アグレアーブル(6) 『本日のタルト/黒いちじくと洋梨のタルト』『タルトノルマンディ』+パリ再訪

京都、かつては家具の町として知られた夷川通、いまは御所南と呼ばれるようになり、飲食店が軒を連ねるようになっています。その中でも代表的な存在が「パティスリー アグレアーブル」さん。
普段月に1、2回しかお休みを取らない加藤晃生さん、かをるさんご夫妻ですが、9月に休暇を取りほぼ10年ぶりにフランス訪問。出身店の「ラヴィエイユフランス」「ジェラールミュロ」再訪の旅。9日間の滞在はずいぶん充実したものだったようですよ。おふたりとも、その晴れやかな笑顔といったら、もぅ。
その結果は後半にお伝えすることにして、ミュロさんのスペシャリテを加藤シェフも作っているのでご紹介しましょう。


●『本日のタルト/黒いちじくと洋梨のタルト』 辺8.5cm 高さ3.4cmほど。
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季節によって果物が替わります。
旬が楽しめるタルトです。

空焼きしたシュクレにフランジパーヌ(ご本家はピスタチオクリーム入りもあり)、洋梨と佐賀県産の黒無花果をたっぷり詰めて焼いています。

フランスの黒無花果は中まで真っ赤で甘味が強いそうです。
フルーツの彼我の差は埋めようがないのでしょうね。日本の果実は年々、野趣から遠ざかって行っていますからね。
それを十分承知の上で黒無花果が手に入ったら、作りたくてしょうがなくなるのが、加藤シェフのミュロさんへの親愛の情の証なのでしょう。

空焼きしているので、フランジパーヌは洋梨のジュースでびっしょりなのに、シュクレは小気味がいいほどサックサク! 対比が素晴らしい。ジュースを吸ったフランジパーヌは旨味たっぷり。洋梨と黒無花果はよく火が通ってシュルシュルと抵抗なく喉を滑って行きます。
ふっと蘇ってくる戻り香が……、秋!



●『タルトノルマンディ』  5.5×5.2cm 高さ4.5cmほど。
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「ジェラールミュロ」のスペシャリテ。

パータフォンセを空焼きして卵黄を塗ってもう一度焼きます。
紅玉はカラメルとバターでソテーしカルヴァドスでフランベ。
フォンセにクラフティのアパレイユを流し、紅玉をソテーした時の液ごと加えて焼き、上にミュロさん直伝のシブーストクリームを載せ、トップをカラメリゼ。

シブーストはカルヴァドスを加えたカスタードとイタメレ・ゼラチンを合わせますが、ミュロさんのルセットは卵白と砂糖が1対1と砂糖が通常の半分。

わぁ~、軽やかなシブーストがいいですねぇ。
泡感はしっかり出しつつ、甘さ控えめなので、下のクラフティが活きています。紅玉の酸味もキリッと引き立っていて、優しい甘さとすっきりとした酸味。シブーストの面目を一新する味わい。

甘さで人を圧倒するのではなく、愛着を呼ぶお菓子です。もう一度食べたくなりますね。いいな、いいなぁ。


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さてさて、旅行談義です(かなり端折ってのご紹介ですので、詳しくはお店のブログへ飛んじゃってくださいませ。または、直接お店へ。きっとにこにこにまにま顔で話してくれますよ)。
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「ラヴィエイユフランス」は店を閉じる最後の年に修業したお店で、ルネ親方はすでに亡くなっているので、ご家族を訪ねることに。息子さんのお店を訪ねました。
お店の最終日に親方と一緒に写っている写真(右写真の左上)を見せると、妹さんが写真を撫でて「パパー、パパー」と懐かしがり、家族そろって大歓迎、賄いをごちそうしてくれたそうです。翌日には親方の奥様もお店にきてやはり写真を撫でて「パパー、パパー」。
訪問を感謝するメッセージを書いてくれました。大切に額に入れて、お店に飾ってありますよ。



「ジェラールミュロ」はミュロさんが昨年お店の権利を譲渡したので、週に1、2回は顔をのぞかせるという情報を当てにしてお店の前でチャンスを待つというものでした。
運に恵まれていていたようで、ミュロさんとも奇跡的に再会を果たします。お店の前で待っていると、もう遠くにいる間からお互いに見付け合ったらしい。
かをるさんはあんなに遠いのにと不思議がりますが、シェフは「背格好ですぐ分かるよ」と当たり前のようにいいます。8年間勤めていた間、毎日顔を合わせていた大好きな師匠の姿が目の奥に焼き付いているのでしょうね。
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ミュロさんは来年日本に行くから、「加藤の店にも行くよ」と言ってくれたそうです。師匠からしても可愛い弟子だったようです。
お店を渡り歩くのではなく、じっくり腰を据えて、師匠のすべてを吸収しようとした真摯な姿勢があったからこそ、どの師匠にも認められたのでしょうね。
元同僚たちの何人かはまだ働いていて再会を果たし、思い出話に花を咲かせたとか。

他にも、偶然セバスチャン・ゴタールに引き合わせてくれる人と出会ったり、ストラスブールの老舗「ネゲル」の数フロアにまたがる巨大なキッチンのすべてを見学させてもらい、おまけにお土産をもらったり…。「なんか水が合うわ」とシェフ。
食べ歩きも、今どきのきれいなスタイリッシュなケーキには惹かれることなく、クェッチやミラベルなどの季節のフルーツのタルトばかり食べていたそうです。「やっぱりすごくおいしかった~!」


自分たちの店の方向性が間違っていないと、強く再確認できた旅。自分の信じるもの、自分はこれで行くんだという信念があれば、仕事がブレることはないですからね。
ご夫妻で充実した体験をし、お店の今後の充実が約束されたように感じます。お土産話のお裾分けをする理由です。

最後に。加藤シェフ、会うシェフごとに「パティスリージャポネ? フランセーズ?」と聞かれたそうです。
シェフがなんて答えたかって? お店へ一度でも行ったことがある方なら、そしてお菓子を食べた方ならもう答えは分かっていますね。ふふっ野暮の骨頂でございました。



●『本日のタルト/黒いちじくと洋梨のタルト』480円  『タルトノルマンディ』480円   (※内税)

●「アグレアーブル」
  京都市中京区夷川通高倉東入ル  TEL075-231-9005  定休日/不定休  営業時間/10:00~20:00

   ※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらの生ケーキと焼菓子をご紹介しています。