デリチュース(7)『マロンパイ』

大阪府箕面市、阪急千里線の終点・北千里駅から北東に20分余りの不便な場所(徒歩の場合)にあるのに、大繁盛店に成長した「パスティチュリア デリチュース」さん。
もう長いお付き合い。行く度に、お店の現況を事細かく教えてくれるのがとても嬉しいんですね。おこがましいですが、一緒に歩んでいるような気持ちになってしまうのです。
今回も、ほかに目的があって伺ったのですが、まっ先に新作を紹介してくれました。

それが、この『マロンパイ』。
やったー、パイではないですか。パイ菓子の新作は久々ですね。待ってましたよぉ。
説明してくれる時の長岡さんの、にこにこ顔といったら! もうそれだけで、自信作なのが分かります。
そして、こちらがその場でいただいて、目を輝かせながら、第一印象を簡単に述べると、“そうでしょうとも”とにんまり。毎回、このやりとりがちょいとスリリングで愉しいのです。

はてさて。シンプルなマロンパイ1個で、長ーい記事となってしまいました。だって、いろいろお話したい内容がぎゅっと詰まっているんですよね。


●『マロンパイ』 径5cm 高さ3.6cm 50gほど。
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秋になると多くの店で、マロンパイが登場しています。
こちらでも10月半ばに新発売となったのですが、なんと季節商品ではなく、3月くらいまで長期間販売する商品として売り出されたのです。
こちらのような販売力のあるお店になると、商品の開発は単純にルセットを作るだけでは済みません。
まず、素材の供給を確保しなければなりません。作って人気商品になったけれどすぐに売切れでは、お客に迷惑をかけるだけ。気に入った素材を確保するまでが、大きな開発ストーリーになるのですね。

この『マロンパイ』は、パイ生地の中は、なんと栗だけ。“パイと栗”しか使っていない、シンプル極まりないお菓子。
大粒の栗の甘露煮を、渋皮煮のペーストでくるんでいるのです。

画像普通はケーキクラムやクレームダマンドなどで嵩増しを図るもの。そこを栗だけで押し通すところが、いかにも長岡シェフらしい。ふふふっ。
長岡さんは、お菓子を作る時に原価計算をしない人なのです。お金のことより先に、まず作りたいもののイメージがあって、何が何でもそのイメージ通りに作ってしまう。
商品には上限の価格というものがあるし、「デリチュース」としての価格帯というものもあります。
それで、これだけ大きな栗がゴロンと丸ごと入って、しかも渋皮煮のペーストでくるんでなんとなんと、330円。
ギフト仕様になっているので、包装の経費も含めると原価と粗利の割合が逆転しているほど異常な事態。普通のシェフは作る前にとっくに諦めているでしょうね。

博多の某有名店のマロンパイ(私たちもずっと以前にいただきましたが、大人気なのも頷ける美味しさです)の存在を超えたいと挑んだ『マロンパイ』。
しかし、そのお店とはまったく違うマロンパイに仕上がっています。要するに、真似して超えるのではなく、「デリチュース」らしい新たなマロンパイの開発ということです。
開発に4~5年もの時間がかかったそうです。それは、大粒のLLサイズの栗を探すこと。
まず、求める大きなサイズの毬は少ない。栗は毬の中に大体3個入っているのが普通で、そのうち1個しか大きくなれません。しかも、虫が喰ったり、味が十分でなかったり。満足のいくLLサイズの栗はなかなか手に入らないものなのです。
そしてようやく行き当たったのが、和栗の苗を育てた韓国産の栗。大きくて粒が揃って、量を確保できる。条件にピッタリの品にようやく出会うことができたということ。
この大きさへのこだわりは、食べてみれば分かります。



画像まんまるの姿。カットしてもいいのですが、ここはひとつ、手に取って丸ごとかぶりつくのがお薦めの食べ方。


では、いただきましょう …… わぉ、美味しいっ! おっと栗だ、大きな栗だぁ!

ハムッ、と一口かじったときの食感の良さ。ホックリとした柔らかさと、どっしりとした充実感。
それがただちに満足へとつながるのは、甘露煮の出来の良さがあるから。芯まで、柔らかな甘みが浸透し、食感から来るソフトなイメージを裏切らないベストポイント。栗自体の甘みと勘違いしそうになるほど。大きな栗にここまで均一に甘みを入れるのは至難の業。
しかもこれだけ柔らかいのに、ペチョペチョになっていない! シェフ曰く“焼くように煮ているんですよ”と難解な発言。企業秘密? 
その素晴らしい甘露煮を渋皮煮のペーストで少し味が深くなっているのもいい。
大粒の栗の魅力が全開。まずヴォリューム感が迫ってくること、柔らかな肉質を満足するのに必要な絶対量があるからこその味わい。素材選びに時間を掛けたということが理解されるのです。

そして何より、香り付けに使われているグランマニエ(グランマルニエ)とブランデー。
おっーと、グランマニエときましたか。この軽やかな甘~い香りが栗の優しい甘さを強調していて、素晴らしい働き。強い甘さに合わせるべきラムではなくグランマニエ、というところが、このお菓子をより個性的にしていると感じました。

最後に、パイ生地。薄く延ばした生地でピッチリと巻き込んで焼き上げています。
冷めたまま食べると、しっとりとしていて和菓子風の落ち着いた味わいに。3分ほど焼き戻すと、ふたたびサックリ感が蘇って、焼き目の芳ばしい香りとともに、味わいが立体的な広がりをみせます。
繊細な生地ですが、かすかな塩気もあって強さも持っていて、栗の甘さと好対照を作り出しているのです。


いいなあ、これ。コロンとした可愛い姿、にもかかわらず、豪快に大きな栗が鎮座していて、一度食べると忘れられない人も多いのではないでしょうか。分かりやすいこの美味しさ、栗好きなら知らないと恥しいくらい。
もうすでに、リピーターがおられるそうで、「デリチュース」の顔としてギフトの柱になっていくことでしょう。常温で日持ちもするのも重宝しますしね。




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あっそうそう、パッケージも凝っているんですよ。アイデア満載です。
いつもながら、長岡さん自らのオリジナル。嬉々として取り組んでおられる顔が目に浮かびます。

直方体を対角線で切り分けると三角柱が二つできる。そのなかにそれぞれ5個収納できます。
それを使って5個入り、10個入りに対応。



画像1個売りにはまた別のパッケージもあって、1個からギフト商品とすることが出来ます。
様々な場面に対応できて、ちょっと嬉しいですね。








ほかにも、パイ商品や新たなチーズケーキ(試食させてもらいましたが、これまたいいですね)も開発中。
スタッフが育っているのでしょうか、積極的に商品開発が行われている様子。ますます絶好調の「デリチュース」さんでした。



●『マロンパイ』330円(1個箱入り350円 5個箱入り1500円  10個入り3000円)

●「パスティチュリア デリチュース」
大阪府箕面市小野原西6-14-22  TEL072-729-1222  定休日/火曜、第1&3月曜