パティスリーエメラ(5) 『ピティヴィエ』『ショソンオポム』

奈良市、近鉄奈良線・富雄駅から南に2分ほどのところにある「パティスリーエメラ」さん。
こちらのショーケースの凛とした麗しい姿のケーキを目にすれば、一瞬でファンになってしまうでしょう。
藤原尚樹シェフは「雑誌で紹介されたり、百貨店に出たりして注目されると、お客様はそれだけの期待感を持って店に来られるでしょうから、恥ずかしくないものを、と気を引き締めています」と、油断や慢心と縁のない人柄。
十分実力のあるシェフなのに、あくまで腰の低い態度が嫌みにならず、可愛くさえ感じられるところが人徳。人を惹き付けて止まない魅力に溢れています。
本日は、充実のヴィエノワズリーコーナーから、フィユタージュを使ったもの2品ご紹介しましょう。


●『ピティヴィエ』  径8.8cm 厚み2.5cm 55gほど。
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ほぅ、美しいですねぇ。

焼きっぱなしのお菓子にあまり美しさは期待しないものですが、藤原シェフはそれを許しません。
彼の場合、商品はすべからく美しさの魅力に輝いていなければならないのです。
もう見た目で、う~っとり!

以前にもご紹介しているのですが、今回のものは形状と生地が完全にリノベーション。
アンヴェルセから普通折りに。粉は薄力、中力、強力の3種を混合していますが、薄力粉が7割を占めるという変則ヴァージョン。3つ折り5回。
その結果、とても軽やかな食感を手に入れています。

口へ運ぶ時から、バターの香りやパイ生地の芳ばしさが、ふわんと広がってきます。

サクッ、サラサラ! おぉすごいなぁ……、うんうん美味しいっ!!
軽快、軽妙といった言葉では当たり前すぎる。儚く崩れ去ってしまうのですが、その刹那にキリリと引き締まった勁さも感じさせてくれるのです。
最終的に感じるのは物理的な性質の枠を越えて、精神的な清潔感のようなもの。ふうむ、これだけで素晴らしい、食べていて惚れ惚れ。

画像合わせているのはいつもの、クレームダマンド(ヴァニラペースト入り)。
嗚呼、この豊満さとの出会いがいいんですねぇ。両方が相手を認め合って、引き立て合っているのです。

そもそも、そういうお菓子ではあるのですが、なかでもこの生地との組み合わせが絶妙。
卵、アーモンド、バター、砂糖のそれぞれの豊満さが束になってかかっていっても敵わない繊細さというものがあることに、目を啓かされた思い。ワォ!

夢中になって食べました。
舌を巻くほどの出来映え、やりますなぁシェフ、お見事です!




●『ショソン オ ポム』  7.2×12cm 厚み2.5cm 80gほど。
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あら? ショソンはわりとぶわーっと思いっきり浮かせたものによく出会うのですが、端正な姿。

大きく浮かせたくないということで、2番生地を使っているそうです。
藤原シェフらしいですね。

フィリングは市販のプレザーブをそのまま使用(修業したベルギーでもそうだったようですが、ヴィエノワズリーといった日常のお菓子は、すべてをアラメゾンにするよりも、まずは安定供給が使命とのこと)。
だけど、侮ってはいけない、というレベルの美味しさ。
林檎の風味もいいし、甘さ控えめで十分酸味もあって、瑞々しくフルーティ。

画像パイ生地とのバランスが、じつにいいですね。
それになんていったって、一口目から、リンゴへ到達する嬉しさよ。ふふっ鯛焼の尾っぽを思い出したりして…。

プレザーブで水分が多く、焼いている間に生地が蒸気に当たっているので、どこかふっくら、サワッとした柔らかな感触もあって、品良く優しい印象です。

ふぅ、いずれもシェフのサービス精神の結晶です。




いくら京阪神のケーキ激戦区とは違う土地柄とはいえ、こちらのお菓子は使っている材料、掛けている手間、仕上がりの美しさからいえば、お値段は格安設定。
なかでも、ヴィエノワズリー商品(焼きっぱなし)は、さらに上いく特別のサービス価格になっています。

ん、んん?  『ピティヴィエ』250円?  『ショソンオポム』が260円?  えーっ、あり得ないよぉ! 
これまでパティスリーだけでなく、パン屋さんも含めてたくさん食べてきました。が、こんなに安い価格はほとんど出会ったことがありません。
値段に敏感な私たち(あはっ)でさえ、安すぎる! もっと高くてもいいよ、計算間違いしてない? と心配してしまったほど。思わず、藤原さんに聞き返してしまいました。

シェフは“ヴィエノワズリー = 日常性”を重視していて、手を出しやすい価格に抑えているとのこと。だれもが食べたくなる魅力に溢れる素晴らしいコーナーに仕上がっています。
しかも(ここからが肝心)、気軽にパクパクと食べられる気楽な魅力に溢れていながら、食べた満足度が“日常から半歩踏み越えてくれている”のです。素朴な良さ、というよりも、キラリと光る冴えを感じるのです。
さらに。とびきりの味を支えるのが、きめ細かなお店の心遣い。パイの表面に透明のセロファンが貼ってありました。カラメリゼしていると箱にくっついて剥がれやすくなるのですよね。カット売りのタルトに至っては、カット面(サイド)にも。乾燥しないような配慮でしょうか。
日常性と唱いつつも、最良の状態で提供したい心意気にほとほと感心してしまいました。

いかにも「エメラ」流のヴィエノワズリー。素晴らしいです。



●『ピティヴィエ』250円  『ショソンオポム』260円    (※外税)

●「パティスリーショコラトリー エメラ」
  奈良市富雄元町2-6-40  TEL0742-44-6006  定休日/水曜  営業時間/11:00~20:00 (日祝~19:00 )

  ※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらのパイ生地以外の焼きっぱなし『ガトーバスク』『ケーク』をご紹介しています。