エルベラン(6) 『サントノーレ』

3月8日~14日まで開催の「3.14=π(パイ)の日R」キャンペーン、今年で第14回目となりました。
私たち「日本パイ協会」の二人が企画・運営しています。

一体何をしている人たちなの? と疑問をお持ちの方も多いようですので、少し私たちのことをお話します。
普段は二人ともフリーのライター&プランナーですが、パイ好きお菓子好きが嵩じて、この時期はパイの日のプロデュースも手がけているのです。
広告業界に身を置いているので、キャンペーン企画などは若い頃から提案もしてきました。
が、企画立案と自らが実施することのあいだには、大きな隔たりがあるのです。しかも低予算、手弁当。手足をもがれた素人同然の手探り状態からのスタートだったと云えるでしょう。
周りを巻き込みながら行動を起こす。企画書の上では容易いことですが、現実となるとあまりの大変さに後ずさりしたくなることもありました。もちろん、涙がでそうなくらい嬉しいこともありました。

“美味しいパイを味わってもらいたいし、シェフたちの頑張りもお伝えしたい” 
そんな想いをひとりひとりのお客様の心へ届けたいという初心は揺るがず、年々責任とともに強くなっています。

さぁて、今年も錚々たるシェフたちがこぞって力作を競演してくれています。
当ブログでは、本日から3月14日までパイ三昧の日々が続きます。ぜひ、楽しんでくださいね。


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兵庫県西宮市、阪急夙川駅の北2分のところにある「パティスリー エルベラン」さん。当ブログでももうお馴染みですね。
柿田衛二シェフ、「3.14=π(パイ)の日R」キャンペーンに向けて、新作『サントノーレ』を開発してくれました。なんと、このプチガトーを作るのは、シェフ初なんだとか。


●『サントノーレ』(試作品)   13.7×3.8cm 高さ5.5cmほど。
画像
シューとクリームとフィユタージュ(フォンセ)、この3要素のお菓子、サントノーレ。

シュー菓子の代表です。
なんといっても、主役はシュー。一番下にパイ生地が敷かれているのはあまり意識していない方もいらっしゃるかもしれません。

柿田さんは「せっかくの“パイの日”だから、パイに注目してもらいたいし、逆転させました」と、写真のようにシュー生地より上にパイ生地を載せ、パイ菓子でもあることを強調。

シェフ曰く「フランスの“ル・ジャーナル ド パティスリー”という雑誌で、クリストフ・アダム(フォションでカラフルなエクレアを開発したことで有名)がエクレアにフランジパーヌを詰めて、上にフィユタージュを載せ“ガレット デ ロワ”って言っているの見て、素材が共通する部分があれば拡大解釈ありなんやな」と思ったとか。

そこから、大振りで場所塞ぎなために、生のショーケースが狭い(焼菓子、半生菓子の多いお店なのです)自分のお店には縁のないお菓子と思っていたサントノーレをアレンジする気になった、という裏話。

生地の組み合わせの上下をただ逆転するだけでなく、クリームを思い切って従来にないものに入れ替えています。伝統的なパターンでは、シブーストクリームかクレームシャンティが一般的。シュー生地の中はカスタードというのも多く見られます。
しかし、そのどれでもないクレームマロンを採用しているのです。
アンベール社の無糖のマロンペーストにヴァローナのジャンドゥーヤ ノワゼット レを加え、ゼラチンや生クリームで軽めの仕上げ。MOFのジャン=ジャック・ボルヌのクリームがベースになっているそうです。
シューの中も間もトップもすべて同じクレームマロンが使われています。
トップに、チョコのプラックとペタセタキャンディが載っていますが、この辺りの微調整は取材時点では未決定。



画像では、ナイフを入れましょう ……サクッと快音。

ナイフを入れる瞬間からフィユタージュが意識されていいですね。
クリームの上で不安定で切りにくいはずなのですが、サクサクとナイフが入ります。もうこの時点でフィユタージュの生地の良さが伝わってきます。
普通だったらシュー生地に分厚く飴がけするところですが、フィユタージュを軽くカラメリゼすることで、飴の位置をずらしています。品のいい方向に進んだと言えそうですね。

サックリ、サクサクと気持ちよく砕けると、次にシューのふっくら感が押し寄せてきます。この落差は面白い。オーッ、シュー生地の中はまっ黄色ですねぇ。
フィユタージュアンベルセは『ミルフイユ』の、シュー生地は『エクレール』の生地と同一。いずれも名品です。ご自慢の生地の響宴。

そして、クリーム。あぁ栗だぁ。
マロンとヘーゼルの香り(隠し味にラム酒)が同居していて、マロンがより豊かに感じられます。
ジャンドゥーヤですが、チョコ感は弱く、ヘーゼルが強く主張。マロンのいい引立て役。奥行が感じられますね。
クリームは甘みが控えめであっさりしているので、トップのチョコプラックが味わいを引き締め、全体のまとまり、印象の強さが築き上げられています。
シュー、フィユタージュ、カラメル、クリーム。素材の組み合わせは守っているのに、一般のサントノーレとは別次元のお菓子に変身。
この冒険心を伴った遊び心がいかにも、衛二さんらしい。


細部までよく考え抜かれたお菓子。品良く繊細な味わいに惹かれますが、単純にうっとりするクリームの甘さも欲しいのかな。
と思っていたら、シェフはすでにサバトンのマロングラッセをクリームに忍ばせるアイデアを進行中でした。ワォッ!
さらにブラッシュアップされる予定ですので、期待感がいやが上にも膨らみます。



●『サントノーレ』500円    (※内税)

●「ケーキとクッキー  エルベラン」
  兵庫県西宮市相生町7-12  TEL0120-440-380  定休日/火曜・水曜不定休  営業時間/8:00~18:30

※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらの生ケーキをご紹介しています。