ムーラタルト」さん。
敬愛する吉野暢人シェフは私たちの判断では関西随一の焼きの名人であり、味の見極めの達人でもあります。ベテランの域に達して来た彼(1967年生まれ)の最近の進境を物語る逸品をご紹介しましょう。


●『琥珀色のタルトショコラ』  径7.4cm 高さ2cmほど。
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おっ、シンプルでいながら気を惹く姿。

所謂チョコレートのタルトなのですが、ダークなタルトではありません。こちらの『タルトオゥショコラ』も絶品なのですが、全く異なるタルトショコラを作ってくれました。

ホワイトチョコを焼き込んだチョコレート、カレボー社の“ゴールド”を使っているのです。
元々ホワイトチョコレートなので透明感はないのですが、よくブロンドなどと称されていますから、琥珀色も言い得て妙、といったところでしょうか。ずいぶん新鮮なイメージになりますね。

ヘーゼルナッツのペーストと合わせたガナッシュとのことなので、ジャンドゥヤタイプの風味なのですが、ぐっとマイルド。
これだけでも大好きだった気がしますが、檸檬がじつにいい仕事をしています。
和歌山産レモンのピールを適度に灰汁抜きした上でシロップ煮したものがなかに潜んでいます(パイフレークも一緒に入っていますが、香りに奥行きが出ているのかもしれませんね)。この清々しい香り(この時はまだ青さが残るライムっぽい感じ)とかすかなほろ苦さが、甘く優しい味わいを一気に大人のデザートに引き上げているのです。
ヘーゼルとレモンがこれほどまでに調和するとは! ヨーロッパではポピュラーだと聞いていましたが、説得的な出来映えのものにはじめて出会いました。

さらに大書すべきことは、食感。ガナッシュのねっとりとした重さからの柔らかく溶けて行く感触の心地良さ。ふうぅメロメロです。
そして、厚さ2mmほどのタルトシュクレの繊細でいて強さのあるサックサック感の小気味よさ。
さらに、トッピングされているカラメリゼされたヘーゼルナッツの存在感。ザクッッコリッと弾けるごとに、表情がガラッと変わる美味しさ&面白さ。
一片置かれたピールに至るまで、すべてがあるべきところでなすべきことを果たしているといった、ストライクの連続。すべてのパーツがイキイキとしていながらガナッシュのなめらかさの邪魔にならないのです。なんてこったいっ!

夢見るような美味しさのガナッシュ、レモンの香気の清らかさ、シュクレのサクサクッ感、ヘーゼルのリズム感。
これほどまでに完成した味わいに出会うのは久々。「東京の人たちも食べにきてよ!」と叫びたくなります。お見事です。


難しいことも複雑なこともしていないのですが、打つ手がピタリ、ピタリとハマっている感覚は食べていて一種爽快。レモンを使っているという理由だけではありませんね。力まずに技が決まるということが、食べ手にも軽やかな気持ちを植え付けるのでしょう。



●『琥珀色のタルトショコラ』460円  (※内税)

●「フランス菓子工房 ムーラタルト」
  大阪市北区天神橋3-1-6  TEL06-6242-7177  定休日/火曜  営業時間/11:00~20:00

  ※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらのお菓子をご紹介しています。