イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ(2) 『タルトゥT・Y(テ・イグレグ)』『塩味のクッキー』

私たちが敬愛している弓田享シェフの代官山のお店。同じフロアに教室もエピスリーのお店も揃っています。
一時期体調不良が伝えられていましたが、スタッフの話によるとほぼ快復し、教室に出る時間が長くなって来たとのこと。安心しました。
ワインを飲みに行った話は旅行記でたっぷり書きましたので、ここでは会心作2品をご紹介して、名誉を挽回しておきましょう。へへっ。
●『タルトゥT・Y(テ・イグレグ)』 辺7.5cm 高さ4cmほど。

お気づきでしょうが、テ イグレックは弓田さんのイニシャル。
林檎のタルトなのですが、日本の林檎の質の悪さをいかにカバーして、フランスで食べるような美味しさに近づけるか。
そのために「さまざまなものを少しずつ積み重ねて作り上げたものです」と著書(「五感で創るフランス菓子」)で語っています。
お店で林檎の品種を聞くと、たまたまその場にいた製造スタッフの女性の方が、「たしか本に載っていたはず。このタルト、とても美味しいですよ」と言って、店頭に並べてあった本を開いて見せてくれました。
創作した時代はまだ未熟だったけれど、よくぞここまで作り上げたと自讃の意味で、記念すべき通過点としてイニシャルを与えたとのことです。菓名に名前を付けるのは、“言葉の人”であるシェフにとっては大きな意味があったのではないでしょうか。
パートブリゼ、林檎のコンポート、ラムレーズン、アパレイユ、林檎のソテーが入ります。最後にカソナードをたっぷり振って焼き上げます。高温に上げて短時間焼くことでカソナードが存在感を高めています。
ソテーした林檎を食べる感覚なのですが、アパレイユに加えた仏産の林檎のペースト(シューペルポンム)で日本の林檎に欠けている旨味を、コンポートで鋭さを補っています。サワークリームが入ったり上白糖とカソナードを使い分けることで甘味に力と、温かなふくらみを持たせるなど、一つひとつ味を積み上げているのです。
ふうぅ~、絶品です!
朝食べたのですが、穏やかで力が湧いて来るような、滋味深く、優しさに包まれるような味わい。濃厚でいてまったくくどさがない。ソテーした林檎のトロトロ感と品のいい甘さ、酸味のエッジもありコクもある。
アパレイユは奥深い味わいと優しい甘さ。表面のカソナードのアクセントも抜かりない。
うーん、人を籠絡するような味なのに、無理に迫ることのない品の良さ。
あぁなんて美味しいのでしょう。“林檎のタルト”を食べつづけて幾星霜、今までで一番心に響きました。
お店の看板に「日本一美味しいフランス菓子店」と書かれているのを揶揄していたのですが、このタルトを知ってしまうと、本当にそうだという気になってしまいます。ブラボーゥッ T・Y !
●『塩味のクッキー』(36枚入り) 3.7×4.6cm 厚み0.6cmほど。

大好きなクッキーで、前回もご紹介していますので簡略に(層になっていてブリゼっぽく見えなくもないので、今回は「パイ日和」で)。
前回は16枚入りを購入したのに、今回奮発して缶入に格上げになったのですから、それだけ気に入っているということ。
ブリゼっぽい生地に、エダムチーズの濃厚さとチキンブイヨンの利いた強い塩味(ゲランド産)。コクのある味わい。
“ジャンクフード”といっても間違いじゃないでしょう。スナック菓子を食べるように、1枚食べて満足しているのに、つい次の1枚へと手が伸びてしまいます。スペイン産アーモンドのカリカリ感も小気味いいアクセントですが、松の実の香りがやはり決め手。
香辛料は黒胡椒とカイエンペッパー? も食欲を煽ります。かなりの刺激!
ナッツの香ばしさ・小気味いい食感(ホロッと崩れてカリカリッ感も)・後をひく塩気・ピリッとした刺激・チーズのコク・チキンブイヨンのB級っぽい匂い……あぁこの旨さに掴まえられたら最後、虜になるしか生きる術はなし。

朝に数枚食べて、愛犬を散歩に連れて行って帰ってみると、おやっダイニングにブイヨンを主体にした残り香が。
うっ、また食べたくなりました。困ったジャンキーだ。
●『タルトゥT・Y(テ・イグレグ)』420円 『塩味のクッキー(36枚入)』3700円 (※外税)
●「イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ」
東京都渋谷区猿楽町17-16代官山フォーラム2F TEL03-3476-5211 定休日/火曜、第2&4水曜 営業時間/10:30~19:30