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zoom RSS アグレアーブル(5) 『リーフパイ』『フラン』

<<   作成日時 : 2017/02/24 21:22   >>

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京都、御所南の「パティスリー アグレアーブル」さん。本格フランス菓子店です。
いまや流行の発信地のような活況を呈していますが、元々、なにかにつけて一家言持った古くからの町衆の住むのが、京都。ここで地元の人たちに評価されるというのは至難の業なのです。2013年にオープンして以来、じわじわとその地歩を固め、流行廃りに関係なく、本当に美味しいお菓子を求めている人たちから愛される存在になってきましたね。
今年も第16回「3.14=π(パイ)の日R 」キャンペーンの対象商品として、新作を登場させてくれました。


●『リーフパイ』  7.8×4.3cm 厚み1.1cmほど。
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いやあ、美しい姿ですね。

葉っぱに葉脈がないのは分厚くカラメリゼした表面を鏡面に仕上げるため、と思いきや。
加藤シェフ「そんなん要ります? 全体が葉っぱの形してるから分かりますやん」とお気楽な答えが。

でも、当然ながら必要なところでは手間を惜しまないのです。
型物のカラメリゼは一枚物に比べて面倒です。それを両面じっくりと。
生地はいつものアンヴェルセ。ちょっと前に『ガレットデロワ』の2番生地で作っていたそうです(人気ですぐなくなったとか)が、試作では1番を使ったため、重しをかけて浮かないようにしています。
中心部分までしっかり火を通し、茶色。当然苦みを伴った深い味わい。
そこで、分厚めの両面カラメリゼ(粉糖)が利いてきます。ほどよい甘さを得て、お茶菓子として相応しい美味しさに。

口へ入れた刹那のパリンッ! とした食感も見事だし(生地自体はアンヴェルセなので比較的軽い食感)、最後までチャリチャリと楽しいリズムを刻んで、食欲を刺激しつづけてくれるのです。
いやはや、リーフパイでこれだけ独自性を出せるとはねぇ。お見事です。

なお、型は錦市場の京都(日本)を代表するブランド「有次」。和食用の抜き型です。大根を抜いたり、色ご飯を詰めたりするのにも使えそう。
現地で習い覚えたフランスの作り方を徹底して貫くシェフですが、思わぬところで京都風が飛び出したのでした。京男どしたなあ。




●『フラン』  辺9cm 高さ3.3cmほど。
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シェフ曰く「アンヴェルセのフィユタージュの2番生地に、カスタードを流して焼いています。それだけしかしていませんよ」

シンプルの極みのようなお菓子。
こういう一見地味なお菓子は優しくって、大好きなのですよ。
むふふっ、その美味しいことといったら、もぅ。ホールでペロッと食べてしまいそうになるくらい。お見事!

いや、ちょっと待って。フランってカスタードよりゆるいアパレイユを流すんじゃなかったっけ? 
そうそう、業界のご意見番の吉田菊次郎さんの製菓事典にも、挽き割り小麦に牛乳を加えた粥状の物を発祥とする、と書かれています。

シェフは、その話をしても「うんうん歴史はそうかも知らんし、いかにもそれらしいもっともな解釈やと思いますよ。でも、パティスリーの現実の仕事の中で、フラン焼くのにわざわざ特別のアパレイユ作ったりしません。フォンセ生地があったらフォンセを使うこともあるけど、フィユタージュの2番をどう使うかが課題であって、同じ余り物のカスタードを流したらフランが焼けるんです。しかも、それがとても美味しいんですよ」

クレームパティシエール(カスタード)はバターを加えればムースリーヌ、ダマンドが加わればフランジパーヌ、メレンゲが加わればシブースト……と発展的に使え、パティスリーの中心的なクリームでつねになければならない存在。だからこそ、パティシエールの名前を貰っているのでしょう。

パティスリーでは基本の生地いくつかとパティシエールを大量に作っておいて、定番商品を作り終えた後に、その日その日の余り物を使い切って行く。その代表的なお菓子がフランなのだそうです。
シェフが修業した「ラ ヴィエイユ フランス」のルネ親方も、「ジェラール・ミュロ」のミュロさんも、決まって2番生地にパティシエールを流していたのだとか。そして、1個ぐらいは残るので、ほぼ毎日食べていたそうです。
お店の基本材料で作られる日常のお菓子(ミルフィーユを表の顔とすると裏の顔でしょうか)、ということになると、そのお店の実力を測るのに最適ということにもなります。


アパレイユよりも(もちろんお粥よりも)濃厚で、豊かな味わいの明らかにお菓子に昇格した、陶然の美味。
同じアンヴェルセ生地でも、カスタードのしっとりとした水分に煽られているせいか、円やかな食感。これもちょっと違う表情でいいですね。
パティシエールの深いコク、たっぷり使ったヴァニラ(たしかタヒチ産)の魅惑の香り、焼き込んだことで得られるね〜っとり&とろん感。
唯一のアレンジは表面に塗った卵を真っ黒に焦がさないところ。日本人はお菓子の焦げを嫌いますからね。奇麗なたまご色が穏やかな気分に導いてくれるという余禄もあるようです。
シンプルで地味だけど、とても満足感の高いお菓子。ストレートにお店のレベルを物語っています。



パティスリーが健全に利益を上げて行くためのシステム、生地の準備のあり方、クリームの使い回しの方法、すべての素材をいかに使い切るか。そのシステムから生まれてくる美味。
守るべきことは厳格に守った上で、無駄なこだわりは捨てて、美味しければ良し。厳格さと柔軟さを併せ持ったルールの適用は、身に付いたフランス流でもあるのでしょうが、まさに加藤シェフの人格の大きさによって支えられているのではないでしょうか。



●『リーフパイ(2枚入り)』200円  『フラン』480円  (※内税)

●「パティスリー アグレアーブル」
  京都市中京区夷川通高倉東入ル天守町75-7  TEL075-231-9005  定休日/月2回不定休  営業時間/10:00〜20:00

  ※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらのチョコレートをご紹介しています。

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