パティスリーユージ(1) 『洋梨のミルフィーユ』『タルトタタン』

京都府宇治市、JR奈良線・宇治駅南口前の大きな道路を渡って、次の裏道の角にあるのが「パティスリー ユージ Yuji」。2013年7月オープンの新店だ。当ブログでは初めての登場。
「パティシエ山川」があったところ。山川良廣さんといえば、この業界の大立者。「アンテノール」「マールブランシュ」の2大ブランドを立ち上げたシェフであり、ホテルでも名を馳せた。
その山川さんが2013年引退し、マールブランシュ時代からの弟子であった長谷川裕次さんが後を継いでいる。
御大のお気に入りということだろう、おのずと期待が高まるというものだ。(※今回の書き手はクボタ)


●『洋梨のミルフィーユ』  4.3×9cm 高さ5.8cmほど。
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ミルフィーユに果実を会わせる場合、普通、水気の出にくいものを選ぶ。
苺、栗、林檎などは体験してきているが、洋梨は珍しい。しかも、クリームに埋め込まずに、トップの生地に直置き。

生地は普通折りで、強力粉:薄力粉=1:1。3つ折り6回。焼き上がりにカラメリゼ。
カスタードは糊気の強いぽってりタイプでキルシュでスッキリ感を出したもの。
洋梨はシロップとレモン、ヴァニラでコンポート。

あくまで洋梨との一体感をめざしたミルフィーユであって、生地の個性で食べさせようとはしていない。だからこその標準的な折り。
「生地が湿気るのはしょがないですね」と語るのは、むしろ生地のパリパリ感ばかりが目立っては洋梨に焦点が当たらないことを避けたいとの思いからだろう。

洋梨が瑞々しく、軽やかな甘酸っぱさと熟れた香りの魅力がほとばしる。そう、ジューシーなミルフィーユ!

サクサクとした食感の生地と、ぽってりとしたクリームでたっぷりの水気を受け止め、全体として淡い美味しさの世界を築き上げている。
洋梨の両サイドに絞られた生クリームも全体の境界をぼかし、一体化させるための脇役として重要。カスタードのキルシュは逆に、スッキリ感を出す役割を果たしているといったところ。

隅々までよく考え抜かれたミルフィーユだ。




●『タルトタタン』  辺11.5cm 高さ(本体)4.5cmほど。
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ドーンと迫力満点の大きさ。
林檎の美味しさを食べさせようという意気込みが伝わってくるね。

しかも、リンゴは極めつけの紅玉。
最近人気が下降気味だけど、この深い甘酸っぱさこそが最大の魅力。

普通のタタンと作り方が違うのは、紅玉のおいしさに忠実であろうとする姿勢の表れ。
鍋に詰め込んだリンゴに砂糖とバターをふりかけ、持ち味自体を変身させる程に、黒々とした色合いになるまで焼き込むのが一般的。
しかし、長谷川シェフはリンゴだけで焼き込み、じっくりと火は通すけれど、リンゴの色のままを保っている。
焼き上がりに表面だけカラメリゼ。

底生地はフィユタージュの二番生地。
その上にそこそこ厚みのあるジョコンド。湿気防止というだけでなく、風味が増し、味わいを豊かにしている。

口にするやいなや、とろとろと溶けてゆく。旨い。なんてフルーティなのだろう。
最近、紅玉の品質が落ちてきていて渋みが感じられるケースが多々あるけれど(シェフたちは味見しているのだろうか)、まるでなし。
涼やかに、しかも力強く存在感を主張している。紅玉にこれだけのパワーがあったのだなと、再確認できて嬉しいかぎり。

生クリームを添えるのは定番だが、さらにその上にオレンジピール。これが意外といい。リンゴの爽やかさを強調するとともに華やぎも付け加えてくれている。

いつもの書き手イワモトも「格別のとろとろ~柔らか感と甘酸っぱ感に、ジューシーさ、素晴らしい。林檎のささやきが聴こえてくるねぇ」と悦に入っていた。
新人とは思えない、奥床しさとパワーを秘めた味わい。お見事です。



師匠があまりに大きな存在なだけに、客から比較されて苦労しているだろうに、落ち着いたケーキを作っていてブレがない。作り置きするものより、その日に作るものが好きとのことで、生地ものや焼き物が多く、好感が持てる。
たった2個のケーキでは全貌は伝えられないが、期待が膨らむね。



●『洋梨のミルフィーユ』450円  『タルトタタン』560円  (※内税)

●「パティスリーユージ」
  京都府宇治市宇治壱番70番地  TEL0774-66-1102  定休日/火曜・第3水曜  営業時間/10:00~19:00(カフェ11:30~19:00)