シャルルフレーデル(7)『タルト フリュイルージュ』『タルトルバーブ』『タルト プラリネルージュ』…

大阪府泉佐野市、JR阪和線・日根野駅から西へ8分ほどのところにある「シャルル フレーデル」さん。当ブログの常連です。
シェフの門前有さんは、とても謙虚で向上心を絶やさない人。お店のオープンからもう15年ほど経ち、シェフ自身も40代なかばに差し掛かって、ベテランと呼んで差し支えのないキャリア。
なのに、“40、50は見習い。70で引退と考えてますから、まだまだ成長する時間の余裕がありますね”と、聞いている方が気の遠くなるほどの打ち込みぶり。
この真摯な精神から生まれるお菓子に、少しも堅苦しさがないところが素晴らしいのです。


●『タルト フリュイ ルージュ』 径6.8cm 高さ7.5cmほど。
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よくありがちなフルーツを乗っけた、そんじょそこらのタルトとはわけが違います。ふふっ。
とても個性が際立っているのです。

堅すぎると思うほどの強い食感のパート シュクレに、自家挽きの皮付きプードルを使ったクレーム ダマンド。
イチゴとブルーベリーが載っていますが、どちらも稀に見る酸味の強さ。
それだけに止まらず、その中央にイチゴクリームを絞っています。

ここまでは、タルトに、苺に、苺クリーム。よくある組み合わせ。
だけど、食べてみたら、むむっ、なにこれ? 
イメージしていた味わいと違うのです。心地いい裏切り。

はてさて。そのイチゴが入ったバタークリーム。これがキーポイント。
先輩である「アルカイク」の高野シェフが開発した手法で、ロボクープにかけてクリームを一旦シャバシャバにして一晩置くと、バターとゼラチンの凝固力で適度な食感が得られるという。

ちょっと変わった口当たりにへぇと思っていると、お~っと、洋酒の香りが。それも、苺にオレンジっぽい香り、あまり出会わない取り合わせ。
でも、これが一段とこのタルトに独自の個性を与えているのですねぇ。

ちなみに、50度のコアントロー(かすかに苦みが感じられるほどにアルコール感が強い)が入っているけれど、これは「アンプチパケ」の及川シェフがやっていたから、とのこと。
先輩格の人がやっていて面白いと思ったたことはすぐに取り入れてしまう、柔軟性と積極性に溢れています。

力強い風味のクリームによって、さらに個性が前面に押し出されることで、強すぎると思ったパートシュクレが“合っている”と感じられるのだから、食べてみないと分からないですね。




●『タルト ルバーブ』 辺8cm 高さ5cmほど。
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こちらは逆にルバーブの強烈な酸味が抑えられています。
“一晩砂糖でマリネしてますからね”と、ルバーブのアクを抜く必要上、それほど鋭い素材として捉えていないらしい。

同じパートシュクレとダマンドを使っているとのことですが、信州産ルバーブを取り囲むアパレイユの水分を吸って、しっとりとした仕上がり。
ルバーブ自体は緑のもので、表面の美しいピンクはフランボワーズのジュレ。
シャンティをたっぷりトッピング。

鋭い酸味は感じさせつつ、品のいい優しい味わいの世界に引き入れています。ルバーブは野生のイメージがあって、多くの場合、野趣溢れるといった方向に向かいがち。
マリネは誰もがやることですが、一歩踏み込んでアクを感じさせないところまで持っていき、優しいアパレイユ、たっぷりのシャンティで包み込んでみせるところに、門前シェフのキャリアが表れていると云えるでしょう。

“生で食べて美味しいフルーツは、そのまま食べるのが一番”と語るシェフ。
ケーキに使うものは、甘みを加え、アルコールを利かせ、煮たり焼いたりと手を加えることで、輝きを増すフルーツを探してきます。

その結果がタルトなどの生地と組み合わされた複合的な旨味。その美味しさの抽き出し方に個性が表れていると云えますね。




●『タルト プラリネ ルージュ(セック)』 辺8cm弱 厚み1.5cmほど。
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こちらの看板商品になった感のある『プラリネ ルージュ』。

ブリオッシュ生地に、赤の色粉で染めたプラリネ入りミルクカラメルを流して焼いたもの。

過日、梅田のデパートの催事では1年分が売れた、というほどの人気だったそうですが、普段は売れ残る日も。
そういうときに出番になるのが、翌日、カットして乾燥焼きしたこのタイプ。

手にもって、パクッ…、わっ美味しいっ! 

ブリオッシュがサクッと軽やかな食感のラスクに変身。元々のしっとりふっくらのイメージを一新しています。食感の刺激が目覚ましく、元々、素晴らしかったものが、さらに、見事なまでにグレードアップ。

プラリネのアーモンドの味と食感、バターの風味。乾燥焼きしているのに、なぜかトロッと感じられる生クリームの優しい甘さが得も言えず、惹き付ける力に満ちているのですねぇ。

だからといって、売れ残って欲しくはないし、うーん、悩ましい。
レジのところに、時折ちょこんと待ってくれていますので、見つけたらぜひ買って下さいね。
80円ですし、とっても可愛いヤツですぞ。ぜひ、ね!




●『ガレット オ ノア ドゥ ペリゴール』 辺8.5cm 高さ2.5cm 50gほど。
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これは名前こそ違いますが、所謂『エンガディナー』ですね。
ドーフィノワとかグルノーブロワというのもあるように、クルミの産地であれば、あちこちに同じようなお菓子があるということのようです。

シュクレ生地のなかに、ローストしたクルミをカラメルで和えたものが射込まれています。

カラメルの深い焦げ色が欲しく、クルミと和える前に、カラメルだけでしっかり焦しているそうです。
色からの発想であって、味は余録として生まれたようですが、苦みがました分、甘みが抑えられていて、食べやすく、しかも深い味わい。
不味くなりようのないお菓子で、名品も数多くありますが、うん、これは印象的。独自の世界を築いています。見事。

修業先の「オーボンヴュータン」で作っていたものからのアレンジですが、包み方はオリジナルのまま。扇形を小さな透明フィルムでムダなく、美しい線が見えるように包むのは至難の業。
習い覚えた方法が、ちょっと自慢のタネにもなるという、無邪気な修業談、ふふっ愉快。シェフも時折包んだりされるそうですよ。今度開くときに、ちょっと気を留めてみてください。





フランス菓子への想い、業界全体のこと、若手たちへのエールなど……、尽きることなくつづく話は、興味深く、つい時間を忘れ長時間になってしまいました。楽しかったぁ、そして頑張ってはるなぁと感心しきり。
謙虚な姿勢でなんでも糧にして、じわじわと大きな存在に育ちつづける門前シェフ。
独立して一国一城の主となるとなかなか“教わる”という行為は難しくなるものです。
が、門前さんは素直に頭を垂れて教えを乞う姿勢を保っているし、いろいろな会合やグループに参加して、多彩な才能との出会い、さまざまな情報交換を積極的に行っている様子。
70歳の引退の時には見上げるような巨人シェフになっているのでしょう。期待しています。



●『タルト フリュイ ルージュ』450円 『タルト ルバーブ』360円  『タルト プラリネ ルージュ』80円  『ガレット オ ノア ドゥ ペリゴール』210円

●「フランス菓子 シャルル フレーデル」
 大阪府泉佐野市日根野4356-1  TEL072-461-2919  定休日/ほぼ水曜

※ブログ「パイ日和・おまけ」には、このお店のケーキ&焼菓子を紹介しています。