レピドール(1) 『ミルフイユ』

日本随一の高級住宅街、田園調布。ここで1973年から愛されつづけているお店が「レピドール」さん。
大島陽二会長は「エスワイル」ご出身で、渡仏体験もあり、フランス菓子の新しい波が起きている最中に「プラザアテネ」などの名店での修業を経て独立された方です。
開店早々の時間だったためか、店頭ショーケースの前に長身のコックコートを着た年配の男性が佇むという感じで姿勢よく立っておられました。静かに「いらっしゃいませ」と出迎えてくれます。それが会長でした。
2階のサロンでいただく時にサービススタッフに、「よろしければ“エスワイル”のことなどを会長にお聞きしたいのですが」と伝えると、来客待ちをしていたと思しいのに、スッと立ち上がり私たちのテーブルまで来てくれました。お弟子さんである「ビガロー」の石井シェフの名前を出すまでもなく、用事があるのであればと気さくな対応。
修業時代のことをあれこれ、お菓子への想いなど、来客を待たせながら様々お話しを伺うことが出来ましたが、大家ぶったところのない、立ち振る舞いも含めて典型的な紳士。毎朝のように駅からお店まで、掃除をしているそうです(この話は会長からではなく以前に石井シェフから聞いたものです。お店が住宅街に溶け込んで、あえて自己主張していないのも会長の人柄を映しているようです)。「少しでも気持ちよくご来店いただきたいですからね」とニッコリ。
翌日、石井シェフたちに会長にお目にかかった話をすると、長年の修業で表も裏も知り尽くしているはずなのに、ご夫婦が口を揃えて「紳士でしょ。本当にいい人」と、会長と親しく接した経験を誇らしげに語るほどです。
そんな高潔な性格から生まれるお菓子が美味しくないはずがありません。


●『ミルフイユ』  3.5×8.5cm 高さ5cmほど。
画像
繊細で品のある姿ですね。

薄いパイ生地の層が4枚。
間にカスタードクリーム。生クリームの入ったタイプのようで優しい味わい。
トップはたっぷりの粉糖で真っ白。

生地も深く焼き込まず、カルピスバターの香りを活かしたパイです。サクサクと軽い食感とともに柔らかな香りが立ち上ってきます。生地の粉の香りもしていますね。粉糖の優しい甘さも生地の味わいを宥めているようです。
ディプロマットも比較的淡い味わいで、そっと寄り添いあっている印象です。

これだけでは少しぼんやりしてしまうところですが、一番下の生地の上にフランボワーズのジャムを薄く塗っていて(スポンジも)、そのわずかな酸味のアクセントが全体を引き締め、満足感を作り出しています。それがけっして出しゃばった存在ではなく、そっとささやいているレベルなのにしっかり全体を貫いているのです。
多くを語らない在り方、品のいい姿、控えめな魅力の表し方。すべて大島さんその人を見ているようです。



2階の喫茶室は広々としていてとても贅沢な空間。ピアノも置かれています。時間帯によっては演奏のサービスもあるのでしょうか。駅前の一等地でこのゆとりを維持するのは大変なこと。素晴らしい味わいと気品ある雰囲気を提供しているからこそ、町の支持が得られているのでしょう。



●『ミルフイユ』480円  「紅茶(ポットサービス)」800円(ケーキセットで100円引き)  (※内税)

●「レピドール」田園調布店
  東京都大田区田園調布3-24-14  TEL03-3722-0141  定休日/水曜  営業時間/9:00~19:00(2F喫茶/9:30~18:30) 

  ※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらのケーキ&缶クッキーをご紹介しています。