フランス菓子工房 ムーラタルト (9)  『πのパイ』『ショソン・オ・ポム』『ピティヴィエ』

大阪市北区、地下鉄・南森町駅から2分、日本一長いことで有名な天神橋商店街にある「フランス菓子工房 ムーラタルト」さん。
「3.14=π(パイ)の日」キャンペーンの参加1号店。オープン1年ほどでのご参加だったので、嬉しいことにお店の歴史とキャンペーンの歴史がほぼ重なっているのです。
長年のお付き合いから断言できることは、吉野暢人シェフが焼くパイほど、安心できるパイはないということ。どんなフィリングを入れてもつねに完全に焼き切れているし、焼きすぎで苦くて辟易ということもないのです。半分にカットして中を確かめるまでヒヤヒヤするスリルはなく、心配なんてさらさらなく、じつにピンポイントの焼き加減。まさに、 bien cuit !

本日は、そんな篤い信頼を寄せている吉野さんのパイの登場です。
当ブログ開始以前、キャンペーンの第1回からの看板商品である『πのパイ』の初紹介と、定番の『ピティヴィエ』『ショソン オ ポム』を再紹介することにしましょう。


●『πのパイ』(2個入り) 7.5×7cm 厚み2.4cmほど。
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折りはごくごく教科書的な方法を遵守しているとのこと。薄力対強力の比も、水やバターの量も、折り回数も。

だけどなのか、だからこそなのか ……この浮きをよーくご覧あれ。

自由にふわーっと浮かせているので、とても軽やかな仕上がり。
サクッ、サワサワ~! 
ともかく軽快。英語でパフ puff と呼んでいるのも納得です。

表面をしっかりカラメリゼして、最後にアールグレイの粉末を斜めに振り掛けるだけのシンプルなもの。甘さで満足させておいて、爽やかな香りでスッキリ感も。
品のいいお茶請けですね。長年食べていて食べ飽きないのが名品の証でしょう。

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じつはこのお菓子、第1回キャンペーンの際、朝日新聞の名物コラム“青鉛筆”の取材が入り、担当記者の注文から生まれたという経緯があります。

πの日だからπの字型。

単純ですけど、お客さまに喜ばれていて、リピーターが多いのです。毎年決まって買いに来るファンもいるほど。
毎年、この期間中にだけ作り続けている『πのパイ』。キャンペーンが生んだヒット商品。

お客さんはもちろん、私たちにとってもシェフにとっても愛着のあるパイなのです。




●『ショソン オ ポム』 6×9cm 高さ4.7cm 65gほど。
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しっかり焼き込まれた生地の美しさ。

冒頭で言ったことが、この断面で証明されています。
最後の1枚まで完全に焼けています。水分の多いフィリングでこれだけ焼けているのは稀有のこと。
味に影響がないからと、もう少し手前で止めて、生地が透明な団子状態になっているのが多いですからね。

生地がしっかりした味わいなので、フィリングのリンゴも比較的強い味わい。

紅玉を使い、酸味がやや勝った濃厚な甘酸っぱさ。
生地のほろ苦さとコントラストを作り出しながら、味の濃度が統一されているので違和感がなく、優しいヴァニラの香りとともに、うっとりと食べてしまいます。

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強い味わいなのにうっとり感があるのは、生地がふわっ、サクッと軽いからでしょうね。
いやぁ、何度食べても感心するなぁ。


そうそう、紅玉はもうすぐおしまい。その後を継ぐのは、苺。
春らしい『ショソン・オ・フレーズ』が登場する予定です。あぁん、これも食べたいっ!




●『ピティヴィエ』 径9.5c 高さ3.3cm 80gほど。
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こんがり、きれいな焼き色。ふうぅ。

こちらもしっかりした焼き。ショソンはフィリングの水分の蒸発で生地が浮くのに任せているのにたいし、こちらは少し目がやや詰まり気味。ザックリした食感を生み出しています。
地方の素朴なお菓子のイメージに沿った、ちょっとラフな仕上がり。

クレームダマンドのアーモンドの挽き方が粗く、ザラッと強い食感。それが生地とよく合っています。
バレンシア産のアーモンドを使っているので香りも十分だし、粒々感がダマンドらしさを目一杯発揮しているのです。存在感あり。しかも、ふくよか。

4等分にきれいにカットしていただきましょう。
きれいな層。もうそれだけで自然と笑顔になって一口 …… ザクサクッ! 弾む香りと軽快な音。

表面のカラメリゼの香りと甘さ、バターの香り、生地を焼き込んだ香り、そしてダマンドの優しさ、どれもが手と手を取り合って親しみを込めて語りかけてきてくれます。
この傑作から窺えるのは、しっかりした味わいなのに、優しさが基調となっていることが、このお菓子を普遍的な存在とし、フランス菓子のもっともオーソドックスな位置を占めさせているということだと思います。どこか懐しさをともなった味わいも、やはりいいですね。お見事!

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“んん? これって、380円なの? 嘘っそだぁ~!”
と、二人して歓声を上げたことを最後に明記しておきましょう。むふふふっ。







もっとも信頼を寄せているお店ですが、こうして改めて食べると、腕の良さにつくづく感心します。
あまりに身近なシェフなので、ついつい軽口を叩いていますが、見上げるべき存在なんだ、ということを痛感しました。ふだんのご無礼、ご寛恕のほどを。



●『πのパイ(2個セット)』320円  『ショソン オ ポム』250円(『ショソン オ フレーズ』280円) 『ピティヴィエ』380円

●「フランス菓子工房 ムーラタルト」
 大阪市北区天神橋3-1-6  TEL06-6242-7177  定休日/月曜