エルベラン(7) 『ピュイダムール』

兵庫県西宮市、阪急神戸線・夙川駅の北2分のところにある「エルベラン」さん。
理論派で鳴らす柿田衛二シェフのお店。理論だけでなくお菓子との出会いや思い出を大切に温めて、愛情をもって新作を開発するところに、こちらのお菓子の魅力の源泉があると云えるでしょう。
伝統菓子の素朴な美味しさに魅了された思い出があるからこそ、「エルベラン」らしさを加えてブラッシュアップし、より広く愛されるものにしたいという思いが募るのです。


●『ピュイダムール』  径7.5cm 高さ4.3cmほど。
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こちらはパリの「ストーレー」で食べたものが素晴らしく美味しく、思い出に残っているそうです。
柿田シェフ「こんなに美味しいものをもっと広く知ってもらいたいけれど、そのままでは地味で、少し可愛そうかなと思って」とアレンジのきっかけを語ります。

パイ生地はアンヴェルセ。クリームとの一体感がより高まるからとのこと。

たしかにピンと真っすぐに伸びた普通折りの生地は鱗片も大きく、大げさに云えば口の中で舌に刺さるような強さも、ときにありますからね。やや生地感が強すぎるという思いがあっての選択です。
2.5mmに伸ばしたものを2枚重ねて焼いているのでヴォリューム感満点なのですが、サラサラと優しく解けて、なるほどクリームと素早く一体化されますね。

下のクリームの層は、ムースリーヌ。紅玉を浅くソテーしたものが入っています。
ごく薄いチョコプレートとビスキュイショコラを挟んでいます。

その上には、紅茶のクレームブリュレ。紅茶はイングリッシュプレックファースト、カルダモンを香らせています。

トップはカラメリゼではなく、グラッサージュカラメル。
カラメリゼは寿命が短く、本来のカリカリとした食感で味わえることは稀。ほとんどが泣いてしまってカラメルソースになってしまっています。見た目にも見劣りが。
そこで保ちのいいグラッサージュに置き換え、食感は間に挟んだチョコプレートに受け持たせるという発想の転換。


元祖的な形ではパイのブーシェにカスタードを詰めてカラメリゼ、といたってシンプル。
今回の『ピュイダムール』では、加えられたカルダモン風味の紅茶とリンゴのソテーが大きくものを言っています。
甘やかな思い出のお菓子が、フレッシュ感を残したリンゴの酸味とカルダモンの気品ある爽やかな香り、紅茶の深みでエレガンスを湛えたお菓子に変身しているのです。

とくに、リンゴは印象的。皮を水と砂糖で炊いたものをロボクープに掛けてコンフィチュールにしたものを、バターと砂糖で軽くソテーしたリンゴに和えたもの。一瞬、剥きたてかと思うほどに浅いソテー。ほぅ、爽やかで風味豊かですね。

パイがこれだけ分厚くてもバランス良く食べられ、クリームの魅力、リンゴの瑞々しさ、カルダモンの気品、チョコプレートのパリッとした鮮やかな食感 …… すべてが織りなし、新たな美味しさの泉が湧きいでています。
ふうぅなんて美味しいのでしょう。お見事です! 

圧倒的な出来映えなのに、人を威圧するのではなく、包み込むような優しさに溢れているところも素敵ですねぇ。



ピュイダムール puits d'amour(愛の泉)という名のお菓子に、アダムとイブの林檎が入るというのが洒落ています。まさに、“永遠の愛を誓う日”にふさわしいお菓子と云えるでしょう。
紅玉の出盛りの時にソテーしたものをストックしていて、その最後の用途として使われますので、1日8個のみ。「3.14=π(パイ)の日R」キャンペーン1週間だけの、“本当”の期間限定販売です。



●『ピュイダムール』500円   (※内税)

●「エルベラン」
  兵庫県西宮市相生町7-12  TEL0120-440-380  定休日/火曜、水曜はクッキーデー  営業時間/8:00~18:30

※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらの『生ケーキ』『トリュフチョコレート』などをご紹介しています。