ラ・ベカス (1) 『茄子のブーシェ』

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ずっとお菓子のパイを紹介してきたパイ日和ですが、今回からついに料理のパイもご紹介するようになります。料理担当は家人です。今回はブーシェの競演、2軒同時のご紹介です。ではバトンタッチ、どうぞ。(ちなみに、家人はシェフ本人に直接取材するという飛び道具を使っているので内容がかなり詳しく、ちょっと口惜しい。スペースを提供したのに、なんだかなぁ)

ラ・ベカスといえば大阪のレストランの最高峰。90年に四ツ橋にオープンするや絶対的な信頼を勝ち得て、今日にいたっています。渋谷シェフもいよいよ充実期を迎え、昨年4月に淀屋橋に移転。スペース、インテリアを一新し、倍ほどのスペースになったのに席数は元のままというのも嬉しい。

さて、ラ・ベカスの料理の魅力は何と言っても、洗練された皿。洗い、練えると書くように清潔感あふれる料理であり、強いインパクトを与える味付けにあります。狙った味がシンプルに表現されている。その陰には余計な味を取り除き、濁りを許さない厳しさがある。素材の組み合せ、対比など計算の図式が明確であって、しかも口に入れたインパクトが予想をはるかに上回る。奇をてらわずストレートでありながら他と水をあけてしまう力量の差。頼もしいとしか言い様がないでしょう。

今回ご紹介する『茄子のブーシェ』は3月14日に合わせた「3.14=π(パイ)の日」のキャンペーンに協賛したメニュー。すべてのお客にアミューズで供されます。シェフが長年大切にしているメニューでもあって、おっと驚く口開けの料理です。
付き出しとして軽視されがちなアミューズ、小さな一皿だけど、じつはその店、シェフの力量を期待させる大切な一皿。それを実感させてくれる素晴らしい料理に仕上がっています。
さっくりなかまで均一に香ばしく焼けたパイに、茄子とトマトのラタトゥイユ的なものとサバを混ぜ合せたパテ状のものを乗せて焼き上げています。茄子のとろとろ感とパイのサクサク感の対比、パイのこうばしい香りとサバなどの香りの対比。小さな料理の中になんとも楽しい遊びが詰め込まれている印象。ほんのひと口ふた口なのに大きな皿に匹敵する強さを備えていないと、コース本体へ導く力になりえない。それを二つの対比という贅沢なアイデアで驚きを創り出しています。

シェフはつねにパイ料理を置いているわけではないけれど、以前に食べた「キジのパイ包み焼」を食べた時も絶品だったのでじつは期待していた。数少ない機会を逃す手はないと思えるほどのわくわくの体験。今回行けない人、そして少し懐に余裕のある人はメインのパイ料理を予約してみる手もある。メニューは予約時に相談に乗ってもらえるだろう。グランメゾンの便利なところは、そういうところで融通がきくこと。シェフの料理をおとなしくいただいて帰るだけでなく、こちらから注文を出してそれをアレンジしてもらうことでより楽しい、満足のいくレストラン体験となるだろう。
あんまり美味しかったので、小さなひと皿の話が大きな話に発展してしまった。大口たたきと、いつもの書き手からクレームが入らないうちに退散しよう。



●『茄子のブーシェ』(アミューズの一品)

●「ラ・ベカス」
  大阪市中央区高麗橋4--6-2銀泉横堀ビル1F 
  TEL06-4707-0070 定休日/日曜