ピゴの店・本店 (4) 『ミルフィーユ』『ミルフィーユ・デ・ボワ』『シブスト』

フランスの食文化を幅広く伝えつづけてくれている「ビゴの店」さん。
パンというイメージで捉えている方もいらっしゃるかもしれません。でも、フランスではパン屋さんとケーキ屋さんの線引きは明確では有りません。どちらも出来て当たり前、という感覚でしょう。
「ビゴの店」さんでは伝統的なフランス菓子に出会えるのが嬉しいところ。昨今の日本の食状況を見ていると、オリジナルが一体何だったか分からなくなるほどですからね。貴重で、ありがたい存在です。


画像●『ミルフィーユ』 7cm×3.5cm 高さ3.5cmほど。
かつて、こちらではたしか『ミルフォイユ』と商品名を表記していたと記憶します。
専務のビゴ・ジャンポール太郎さんに確認すると「本当はね。購入する時『ミルフィーユ』じゃ千人のお嬢さん下さい、になっちゃうからね~あははっ」と定番冗句を交えながら、millfeuilleの正しい発音を何度も教えてくれました。
でも、ミルフィーユが日本での通称、一般名詞になってしまったということなのでしょう。
正統派の「ビゴの店」の『ミルフォイユ』が『ミルフィーユ』に変わって、商品も横に倒した形になりました。でも、世間に迎合した訳ではありません。
最近は生クリームをたっぷり加えた、軽いトロトロとしたカスタードが一般的になっています。が、昔ながらの小麦粉かコーンスターチの量が多い、ぽってりとした食感のカスタード(ビゴさんでも生クリームは少しは入っています)にあらためて魅力を感じました。しかも、たっぷりのコアントローのおかげで、古くさいイメージも吹き飛ばし、強力な存在感で訴えかけてくるのです。目が覚めるような強烈な個性が誕生しています。
そして、それに負けない存在感を持つパイ生地は、固く押し付けて焼き上げられていて歯応えのある食感。よく焼き込んだパイ生地の香りもぷんぷん。それを4枚も。

クリームとパイ、とてもシンプルなミルフィーユです。ザックとハードなパイ生地、コアントローがおもいっきり利いて、重くどっしりしたカスタード。この両者一歩も譲らず、力強い凌ぎ合いは一口ごとに、充実した堂々とした味わいを生み出すのです。
この強力な組み合せに対抗できるミルフィーユに出会ったことがありません。



画像●『ミルフィーユ・デ・ボワ』 10cm弱×3.5cm 高さ(苺抜きで)4.3cmほど。
こちらはフレーズ・デ・ボワ(フランス産森イチゴ)を使っているからボワの名が付けられています。
カスタードにバターを加えたクレーム・ムースリーヌに森イチゴを細かくしたものがチラホラ。こちらは、コアントローは控え目になっています。
森イチゴはかすかなのですが、ほのかな甘酸っぱさが活きたミルフィーユに変身。『ミルフィーユ』の方がカスタードのポッテリとした重さに魅力があったのにくらべて、『ボワ』はムースーリーヌ(モスリンのようになめらかなという意味)の口溶けのよさ、軽やかさが魅力です。
森イチゴの爽やかさが嬉しい、春にふさわしいお菓子と言えるでしょう。



画像●『シブスト』 11cm×3cm弱 高さ4.5cmほど。
パイ生地の台にゴロゴロンと角切りのリンゴがたっぷり。砂糖は控え目にしてリンゴの酸味を引き出しています。そのうえに軽やかなシブーストクリーム(カスタード+メレンゲ)、表面はしっかりカラメリゼ。
リンゴの酸味+クリームのほのかな甘味+カラメルをしっかり焦した苦みが、いいバランスで口の中で共鳴しあっています。
さらに、カラメルのチャリチャリとした食感、リンゴのサクシャキ感、パイのサクサク。
これらの複雑なテクスチャーをふわふわのクリームが優しくつなぎとめていて、とてもよくまとまっています。


この3つのケーキを食べるだけでも、伝統本来の姿を知ることの強み、というものがひしひしと伝わってきます。なにかにつけて、ふと「ビゴさんのところは、どうだったっけ」と思う今日この頃です。



●『ミルフィーユ』262円  『ミルフィーユ・ド・ボワ』399円  『シブスト』315円

●「ビゴの店・本店」
 芦屋市業平町6-16  TEL0797-22-5137  定休日/月曜

※ブログ「パイ日和・おまけ」(http://pie-omake.at.webry.info/)、はじめました。よかったら、どうぞ。