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zoom RSS 初登場! コレット(1)『青りんごグラニースミスのタルト』『本日のキッシュ』

<<   作成日時 : 2017/04/29 22:28   >>

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京都、地下鉄北山駅と松ヶ崎駅の間の大通り、下鴨本通を5分ほど下がったところにあるのが「コレット」さん。
このお店の場所、お菓子好きならすぐ思い出すでしょう、ドイツ菓子の「グリュックスシュヴァイン」さんがあったところ。大塚さんがドイツ暮らしを始めたため、店が空き、三井素子さん(1974年京都生まれ)が見込まれてその後を継いだのでした。
「コレット」さん、じつはもう7年くらい前(その当時は北野白梅町)から名前は聞いていたのに、怠けに怠けて、なんとオープン9年目にして初訪問。何たること、惨たるちや。
でも、会って早々に気が合ってしまいました。素敵な女性です。
若いときから一本道のお菓子人生ではなく、多才過ぎるが故の悩み多き紆余曲折の末に辿り着いたパティシエール暮らし。ようやく自適の道を見つけたようです。
詳しい話は後段に置いておいて、そろそろお菓子の話へ。


●『青りんごグラニースミスのタルト』  辺10cm 高さ3.8cm 100gほど。
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こちらのスペシャリテ。

アメリカでよく使われるクッキングアップル。
最近は長野県小布施の栽培農家さんに、年間100kgほどの契約をし、保管してもらっているそうです。
11月の収穫シーズンから必要量を順次送ってもらうのだとか。売れ行き次第ですが、おおむね5月一杯は保つだろうとのこと。

一般にクッキングアップルは火を通すとグズグズに形も食感も無くなってしまうのですが、三井さん、なんと1mm厚ほどの極薄にスライスすることで火を通しつつ食感を残すことに成功。何事も常識は破られるためにあるようですね。

塩味控えめのパートブリゼにクレームダマンドを詰め、グラニースミスのスライスをたっぷり敷き詰め、バターと砂糖を散らし、焼き上げます。200℃の高温で65分。
最後によく煮詰めたアプリコットジャムを塗って仕上げ。


ほーほっほほ〜、わぁ美味しいなぁ。
確かにグラニースミスは形もきれいに残っているし、軽いサクッとした食感も。芳醇にして落ち着きのある味わい。

グラニースミスの強い酸味にグラニュー糖を合わせれば、やや角のある鋭い甘酸っぱさになるところです。
そのままでも美味しいタルトになるはずですが、三井さんはそうはしません。
彼女の場合、美味しい素材を探し求めると有機のものに行き着くようです。ブラジル産の有機のキビ糖がミネラルたっぷりで、角の取れた落ち着いた味わいを創り出しているのです。

ブリゼの塩気を控えているのもやはり全体の円みに繋がっています。ダマンドのふくよかさがさらに奥行きを深めているのです。アプリコットのジャムもちゃんと利いていて、エッジが感じられますね。
すべてのパーツ、すべての素材が手を取り合って、三井さんが表現したい一点に集中しているのが凄い。

最近の若いシェフたちのお菓子は表現意欲が先走った“これ見よ菓子”(まァそれはそれで若さの特権のようなものですから好きですよ)。
彼女のお菓子はそうではなく、あくまで日常に寄り添う、“あれぞ菓子”、と願うような世界を現出しているのです。お見事!



●『本日のキッシュ』 (土日限定)  辺8.5cm 高さ2.8cm 80gほど。
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同じブリゼ生地を空焼きし、菜の花、グリュイエールチーズ、ベーコンを並べ、アパレイユ(卵、生クリーム、牛乳、ナツメグ、塩、胡椒)を流して焼き上げています。

メインの菜の花、京の無農薬栽培のものだそうです。
そのせいかどうか、心地よいほろ苦さがいかにも春らしい。

キッシュというと、チーズにベーコンに卵、牛乳と旨味成分大集合のようなものですが、春の苦みが対抗軸をしっかり作り出していて、味わいが立体的。ブリゼの食感や、ナツメグの香りなどもグンと奥行きを広げています。

なにより嬉しかったのは、塩気が控えられていること。フランス菓子店などが作っているのは往々にして、塩辛すぎるのです。ワインと合わせるからこれくらいがいいんですとか、現地ではこうだからね、と言い訳の入る美味しさ。

三井さんのキッシュはストレートに美味しい。
控えめながら、味わい、食感、香りの掛け算で十分に満足感も得られます。こういうところに食のキャリアが表れるものですね。お見事です。



そう、彼女の食のキャリアは長いのです。関西学院の社会学部卒ですが、学生時代は休みごとにバイトで旅費を稼ぎ、女の子二人でバックパッカーを敢行。ウィーン、フランス、ハンガリー、ベトナム、モロッコなどなど……。レシピ本を読むのが趣味だったとか。
卒業すると「料理王国」の編集部を訪ねるほど。編集長に諭されたのは編集をやりたいのか、料理をやりたいのか、本当にやりたいことを究めなさい、ということだった。
一念発起して、フードコーディネーターの勉強。その後、その当時全盛を極めていた「クィーンアリス」(若かりし頃私たちもいただきました)の「ベトナムアリス」でアルバイト。調理とサービスを経験。26歳になって「辻調理師専門学校」へ、フランス校も体験。
帰国して渋谷の「ヴィロン」でキュイジニエ、しかし編集の夢も止み難く、「エスコフィエ協会」の会報誌の仕事や講習会のお手伝いの時代を経て、ようやくお菓子の教室へ通います。芦屋の「スパチュール」。辻調で20年教えていたという小林先生の厳しい教えで基礎のすべてを身に付けたとのこと。
元々、高校生の頃からお菓子好きで朝早起きしてクラスメートのためにお菓子を焼いて行っていた(しかも友達の好き嫌いに合わせて、例えば素材を替えたりときめ細やかな対応をしていたそうです)というから、本格スタートは遅いものの筋金入りともいえるでしょう。

最初は自宅で注文生産するところからスタート。軒先で販売していた最初のお菓子が『パンデピス』だというから恐れ入ります。趣味の良さと意思の強さが感じられますね。
カフェにも卸したりしていたそうですが、いよいよ実店舗を北野白梅町に持ったのが9年前の2008年。現店舗に移ったのが2012年。お店の2階はカメラマンでもあるパートナーさんがカフェを開いています。もちろん彼女のケーキを食べることが出来ますよ。
素材はオーガニックのものが多いのですが、主義でやっているのではなく、美味しさで選ぶと自然にそっちにいくということで、ストイックというより“エピキュリアン的”な選択のよう。
おかげで、柔らかく膨らみのある味わいを楽しめるのですから、言う事なし!

途中何組もお客さんもあり、中断が多かったこともあって、『タルトオシトロン』を入れ忘れ。これ用に後からわざわざ保冷剤も入れてくれたというのに、嗚呼。どちらも購入点数と金額の不一致に気が付かないまま。あっはは〜。
ということは、お互いに話に夢中になっていて、愉しいひとときが過ごせた、という証拠ですね。ねっ、三井さん。



●『青りんごグラニースミスのタルト』550円  『本日のキッシュ』550円  (※内税)

●「焼き菓子工房 コレット」
  京都市左京区下鴨北園町11-4  定休日/火曜・水曜・木曜  営業時間/12:00〜19:00(カフェは12:30〜18:30L.O.)
   ※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらのケーキ&焼菓子をご紹介しています。

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