ワイン食堂羊の家 ア ラ ヴァントーズ(6)『キッシュ』『タラのブランダード』『コッコヴァンのパスタ

大阪市阿倍野区、近鉄百貨店脇の阿倍野筋をターミナルとする阪堺電軌鉄道のチンチン電車を横目に見ながら南へ3分ほど、路地を左へ折れて突き当たりのビルの階段を降りると、そこに大人の隠れ家のようなワイン食堂「羊の家 ア ラ ヴァントーズ」がある。
というより、飲み屋というほうが実体に近い。事実、店主の豊田伸正さん自ら“料理人でもなくソムリエでもない”と言う。
本当はソムリエなのだが、十分に呑んで出来上がった人がやってきたりすることが多いので、神経質なワイン談義とは縁のない、ストレートにブルゴーニュらしい、ボルドーらしいといった骨太で大らかなワインを提供してくれる。だからここではワイン自慢などが語られることは、まずない。純粋に呑むこと、呑む雰囲気を楽しむ客ばかり。その健全な空気を求めて、三々五々、客が静かにやってくる。
今回は、開店早々の誰もいない時間帯にお邪魔し、後ろにまだ仕事を抱えていたので、サッと食べてスッと帰るという速攻だったから、誰とも会わずじまい。豊田さんをわれわれ二人で独占し、愉快に過ごしたのだった。


●『ハムとチーズのキッシュ』
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極薄に伸ばしたフォンセ生地を空焼きして、ハム、チーズ、タマネギの入ったアパレイユを流して焼いた、安定感抜群のキッシュ。

ほどほどの塩加減で、アパレイユの卵が優しく味わえる。ハムやチーズも軽い風味。玉ねぎのコクが美味しい。

フォンセが薄くて、食べ重りしないので、アントレとしてだけでなく、最後にちょっとお腹の調整に食べたとしても違和感がないだろう。

優しい味わいでいて、美味しいものを食べたという満足感が得られる。
これは豊田さんがセレクトしているワインにも通じる、落ち着いた美味しさ、当たり前の美味しさというものだろう。




●『タラのブランダード』
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これもキッシュ同様、毎回頼んでしまう。

干しダラを牛乳で炊いて戻して、ほぐし身をマッシュポテトと合わせたもの。塩気が利いている。
冷製でも食べられるが、冬場はやはり温め直したものが嬉しい。

ニンニクをこすりつけたトーストに乗せて食べると、ちょっと後を引いて、たちまちペロリ。

フランスの地方料理、伝統料理のなかでも出色の美味しさと個性が光るね。
フランス版イモ棒、ぜひご賞味あれ。



●『コッコヴァンのパスタ』
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本来はメニューにない皿。

二人揃って空きっ腹を抱えていたので、パスタか何かお腹に溜まるものをとのリクエストに応えて「若鶏の赤ワイン煮でいいですか」と気軽にパスタを茹で始めてくれた。

煮汁にトロみがつくまで煮詰められたコッコヴァンが美味しく仕上がっていて、平打ち麺(タリアテッレ?)に味がよくからんで美味。アルデンテの茹で加減もジャスト。
まあ、煮込みパスタなので、“ほうとう”のようにふっくらするところまで煮込んでも面白かったかもしれないけれど。

ちなみに、幼児期のトラウマを抱えていて、普段鶏肉を口にしないイワモトが美味しいといってコッコヴァンを平らげたとお伝えすれば、どれだけ美味しいものだったかがお分かりいただけるだろうか。




画像以前にご紹介したメニューばかり。
究極のマンネリ。この安定感がいいね。

メニュー選びで考え込んだり、どういう美味しさに出会うのか緊張して待ったりということがない。
つねに安心できる美味しさ、任せていられる開放感、好きだなあ。






●『突き出しのグジェール』『ハムとチーズのキッシュ』『タラのブランダード』『コッコヴァンのパスタ』+赤ワイン2杯  4320円    (※税込)

●「ワイン食堂羊の家  ア ラ ヴァントーズ」
  大阪市阿倍野区阿倍野筋2-4-48  TEL06-6627-5739  定休日/不定  
  営業時間/早ければ18:00くらい~終電に間に合うくらい(本人は“僕は終電逃すことになるんですよね”と苦笑いしているが)