ラトリエ・ドゥ・マッサ (2) 『タルトアブリコ』『サントノーレ フレーズ』

2011年3月18日にグランドオープンしたパティスリー「ラトリエ ドゥ マッサ」(L'ATELIER DE MASSA)さん。神戸・岡本、阪急神戸腺岡本駅から山手幹線まで下りて西へ7、8分のところ。
歴々たるキャリアの持ち主の上田真嗣シェフ。その核になる部分は最初の修業先、東京の名店「ルコント」(1968年~2010年/日本ではじめてのフランス人シェフによるフランス菓子専門店)さんにあるようです。大学卒業後すぐ、5年半ほどみっちりフランス菓子の基礎を学んでいます。
その後 渡仏。MOF取得者、ルレ・デセールのメンバー、3ツ星レストラン、今を時めく大人気店、といずれ劣らぬ大名店ばかり。それらの貴重な経験も、結局「ルコント」さんの偉大さを再確認させるに過ぎなかったと語っています。
品揃えは真嗣さんのオリジナルに加えて、「ルコント」さんをメインに修業先のレシピも取り入れている多彩さが魅力です。

前回のブログではプレオープンにお招きされ“今晩中にアップしますね”とお約束して帰ったので、お店の位置づけなど簡単にご紹介しただけで、物足りなかったのです。もっとあれこれ書きたかったけれど、タイムアップ。そこで本日は、先日のこぼれ話しやシェフの人柄を彷佛とさせる面白エピソードを交えて、長々と悠々と書くことにしましょう。
ショーケースを見ていると、シェフの人柄そのままに、優しさやユーモアがシャイのベールの向こうから伝わってきますから、ね。


●『タルトアブリコ』 径8cm 高さ2cmほど。
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明るく淡い色合いに焼き上げられたパートシュクレ。
アプリコットのオレンジ色がなんとも映えますね。

見ため同様の、優しい味わい。
ホロホロとはかなく崩れるシュクレ、ほんのりとしたダマンド。
酸味控えめのアプリコット、みずみずしいですね。

この3つの組合わせが絶妙で、なんとも品良くバランスを取り合っています。
どれ一つ突出することなく、ホロホロのはかなさのレベルでそっと寄り添うイメージ。
淡い甘さに、軽やかな酸味。朝日のなかの微睡みのようなほのぼのとした味わい。

そこに小さなアクセントを与えているのが、大粒に刻んだアーモンドダイス。
カリッコリッ! とした食感、芳ばしい香り。

素晴らしい組合わせに満足せず、単調さを打破する仕掛けをしてくるところが心憎いな。




●『サントノーレ フレーズ』 径8cm 高さ8.5cmほど。
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最近は、フランス通を自認するシェフがこぞって濃厚な味わいの、バリッと焼き上げたシュー生地のサントノーレを麗々しく飾っていますね。

真嗣さんはフランスの名店でキャリアを積んだ人ですが、比較的ふっくらしたシュー生地を選んでいるし、カラメルやカフェのような濃厚素材ではなく“いちご”、それも苺ミルク味! 
甘々の夢見る乙女のような愛らしさ。

ちなみに、『サントノーレ フレーズ』は最後の修業先、部門長を務めた「ラデュレ」でも出していましたよ、とのことです。
そうか、「ラデュレ」ってフェミニン路線、得意ですよね。

これがただ可愛いだけに終らないのは、底生地にパリッと力強いパイ生地を用いていること。
苺ミルク味のフォンダンにすっかり甘えた気分になっていると、パリパリと痛快な食感に呼び覚まされるようところがあります。小気味いいですね。

一般にシュー菓子だと思われているお菓子で、シューよりもパイを目立たせるあたり、さすが「ルコント」さんでパイルームを経験した強者。ふふっ、嬉しくなりますね。




ショーケースを眺めると、ドーム型、バベル型、ねずみの姿、長方形型、円柱、目玉のついたもの……と、賑やか。じつに様々なケーキの姿なのに気づきます。『ミルフィーユ』でさえ、リーフパイを使った一風変わったもの。退屈なショーケースにはしたくないそうです。
そういえば、マッサさん、熊ちゃんの型を見つけたそうで、嬉しそう。じきに、熊ちゃん型のお菓子がお目見えするでしょう。『ショコラオランジュ』というケーキにも熊ちゃんのチョコプレートを飾り、“ねっ、可愛いでしょ”ともおっしゃっていました。ふふっ。心の中に“可愛いランド”を持っているような人でもあるのです。
と書くと、夢見る夢男さんのようですが、いやいやじつは彼、体育会系だったことが判明。
「ルコント」さんは仕事にとても厳しい体育会系の風土だったそうで、その代わりに、オフを楽しむことに長けていたのだとか(野球チームあり、バッティングセンターや野球観戦に行ったり、新人のときには花見の場所取りをしたりなどなどエピソード満載)。
という話から、中学からラグビーをやっていた話しに飛び火し、「ルコント」時代にも誘われて社外部員として企業チームの一員として社会人リーグの試合にも出場した経験も。体力も気力も備わっているからこそ、厳しい修業を乗り切ることができたのですね。
そういう体力派タイプは余裕があって(体力がないと自分のことだけで精一杯になりがち)、自分以外に他人への心遣いが出来る人も多いですね。
マッサさんも、まず、お客さまに喜んでもらいたい気持ちが強いようです。もう一度ショーケースに戻ってみると、なるほどと納得するでしょう。

ラグビーの精神から生まれる、ラブリーな世界。
その不思議な組合わせが無理なく一つに溶け合うのが“マッサ”の世界だと云えるでしょう。



●『タルトアブリコ』350円  『サントノーレ・フレーズ』420円

●「ラトリエ ドゥ マッサ」(L'ATELIER DE MASSA)
 神戸市東灘区岡本4-4-7  TEL078-413-5567  定休日/火曜

※ブログ「パイ日和・おまけ」(http://pie-omake.at.webry.info/201104/article_10.html)にも、このお店のケーキを紹介しています。よかったら、どうぞ。