ラトリエ ドゥ マッサ(3)『ミルフィーユ マロン』『タルトタタン』

神戸市東灘区、阪急神戸線・岡本駅から南西に10分ほどのところにある「ラトリエ・ドゥ・マッサ」さん。
フランス人にしか習ったことのない、もっとも由緒正しいフランス菓子の担い手。しかも、夢溢れるお菓子も作ってくれる気持ちの優しさを兼ね備えたシェフ、上田真嗣さんのお店。
今回は力強い一面に出会いました。いやいや、これが本領なのでしょう。


●『ミルフィーユ マロン』 12.2×6.5cm 高さ4.4cmほど。
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いつもながらの1枚、2枚と数えられる葉っぱの形のミルフィーユ。
通常はカスタードとイチゴだけど、栗の季節にはマロンクリームと渋皮煮を使ったものに変わっていました。

これが、大人のパイなのですねぇ。
いつものに比べて、パイの焼き込みを強くしているのではないでしょうか。

二つの美点があります。
フランス産のマロンペーストを使ったやや濃厚なマロンクリームに、カシスソースを合わせたフランス流儀の組み合せがピタリと決まっていること。
そして、国産の栗を使った渋皮煮をふんだんに盛り込んだ豊かな甘さ。
それらがこぞって、パイ生地のほろ苦さを伴った芳ばしさを大歓迎していること。

マロン・カシスはフランスでは定番の組み合せのようですが、日本人にとっては少し違和感が。
そのせいか、いままで食べてきて、当たり前の組み合せの自然な美味しさを感じたことがあまりなかったのです。冒険的な尖った味を狙っているのだから、とエクスキューズ付きで認めていたような。

ところが、なのです。
この『ミルフィーユ マロン』はカシスソースが使われていて、自然な美味しさを作り出しているのです。それは、日本人パティシエがこだわる栗の甘さより、少し甘さを強くすることで違和感を打ち消しているのではないでしょうか。
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酸味のあるカシスソースを加えて成立させるために、栗で全体の甘さがアップしたので、よりほろ苦さを強調するために、パイ生地の焼き込みを少し深くしています。

栗の美味しさを基調に、甘くって、果実の酸っぱさもあって、ほろ苦さもあって …… ふうぅ、甘・酸・苦の微妙なバランス。
シャンティも間の手としてうまく機能していますね。じつに素晴らしい。

あぁ、なんて美しい美味しさなのでしょう。その深い味わいが、大人の舌をも唸らせるのです。お見事!


そうそう、パイ(たっぷりのカラメリゼ)が完璧に焼けていて、夕方の購入にもかかわらず、サックサクだったことも、さらに印象を高めていたことを、一言付け加えておきましょう。




●『タルトタタン(再)』 径9cm 高さ4.5cm 150gほど。
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プレオープン時に、一度ご紹介していますので、簡単に。

シェフに確認したのではありませんが、ショーカードに“キャラメリゼしたりんご”“フランスの古典菓子をアレンジ”と書かれていました。
それに、リンゴの浅い色、ジューシーさから推察すると、リンゴを鍋に押し詰めてじっくり焼き込むのではなく、フライパンでカラメルとリンゴを和えながら火を通す、時間短縮バージョンを使っているのではないかと思われるのです。形も、林檎のようにまんまるですしね。

この『タルトタタン』は長時間かけて水分を飛ばしながら焼いたのではない、たっぷりなジューシーさが保たれているのです。
みずみずしいリンゴ。
だけど、タタンらしく、ほろ苦くて甘い、リンゴなのです。

その魅力をベースに、カルヴァドス風味のカスタードと合わせているのですね。深い味わいであると同時に、シャープで切れ味がいい。
いつもながら、パイ生地がサクサクッに保たれているのも、より一層切れ味を感じさせてくれているのでしょう。



オープン1年半を経過して、徐々に手応えを感じてきたのではないでしょうか。
小学校の前というロケーションから、子どもが喜ぶお菓子も意識して開発していましたが、いよいよ大人向けが充実してきているようですね。ショーケースのなかは、マッサさんの想い通り、ますます楽しさが漲っています。



●『ミルフィーユ マロン』500円  『タルトタタン』480円

●「ラトリエ ドゥ マッサ」
 神戸市東灘区岡本4-4-7  TEL078-413-5567  定休日/火曜