パティスリーAKITO アキト(3)『プラリネルージュのミルフィーユ』

すでに大人気の「パティスリーアキト」さん。2014年4月のオープンですからまだ1年未満。
それでもベテランの田中哲人(あきと)シェフ、余裕を持って「3.14=π(パイ)の日R」キャンペーンにご参加いただけました。
しかも、この季節ならではの惚れ惚れするミルフィーユを作ってくれたのです。さっそくご紹介しましょう。


●『プラリネルージュのミルフィーユ』   7.5×4cm 高さ5cmほど。
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プラリネルージュとは美食の街リヨン特産のお菓子で、赤く染められているところに特徴があります。

シェフはリヨンを訪れた時に惹かれた経験と、以前に百貨店でリヨンがテーマとなるフランス菓子のフェアが開かれた時に、プラリネルージュを大量に(50kg!)作ったことがあったそうです。

その2つの経験から、季節ごとに変わるミルフィーユのシリーズの一つとして、ぜひプラリネルージュを加えたいと思っていた、とのこと。


積年の想いが詰まった『プラリネルージュのミルフィーユ』。
鮮やかです。美しいです。これほど可憐で、エレガントなミルフィーユに出会ったのは初めて。

昨夏いただいた『グリオットピスターシュのミルフィーユ』に比べると、生地は強力粉が少し多め、そして香りがかすかに残る程度にまでビネガーを増量。食感の軽快さを強調すると同時に、味わいの深さも増そうとしているようです。

もちろん、プラリネルージュは自家製。
アーモンドを煎ってから、鍋でシロップに和え、火に掛けてシロップを糖化させ、アーモンドの表面に砂糖の膜を作ることを何回も繰り返して作る、じつに手間の掛かる代物です。シロップに食紅で色を付けているので赤い仕上がり。
「AKITO」さんでは、一から手作り。どんなに面倒でも、ここはけっして譲れないところなのでしょう。

出来上がったプラリネルージュをフードプロセッサーにかけてペーストにしたものをバター、カスタードと合わせてムースリーヌに。
トップを飾っているのは、プラリネではなくアーモンドダイスに着色したもの。潔いほどの鮮やかな赤、それでいて品位を失わない美しい色合い。いただいた時にも陶然としたものですが、こうして写真を見返していてもうっとりしてしまいます。



画像さぁて、とくと眺めて口へ運びましょう。
…… パリッと一瞬強さを感じさせながら、次の瞬間には軽やかにサクサクッと儚く崩れて行く、繊細なフィユタージュ。

強力粉を増量した強さの方向と、ビネガーを増やしたグルテンを切る効果の両方が実現しているのです。
机上の計算では反対方向の要素を加えているのですからキャンセルされてしまいそうなのに、そうはならず、両方を手に入れている。
これはもう職人にしか分からない、手の感触から導き出された手法なのでしょう。いやあ、見事ですねぇ。

と云いつつ、この食感を得ている時には、すでにクリームの口当たりや味わい、香りも押し寄せてきています。カスタードの卵の香り、バターの香りが馥郁と、そしてプラリネのアーモンドの香りも背景にどっしり控えています。

プラリネのペーストだし、色彩的印象からも甘ったるいはず、と単純に思い込んでいました。
が、しかーし。じつに爽やかな甘さ。ムースリーヌがねっとりとした重さから、体温を感じると同時にスルリと消えて行く軽やかさと一体となった甘さなのです。優しくキレのいい甘さ。

甘みのトーンだけで、食べ手を想像のその先へふわりと運んでくれたのでした。う~ん、いいなぁ。魅入られてしまいました。
おそらく、生地とのバランスがいいからこそ、一口ごとにクリームを新鮮に感じるのでしょう。最後まで、最初に目を見張った美味しさの印象がつづくのですからね。

しかも、幾分かの緊張感を伴った美味しさ。優しい味わいのなかの、洗練と緊張。これをしてエレガンスと呼ぶのでしょうね。



なんと嬉しい体験! 美味しいものを食べて精神的に高められる。長年、食べることに興味を持って、食べ歩き体験を重ねてきましたが、何年かに一度あるかどうかでしょう。
それが「AKITO」さんを訪れれば毎回体験できるのですからね。おぉ、ファンタスティック!!

3月限定の春色ミルフィーユ、春はすぐそこに。



●『プラリネルージュのミルフィーユ』480円   (※外税)

●「パティスリー AKITO」
  神戸市中央区元町通3-17-6  TEL078-332-3620  定休日/火曜  営業時間/10:00~19:00