ビゴの店(10) 『ミルフゥィユ』『ミルフゥィユ ショコラ』

今年は、フィリップ・ビゴさんが来日して、たしか50年目の節目の年。
最近は日本のパン文化が著しく向上し、パンコンテストの国際大会で優勝することも珍しくなくなりました。それもこれも、ビゴさんが「ドンク」を育て、「ビゴの店」を通じて美味しいパンとは何かを教えつづけ、多くの弟子を輩出してくれたからにほかなりません。
若手が世界のトップに伍する実力を持っていると自信を持つのはもっともですが、ここへ至った歴史や一つひとつのパンのルセットの必然性、パンを取り巻く食文化の広がりについてはまだまだ勉強すべきことがあるはず。
そういう時にいつも帰り着くのが、ビゴさんなのです。いつまでも大切に愛しつづけたいお店です。


●『ミルフゥィユ』   3.3×10cm 高さ3.3cmほど。
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ワォッ! 箱からお皿に移すときに、芳醇なお酒とパイ生地の芳ばしさとクリームの卵、ミルク、ヴァニラが混じり合ったとても美味しそうな薫りが強く漂ってきます。
思わず、クラクラ~。

かつては、生地を4枚使って縦に並べたものが出ていましたが、ルセットが変わったようです。生地は以前の『ミルフゥィユドボワ』に近そうですね。

普通折りの3つ折り6回。粉は中力粉:強力粉が7:3。
表面を分厚くカラメリゼしています。カラメリゼがカリカリと存在を強く主張していて、サクサクとした生地以上に強く感じられます。

クリームはカスタードに1割強ものキルシュが加わり、生クリームで軽くしたもの(ヴァニラビーンズ入り)。

このカラメリゼとキルシュの風味が強烈です。
競演しあう2つが一体となって、一瞬ラム酒かと錯覚させるものがあります。この錯覚、じつに心地いい。

生地はよく焼き込まれていて、ほろ苦。薄めの生地に対してたっぷりのクリームで苦みに対抗する甘さを補い、キルシュの風味(キルシュ自体のお酒の苦みもかすかに感じる)で、華やかさを演出。
とても力強く豊かな味わい。

画像一口ごとに陶~然とし、打ちのめされてしまいます。

なんとも思い切りのいい自己主張。
しかも、誰をも納得させるだけの強靭さをもった美味しさ、じつにお見事です。
敬服に値しますね。ふうぅ。





●『ミルフゥィユ ショコラ』   3.3×10cm 高さ3.5cmほど。
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ヴァレンタイン企画で“ショコラ”バージョンも出ていました。
ヴァレンタインデーまでは毎日でしたが、その後はホワイトデーまで土日限定で出される予定です。

こちらは薄力粉:強力粉が1:1。3つ折り4回、4つ折り2回とより緻密になっています。生地はバターにカカオを加えたタイプ。

クリームはビゴさんならではのポッテリしたカスタードに、スウィートチョコとミルクチョコが加えられたもの。

チョコレートのミルフィーユは、なかなか出会えません。やはり生地が絞まってしまったりカカオの香りが弱まったりして、パティシエ泣かせなのでしょう。
が、口へ運んだ時からすでに香りが立ち上がってきて、期待は膨らみます。


画像一口食べると……、ほぅぅ美味しい! 
果たせるかな、チョコレートの香りが馥郁と香って魅惑されてしまいました。

生地はサクサクサラサラと鱗片が細かく繊細に崩れます。優しい食感。
カラメリゼが目立たないのでカカオの香りがストレートに広がります。
カスタードショコラは重めの舌触りで、生地のありあまる存在感を迎え撃つに十分の力強さがあります

生地が砕け切るのと、クリームが溶け切るのがシンクロしているところに隠れた凄みがありますね。
チョコレートの香りの豊かさも持続するし、食べている過程が完璧に計算されたお菓子こそが、名作と呼ぶ価値があるのでしょう。
そうそう、表面の粉糖、あるところとないところでまた味わいが明らかに異なるのですよ。

2種のミルフゥィユ、じつに素晴らしかったです。ふぅむ、参りましたぁ。



いやはや恐れ入りました。少し目を離しているとこれですからね。老舗の底力、思い知らされました。
定番の変わらない魅力を愛しているのですが、これだけ年数を経て、未だなお見えないところで進化しつづけているところもあるなんて! 何度でも云いましょう、頭が下がります。



●『ミルフゥィユ』324円  『ミルフゥィユ ショコラ』345円  (※内税)

●「ビゴの店」本店
  兵庫県芦屋市業平町6-16  TEL0797-22-5137  定休日/月曜  営業時間/9:00~21:00

※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらのパンをご紹介しています。