ムーラタルト(11) 『りんごの焼きタルト』『タルト モンテリマール』

おなじみ、大阪・天神橋商店街にあるフランス菓子専門店「ムーラタルト」さん。関西でも有数の“自分の味に信念を持った”フランス菓子のお店。
1999年5月のオープン。その頃からの長いお付き合いで、存在が日常化してしまっていて、取り上げ方が弱かったかな、と反省している次第。もう一度、真剣に向き合ってみて、基本に忠実な味の良さに感動すら覚えている、その悦びをお伝えしたいと思います。
新年第1回目を飾るにふさわしい、目出度い&愛でたいタルトです。


●『りんごの焼きタルト』 辺10cm 高さ3cmほど。
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リンゴの皮の飾りがおっと目を惹きますが、作りはごくごく普通のリンゴのタルトです。

が、しかーし。その美味しさは、ぴか一。

よく焼き込まれたパートシュクレの土台に、フランジパーヌ。
その上に、薄切りの紅玉を並べ、生クリームを少し塗り、カソナードを振りかけ、リンゴの皮を全体にかぶせ、蒸し焼きにしています。
皮にもカソナードを掛けているので、皮も美味しく焼きあがるという寸法。

パートの一つひとつが本来あるべきしっかりした味わいを出していること、そして、リンゴにほんの少し手を掛けることで、ぐ~んと深い味わいを作り出しているのです。

蒸し焼きにしたことでジューシーさが保たれ、香ばしさは皮の部分で十分に楽しむことが出来るのです。皮が飾りというだけでなく、食べておいしいところが素晴らしい。
シュクレのザクザク感(端っこのところはカリカリ感と強い甘みもあって)が軽快で、やや濃厚なリンゴの甘酸っぱさ、フランジパーヌの豊かさを重く感じさせないところもいいですね。

焼きっぱなしの日常的なお菓子に、これだけ充実した世界を作り出していることに大きな満足を覚えます。素晴らしい!




●『タルト モンテリマール』 径7cm 高さ5.3cmほど。
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南仏モンテリマールの名産、ヌガー モンテリマールに想を得たお菓子。

吉野シェフはヌガー好きとみえて、代表作に『ヌガーグラッセのタルト』というものもあります。これもモンテリマールに近いものですが、ムースがメイン。

今回のメインは、濃厚なヌガーであえただけの、ナッツとドライフルーツ。
さぁて、それがなにかといいますと…… アーモンド、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、セミドライのイチジク、プラム、カレンツ、オレンジピール。
載せて焼いている途中で、アパレイユ(生クリーム、はちみつ、バター、砂糖)を掛けてカラメリゼ。これが濃厚なヌガーの正体。

土台はメインの強さに負けない、吉野暢人シェフが“シュクレノワール”と呼ぶ、カカオとシナモンの入ったパートシュクレ。
そこにたっぷりのダマンドを盛り込んでいます。
このバランス感覚が、このタルトを特別の存在に仕上げているのです。

ヌガー部分の味わいの濃厚さに対抗して、シュクレは香りの濃厚さをプラス。比較的大人しいダマンドをたっぷり用いることで、全体にくどくなることを防いでいます。
この差し引きの感覚が、もうベテラン(いつまでも若いと思っていましたが年齢を考えると、ねっ吉野さん)の域に達したシェフならではの技と云えるでしょう。

モンテリマールのナッツとドライフルーツの組み合わせは、保存食の美味しい食べ方、といったところです。
が、それにしても、噛む度に、ナッツがカリッコリッ、ザクザクと弾け、甘酸っぱいドライフルーツのぐんにゃり、プチプチ(無花果ね)、ヌガーのねっちりと甘み、嗚呼じつに多彩。
味も香りもその都度変化するさまは、万華鏡のごとし。

華やかで目覚ましく、強烈な味わい。それをさらに深めたシュクレノワールの組み合わせ。お見事の一言ですね。




いやあ、満足満足。ブログ「パイ日和」としては、多くのお店を紹介しないといけませんが、正直のところ毎日でも食べたいほど。気を衒わないストレートな美味しさと、インパクトのある味わいの強さ。それが無理矢理の強さじゃないので、毎日でも、という気にさせるのです。
吉野さん、いつの間にかトップシェフの実力を身につけていたのですね。



●『りんごの焼きタルト』360円  『タルト モンテリマール』360円

●「ムーラタルト」
 大阪市北区天神橋3-1-6  TEL06-6242-7177  定休日/月曜


※ブログ「パイ日和・おまけ」には、このお店の焼菓子を紹介しています。