ジヴェルニー(2)『ミルフィーユ』『ショコラエピス』『タルトシトロン』『すももとピスタチオのタルト…

久しぶりに、地元・苦楽園の新店「ジヴェルニー」さん(2013年10月オープン)に行ってきました。
前回はオープンして半年程度の時期。まだまだ手探り状態にある様子でした。それが春の忙しいシーズンを乗り切って、じわじわと実力を余すところなく発揮し始めたようです。
新しいお店が迷わず力を発揮する時ほど、輝かしい魅力に溢れることはありませんね。客の私たちも、なんだかつられて晴れやかな気分になってしまうから、あら不思議。
さて、前置きはこれくらいにして素晴らしいケーキの数々をご紹介しましょう。


●『ミルフィーユ』  3×8cm 高さ4.5cmほど。
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ふーむ……、参ったぁ! 

口に入れるなり、パイ生地の繊細さ、香り高さ、カスタードの豊かな優しさが、真綿でくるんでくれるように、そぉっと、じんわりと迫ってくるのです。
この感覚、いやはや見事です。

のっけからKOパンチを喰らってしまいましたが、落ち着きを取り戻して冷静にレポートしてみましょう。では。

薄力粉:強力粉=1:3で、普通折り、3ツ折り4回。

通常の6回より折りの回数を減らしています。これは、促成を狙ったというより、せっかくきれいに織り上げた薄い層を大切にしたいからでしょう。
ミルフィーユの“千”に近づけようと頑張って回数多く折ってみても、ものの本によると、生地が薄くなるのは厚さ3mmの生地を50層に折る程度が限界なのだとか。だから多く折ることはじつは、生地を薄くするのではなく、再びくっつけたり壊したりしてしまう無駄な作業ともいえる…云々。

現に、こちらの『ミルフィーユ』の一層一層が、薄くまっすぐに保たれ、サクサク、サラサラと繊細な食感。グルテンをつないできれいな層を作りはしても、それ以上にくっつけていないことが分かるのです。
この生地が大切に作られているのは、表面の格子模様と粉糖のお化粧の美しさからも察しが付きますね。

ナイフもスッと入って、とても食べやすい。
芯の部分まで均一に焼けて、ほろ苦さもあり、塩気もあり、深く力強い味わいと芳ばしい香りが立っています。

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充実のパイ生地をラクラクと受け止めているのが、ムースリーヌ。
絞り方も可愛くて、思わずニコッ。一際眼を惹きますね。

軽いのかと思ったら、なんのなんの、どっしりポッテリとした口溶けで、パイ生地を抱き込んで、優しくも力強い、一体感のある味わいをもたらしているのです。

このミルフィーユ、豊満なバターの香りに、ヴァニラとミルクっぽさも加わって優しさの限り。カラメリゼの甘さも含めて、甘さもたっぷり。
それがくどさに繋がらず、むしろ、生地の強い味わいを和らげる働きを示している。もうどこからどこまで、すっかりバランスが取り切れていますね。

しかも、特筆すべきは“これでもか”と見栄を切るところがないのです。楚々とした佇まいもあり、これほど素晴らしいミルフィーユに出会うことは滅多にあるものではありません。

もう一度言わせてください、お見事です。 ワオッ!





●『ショコラエピス』  5×4.5cm 高さ4.7cmほど。
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私たちはよく始末菓子と呼んでいますが、シェフは最近の言葉通り再生菓子と呼んでいます。
なるほど、もったいないの始末の精神以上に、生命を蘇らせようという意欲が全面に出て、いい呼び方ですね。

これは『ティグレ』など、いろいろなお菓子や素材を再生したものだそうです。

シュクレ生地(いずれもほんの少しアーモンドパウダー入り)の上に、ティグレやナッツ類などとチョコレートをミキサーにかけて練り合わせたもの。
シナモンを中心としたスパイスが入るのですが、ほのかに香っています。ドバーッと匂うわけではありません。
トップに塗ったアプリコットのナパージュの甘酸っぱさが、気の利いたアクセント。

ねっとりどっしりとした食感。ふふっ、独特です。
シェフは「羊羹みたいです」と言いますが、もう少しなめらかに溶けてくれます。

シンプルですが、最初から複雑な要素を秘めたお菓子なので、食べ飽きない美味しさ。いろいろな魅力がないまぜになった混沌とした美味しさこそが魅力でしょう。

ちなみに、加わるものが毎回微妙に変化するだろうし、いつもいつも再生ばかりしていてはいけませんから、いつ出会えるかはお約束できないお菓子でもあります。
まァ時の運。見つけたら、ぜひ!





●『エキゾチックフロマージュ』  径6cm 高さ3cmほど。
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おなじみのキリにヨーグルトを加えた、所謂チーズケーキ。

が、たんなるチーズケーキではありません。

パートシュクレの器の中は、パッションフルーツのバタークリームがたっぷり詰められていて、中にはマンゴーの果肉入り。
チーズのアパレイユは、コクや塩分も感じますが、ヨーグルトが加わってマイルド。

一口いただくと……、おっ、パッション&マンゴーの果実、鮮烈! 
南国の空が一瞬見えましたとも、たしかに。
それらをシュクレの生地が易々と受け止めています。

嗚呼、これだけ全体が一体の味わいを形作り、すこぶる美味しいというのはそうそうあることではありません。
そうそう、パッションのペパンも、ガリリッと画竜点睛的役割をしっかりと担っています。

暑い夏だからこそ映える、チーズケーキ。いやはやお見事。






●『タルトシトロン』  5×5cm 高さ6.8cmほど。
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おや? ちょっと珍しいデザインのタルトシトロンですね。四角形だし。

普通、大甘のメレンゲたっぷりになるところを、乾燥焼きした、さほど甘くないものが2つツンツンと。
波々の部分は生クリームです。これも大甘ではありません。黄色いのは、レモンのジュレ。

そして、レモンのバタークリームは……ひゃあぁ、スッペーッ! 
それに、とろんとした口溶け。美味しいなぁ。

下は、厚めのシュクレと薄ーく敷かれたダマンド。
ダマンドにもレモン果汁が使われているので、全体としてかなり酸っぱめで爽やか印象。

ほっほほ~、酸っぱいもの好きとしては堪りませんねぇ。
バタークリームの口溶けの良さも快感。食感の組み合わせもヴァリエーションがあって楽しい限り。

爽やかなレモンの魅力を、まわりみんなで引き立ててくれているようです。
おかげで、活き活きとしたレモン全開! 素晴らしいです。





●『すももとピスタチオのタルト』  5.5×5.5cm 高さ2cmほど。
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焼きっぱなしの季節のタルトが登場していました。やったー!

スモモは美味しいのに、意外と使うお店が少ないんですよね。酸味が強いからでしょうか。
その渇を癒してくれているのも素晴らしいところ。

サックサクに焼けた、厚めのシュクレが際立っています。
そしてたっぷりのピスタチオのダマンド。
その上に、フレッシュのスモモ。アプリコットのナパージュ。

スモモの赤 vs ピスタチオの緑、嗚呼この取り合わせが美しい。

しかも彩りだけではないのです。鋭い酸味を受け止める、油脂分の豊かな円やかで香り立つピスタチオの存在感の大きさを誉めたいですね。
アプリコットのナパージュの酸味も効いています。

たっぷりのダマンドのボディに対して、スモモは量が少ないにもかかわらず、味わいは拮抗。バランスが素晴らしい。

トップにライムのゼストを散らして、品のいい味わいにするなど芸も細かいし、シンプルな焼きっぱなしと侮れない見事さ。鋭さを持った味なのにしみじみ美味しいですねぇ。

夏らしい新鮮な果実の味わいをそのまま生かした、みずみずしいタルト。いいなぁ、これ。




さてさて前回、大きな疑問符の問いかけをして終わりましたが、答えはお判りですよね。
そう、ランボーの詩が元となり、ゴダールの映画「気狂いピエロ」からパスティーシュしたのでした。

    僕は地中海に浮かぶ一つの大きな疑問符だ!   

    もう一度探し出したぞ!
    何を?  永遠を。
    太陽と番った海だ。

ショーケースの正面の壁にはランボーの小さな顔写真が張られているからでした。
ふと見ると、んん? えーっとこの人物は誰だっけ…と気づく仕掛けになっています。ゴダールのお洒落なポスターではないところがいかにも。
訪れた日も流れる音楽はバッハ(「フランス組曲」だったかな)だったり、店名の由来もモネだったりと、シックでお菓子の雰囲気にもあっています。
長い間忘れていたことを思い出したような、懐かしい感触が GIVERNY にはあるのです。



●『ミルフィーユ』450円  『ショコラエピス』280円  『エキゾチックフロマージュ』430円  『タルトシトロン』430円  『すももとピスタチオのタルト』360円(※内税)

●「パティスリー オ ジャポン ジヴェルニー」
  兵庫県西宮市北名次町10-12  TEL0798-74-5007  定休日/水曜  営業時間10:00~19:00

※ブログ「パイ日和・おまけ」では、このお店のケーキ&マカロンを紹介しています。