コムトゥジュール (6)  『焼菓子のパイ』(パルミジャーノ/エスカルゴ/ショコラ ブーシェ)

京都、地下鉄北大路駅から北に5分ほど、北山通にある「コムトゥジュール」さん。
オーナーパティシエの蜂谷さんは、パイ好きの心を捉えて放さないパイの名手です。
今回も、焼菓子にパイが増えてますよ、とニッコリ。ええっ、それは捨てて置けない。
だって、こちらはその時その時作るものが変わっているから、新しく目に付いたものはその場で購入が必須条件。
雑誌での紹介商品も取材時にあるものを基本としていて、雑誌発行時用に無理に時期より早いフルーツを使ったりしません。だから取材のときに撮影された商品は、雑誌を見て買いに行ってもすでに終ってしまっているケースがほとんど。
蜂谷さん、絶対に無理をしない、ウソを付かないということを貫いているからです。なんとも信頼に足るお店ではないですか。
ということで、ラッキーな巡り逢いの、新しいパイを。


●『パルミジャーノ』 底辺6cm 斜辺4.2×4.2cmほど。
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ぎざぎざ縁取りの二等辺三角形、面白い形。

これはブリゼとして折られた生地ですが、ホロホロとした食感を出したいということで、小麦粉は薄力のみを使用。
表面にパルミジャーノ・レッジャーノの粉末を振り掛けて焼かれています。

う~ん、なんとも風味のいいことよ!
大袈裟に詠嘆調を使いたくなるほどの香りの高さ。

もちろんパイにもしっかり火は通っているのですが、やや白っぽく仕上げて、パイの香りよりチーズの香りを強調しています。
その代わり、パイはホロホロと軽く崩れる独得の食感で、存在感を遺憾なく発揮しています。
これほどやわらかな食感もパイにはあったんですね。

塩あじのスナック感覚で、23枚も入っていたのに、つい癖になってあっという間に完食。
こういう軽くて酒の友になるパイが欲しかったんですよ。ありがとう、蜂谷シェフ。





●『エスカルゴ』 径4~5cm 厚み0.6cmほど。
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生地を渦巻き状にして焼き、メイプルシロップでカラメリゼしたもの。

中央が盛り上がってエスカルゴ状になっているものや、平らのままのものやらが混ざっています。
軽やかな食感をメインに考えて、なるべく生地にストレスを与えないようにされているのでしょう。
形は不揃いですが、食感は見事に軽くサクサクで統一されています。

メイプルの濃厚な香りとやんわりと静かに迫ってくる奥深い甘さも興を添えています。
ミネラルたっぷりの糖類はその雑味が味の奥行きとなって、じつに味わい深いもの。

パンケーキなどで馴染んでいるメイプルですが、毎度、美味しいなぁと、しばし浸ってしまいます。これもよく出来ていますね。





●『ショコラ ブーシェ』 径4.2cm 高さ1.8cmほど。
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可愛いブーシェに、ダークチョコレートを流したものとミルクチョコレートを流したもの。

チョコレートはとくにブランドにこだわりはなく、美味しければ国産のものでもいいとのこと。いまはカレボーを使用。
たしかに、ヴァローナだエルレイだとかまびすしくブランド名を告げたり、エクアドル産、マダガスカル産だと産地に固執してしまうと、毎日食べつづけ、味わい分けていないと区別のつかない領域に突入しているのかも。
日常にお菓子を愉しむ、というにしては、ちょっとナーバス、いやいや高級すぎる、という一面も。
蜂谷シェフのノンシャランな態度、新鮮に感じました。

パイもいつも折っているミルフィーユの生地では浮き過ぎるということで、これ用に別に折っているそうです。よく浮いているように見えますが、それでもやはり少し目が詰まった感じで、食べると生地の一層一層がこすれあって、ミシミシと音を立てる感じが独特。
ダークともミルクとも相性がよく、パイのかすかな塩あじ、焼き込んだ香りが一体となって、ブーシェ(一口の楽しみ)としてはなかなか芸の細かい仕上がりです。



3種3様、パイ生地は異なる個性のもの、やはりやってくれますね。
蜂谷シェフは“超一流のお店は疲れます。それに最初から美味しいと言わないといけない雰囲気、プレッシャーを感じますよね”と、我が道を往く派のよう。もっと気の張らない日常のお菓子でただ“あ、美味しい”と気楽に口を付いて出るようなお菓子を作りたいのだそうです。
曰く“超二流”。なるほど、それがcomme toujours(=いつものように)ということの真意なのですね。納得。洗練された日常の楽しみ、大歓迎です。



●『パルミジャーノ』480円(23枚入り)  『エスカルゴ』480円(16個入り)  『ショコラ ブーシェ』200円(2個セット)

●「コムトゥジュール」
 京都市北区小山元町50-1  TEL075-495-5188  定休日/水曜