ラ・フルネ(7) 『りんごのタルト』『クイニーアマン』

大阪市西区。中之島の北岸ではなく南岸にこそ本当に優れたパンとお菓子のお店があります。「ブーランジュリー パティスリー ラ・フルネ」さんがそれ。
1品1品がシェフ本人の嗜好からストレートに表現されたものであること。丁寧に真面目に作り込まれていること。独自性がありながら穏当な着地点を見出していること。
春日崇弘シェフはこの3大課題をらくらくとクリアしてしまう資質に恵まれ、おかげで店内は賑わいが途切れることがありません。


●『りんごのタルト』  辺9cm 高さ3.5cmほど。
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そろそろ秋の品揃えにしたいけれど、林檎はまだ本領を発揮していない時季。
ということで一工夫したのが、このタルト。

ノルマンディーのお婆ちゃんに教わったのだそうです。家庭の味、といえるでしょうか。

シュクレとダマンドの上にクレームエペスを塗り、林檎を敷き詰め、焼き上がりにたっぷりアプリコットナパージュ。

果汁がたっぷりだったとみえ、ダマンドだけでなくシュクレもかなりビショビショになっていて、カリッとした食感が得られるのは底の縁の部分だけ。
普通、もう少し水分が飛ぶまで焼いた方がと思いがちだけど……、嗚呼なんだかとても美味しいのです。
ダマンドもシュクレも林檎、ナパージュ、エペスが一体となったクリームないしジュースのように呑めてしまう。するっと食べてしまう。ほほっ、甘露甘露。

たしかに林檎の味ではないような気もしますが、トロトロに煮えた林檎のおいしさは十分に感じる上に、より濃厚なコクをたっぷり楽しめるのです。
ひゃあ、お見事! 私たちもノルマンディーのお婆ちゃんに感謝しなくちゃね。



●『クイニーアマン』  径7cm 高さ3cmほど。
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Kouing-Amann とは、ブルトン語で“バターのお菓子”の意味。ブルターニュ地方の郷土菓子です。

正統クイニーアマンの砂糖と有塩バターが溶け合った濃厚なあまじょっぱい蜜がジュワリと滲み出す魅力には、一も二も無く降参。と手を挙げながら好きにならずにいられません。
でも、その甘くどさに本当に降参する部分も無きにしも非ず。

春日シェフも同じ想いを抱いたのかな。甘さ控えめのクイニーアマンを焼いています。
生地はクロワッサン生地でしょうか。トップに塩カラメル。

引き算をすると、クロワッサンの風味が蘇って来るのですね。ふっくら、生地の美味しさが味わえます。
少ないカラメルでも塩気を効かすことで存在感が増し、また表面のパリンッ感・カリッ感 vs 内側のしっとり感の対比もお約束通り。
ということで、なんだかもう1個欲しくなってきた。ほーらだんだん食べたくなってきた!



今日のお勧めを聞いたら、「まだ秋のフルーツが出そろっていないので、ちょっと工夫しました」と『りんごのタルト』を選んでくれました。時に、こういう工夫をせずに旬を待つ人もいますが、シェフは静かな笑顔。得られたパフォーマンスの高さに自信がある証拠ですね。
自分自身の舌に対する自信。これこそが「ラ・フルネ」の着実な歩みを支えていると云えるでしょう。



●『りんごのタルト』320円  『クイニーアマン』230円  (※外税)

●「ブーランジュリー パティスリー ラ・フルネ」
  大阪市西区土佐堀1-4-2  TEL06-6147-5267  定休日/月曜  営業時間/10:00~20:00

  ※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらのパン2種をご紹介しています。