パティスリーウサギ(2)  『ピスタチオのミルフォイユ』『タルトタタン』

兵庫県伊丹市、阪急伊丹線の終点、伊丹駅ビルから東へ3分ほど、ひがし商店街にあるのが「パティスリー ウサギ」さん。フランス修業7年の村西理沙さん(1985年生まれ)のお店。2017年3月オープンですから、まだ1年経っていない新店です。
一人で作っておられるし、美味しさのためには副材料まで自家製にしたりするので量産がしにくく、夕方には品薄、ということが多いようです。が、運良く本日は待望のパイがありましたよ。わーい!


●『ピスタチオのミルフォイユ』 3×8cm 高さ4.5cmほど。
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わっ、ミルフィーユ! 
初訪問の時、早々に売り切れていたので嬉しいなぁ。

それも、大好きなピスタチオだなんて! 自称ピスタチオ党としては看過することはできませんぞ。

しかも、ピスタチオペーストがなんと自家製。プラリネなどはわりと自家製に出会いますが、ペースト類はかなり少ないのではないでしょうか。
市販のペーストではピスタチオの香りが足りないと、自家製を貫いています。
村西シェフ曰く「ダイレクトに味が迫ってくるので」。
太白胡麻油と混ぜて、ミキサーを回しているのですが、重くてミキサーが止まることも多く、なめらかになるまでには大変に時間がかかるとのこと。それでも香りの高さ・品質の良さ、フレッシュさに差があるのでしょうね。

ミルフィーユに挟むクリームは2種類。
各クリーム層の下段が、バタークリームをベースにピスタチオペーストとカスタード。
上段がシャンティピスターシュ。生クリームを沸騰させ、ピスタチオとホワイトチョコ、砂糖を加えて、立てたもの。

パイ生地は薄力粉と中力粉が1対1。バターは一般の無塩。普通折りで3つ折り3回と少なめ。
きっちり折られていて、層がまっすぐ。まだバターの層がしっかり残っているせいか、各層が完全に分離した状態。1枚の板がパラパラと剥がれて来るような仕上がり。
少し扱いづらさ、切りにくさはありますが、口にした時の驚きと喜びはいかばかりでしょう。


画像と、逸る心でいただきましょう …… ほぉぉぉ! ピスタチオだぁ。

うんうん全開の香りに心が踊る。クリームの軽やかな口溶けとともにむせ返るように押し寄せてきます。
ミルキーっぽさもあって、優しい中に旨味た~っぷり。美味しいなぁ。

パイ生地も、1層が比較的厚めで鱗片も大きめなのに、食感は軽やか。強力粉を使っていないので、グルテンが弱く、意外なほどサラサラしているのです。バターの香りも生地の焼き込みの香りも十分。
塩気が控えめなので、全体の味のバランスがマイルドの方向にシフトしていて、それぞれの素材の味わいがよく伝わってきます。
クリームが他を隔絶するほどの出来映えですが、生地もひけを取りません。拮抗していますね。

一口ごとに、あぁいい、あぁいいね、とため息をもらしてしまう。お見事です!




●『タルトタタン』  2.9×7.2cm 高さ6.7cmほど。
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毎年恒例、秋から追い求めるお菓子の一つが、タルトタタン。大好物なのです。

いろいろな作り方がありますが、こちらはどうしているのでしょう。

パイ生地は『ミルフォイユ』と同じ一番生地。圧えて焼いて、最後に合体させています。

では、林檎は? 
今回使っている品種はシナノゴールド。村西シェフが酸味のある林檎が好きということで選ばれています。
薄くスライスして、ヴァニラシュガー、ヴァニラ、レモン果汁を加えて、長四角の型に詰め、途中で林檎を追加しつつ、ジュクジュクと炊いたり蒸し焼きにした上で、最後水分を飛ばすように蓋を外して焼いたりと、合計3~4時間オーブンに。
トップの大きなクネルは、生クリームとサワークリームを合わせたもの。


とろっとろ! ワオッ。なんてジューシーなの。苦みがなく、あくまでフルーティー! 口の中でとろけていきます。

そういゃあ工程を再度なぞらえてみれば、ん、んん? カラメリゼやソテーといった作業なし、だっけ? 
そう、バターやカラメルを加えず、純粋に林檎の味わいが凝縮されているのです。
タタンというより、林檎のテリーヌと呼んだ方がイメージに近いかもしれません。“林檎の冴えたコク”の深さ、といいましょうか。

上のクリームと一緒にいただくと、さらに! 
渾然一体となって、林檎のなめらかさが一段と増し、まさにクリーム状に、味わいは円やかになりつつ艶やかな旨味に深化しています。この味の変化は、事前に林檎にバターを加えていないからこそ。いやあ、見事だな。

禁断の果実のエッセンス……、あぁタタン好きの血が騒ぐ。



常駐ではないのかもしれませんが、販売のスタッフ(その日は矢迫さんというお菓子大好きな女性と賑やかにおしゃべり)が入り、シェフが製造に専念できるようになったのが心強いですね。
訪問した日は村西シェフ、所用があって珍しくお留守。夕方に帰ってくるというアバウトな話を頼りに待っていたら、諦めかけた時に帰ってきてくれました。お互い久しぶりの再会を喜び合うことに。
戻ってすぐだといろいろ用事が山積みになっていると察するのですが、当然のようにすぐお客さんと向き合う。その姿勢から、柔らかく温かな空気が流れてきたのでした。



●『ピスタチオのミルフォイユ』500円  『タルトタタン』460円  (※外税)

●「パティスリー ウサギ」
  兵庫県伊丹市中央1-7-15  TEL072-744-2790  定休日/水曜・木曜  営業時間/11:00~19:00

  ※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらのケーキをご紹介しています。