手作り (7) 『ミルフィーユショコラノワ』

我が家で恒例の、3月14日のパイ作り。
日頃、名手たちの作るパイを食べるのに忙しく、なかなか手作りする機会がない。年1回では上達する道理もないが、この1回だけは死守しようと思っている。そうでもしないと、どんどん生意気になって、傲慢な意見を吐くようになるだろう。一罰百戒の意味を込めた挑戦なのだ。
と言った舌も乾かないうちに生意気な気分が、むくむく。
今回のキャンペーンで「アトリエ ミトン」の生駒シェフがパイの可能性の豊かさを見せつけるギフトセットを作ってくれているのに触発されて、小生もミルフィーユの枠を広げる試みをやってみた。
カスタードにチョコレートを加えたことと、生地にクルミのダイスを埋め込んでみた。
さて、成果や如何に。(※書き手はクボタ)


●『ミルフィーユショコラノワ』(いつも書き手イワモトによる当然の検閲が執行され、写真掲載不可となりました。嗚呼!) 3×8cm 高さ5cmほど。

生地はオーソドックスに薄力:強力=1:1、塩少々、生地にもバターを少々。
折り込むバターは生地の半量。バターは普通の無塩。3つ折6回。
最後に生地を伸したときに、よく炒ったクルミのダイスを埋め込む。
クルミが焦げないように普通より少し低めの温度にしたことと、クルミの周りが浮き過ぎないように、しっかり重石をしたことが工夫の点。

ミルフィーユのクリームはカスタードが基本だが、そのカスタードにしても今回のショコラもあれば抹茶もあるし、ウィスキーやミントなどの酒、ハーブ、スパイスなどの風味を付けてもいい。可能性はいっぱい。
ほかにカスタードの代用としてプラリネクリーム、マロンのクリーム、ガナッシュ、チーズ、生キャラメル、パート ド フリュイなどもある。極端なことを言えば、中国風のフルーツの餡、日本の餅やご飯(ライスプディング的なもの)でも、何でも試す価値があると思う。

フランスでは、秋に全国3000店の菓子屋、パン屋がこぞってミルフィーユを作るミルフィーユ祭をやり始めたらしい。きっといろんな可能性を試しているに違いない。日本でも負けずにチャレンジしてもらいたい。

という意気込みで作ってはみたが…。
13日の日曜から急に温かくなったが、折っていた当日(12~14日あたりはキャンペーン中なので、店を見て廻ったり、新作の取材やら協賛コンサートやら、忙しくて折っていられない)は3月だというのに、真冬並の寒さ。我が家の夜中のキッチンは冷蔵庫なみ。
暖房を入れてバターが溶けるのが怖く、寒いままでむりやり生地を伸したら、バターが千切れる千切れる。バターのツブツブが入っている有り様は、下手なブリゼ。
焼き上がりは、まあ、と言葉を濁しつつ、お粗末の極み。温度が低すぎて、生地が焼ける前にバターが溶け出し(生地にいっぱい穴が開いていた模様)、生の生地を揚げた感じになってしまった。
あえて言えば、クルミが焦げなかったのが救いかな。
かくして、成功のためのノウハウは掴めず、なぜ失敗するかの知識ばかりが蓄積される。とほほ。

さて、その味わいについて。
パイ、チョコカスタード、クルミの組合わせの相性は、うん、これは自慢してもいいのかな、と自惚れている。パイ生地のアロマは、バターの焼けたブールノワゼット香。ということは元々ナッツと相性がいいことは保証されていたと言えるだろう。

いつもの書き手は“素人はつけあがるから困ったものだ”と呆れている。チャレンジ精神の健闘を讃えて、ありがとうの感謝の言葉も添えてだったけれど、ね。
とはいえ、あまりな出来だったからだろうか、いつになく優しい、のが怖い。

お間抜けなやり取りも、味の内。
皆さんも、ぜひ手作りで挑んでみてください。シェフの方々はぜひ新たなミルフィーユの可能性にチャレンジのほどを。大言壮語、竜頭蛇尾の巻でした。


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3月14日。このキャンペーンも、今年で10周年を迎えることができました。
パイを買っていただいたお客さまをはじめ、お店のシェフ、スタッフの皆様、そして記事を掲載してくれたメディアの方々、POPのデザイナーさんなど……皆様のおかげで今年も乗り切ることができました。
本当にありがとうございます。感謝に堪えません。

皆様の楽しいひとときに、パイがお役にたてたならいいなぁ、嬉しいなぁと思いながら活動をしています。
明日からも、また、佳きパイ日和でありますように。



●『ミルフィーユショコラノワ』材料代200円?

●「日本パイ協会」
 在. 兵庫県西宮市