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zoom RSS ルグリニョタージュ(4) 『林檎とキャラメルのシブースト』

<<   作成日時 : 2016/10/22 12:21   >>

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大阪府箕面市、阪急宝塚線の石橋駅で箕面線に乗り換えて二駅目、牧落駅から北東に7分ほど。道路を挟んで箕面市役所の向かいのビルの1階に存在を隠すように、目立たない看板を掲げているのが「パティスリー ル グリニョタージュ」さん。
分かる人には分かるさ、と斜に構えたような雰囲気が漂いますが、じつは岡野幸浩シェフ、フランス菓子を本当に美味しく食べてもらうためにはどうすべきかということに真剣に腐心している人でもあるのです。シャイなので、自分が美味しいと思うものを作っているだけ、と軽くいなすでしょうけど、ね。


●『林檎とキャラメルのシブースト』  径7cm 高さ3.8cmほど。
画像
以前にもシブーストを紹介した時にお伝えしたように、甘さをぐんと控えています。

まずは、簡単におさらいを。
シブーストとは、19世紀に『サントノーレ』を考案したとされる菓子職人の名です。
そのシブーストクリームは、カスタードにイタリアンメレンゲを加えたもの。カスタードだけで十分に甘く美味しいクリームです。そこへ甘さたっぷりのイタメレが加わるのでかなりの濃厚さ。
さらに表面をカラメリゼするのですから、なにをかいわんや、ですね。
その上に、組み合わせるアパレイユもある程度甘くしないとバランス上、間の抜けたものになってしまう! 
ということで、全体として大甘オンパレードのお菓子なのです。まァ、個人的には大好きですが。


さて。岡野シェフは「ベタ甘のお菓子はあきませんわ。イタメレなんか嫌いです、ふふっ」というフランス菓子の有力な作り手としては信じられないような発言。
だけど、これが大正解なのですねぇ。フーム!

カスタードは、砂糖の半量をカラメルにして加え、牛乳の半量を生クリームに置き換えています。そして合わせるイタメレをフレンチメレンゲに。
画像シナモンで風味付けしているのですが、中国産のカネルカシアと呼ばれる品種。日本のニッキに近いキリッとシャープな香り。カネルの木の皮を巻き髪のように巻いたものをボキッと割って牛乳に入れて炊き、アンフュゼしています。

下のパートシュクレの中は、バター、卵、砂糖、ラム酒のアパレイユ。
ガルニとして、少量のカソナードとレモンを掛けて炒め、一旦水分を出して、もう一度吸収させやや濃厚な味わいになった紅玉(シェフ曰く「なんつーか、含め煮のような」)、そしてラムレーズンも。

表面のやや厚めのカラメリゼ(前回食べた『ピスタチオのシブースト』はテイクアウトだったので色だけレベル)をコンコンと割って、ザクリ、ザクリとシュクレまで一気に切り分け、口にすると…… わぉ、美味しい、美味しいよ〜、シェフ!

カラメルの芳ばしさにつづいてカネルカシアのすきっとした清涼な香り。シブーストクリームの軽やかな食感、アパレイユの柔らかな甘味の中から、林檎とラムレーズンの一体となった味わいがクッキリと感じられるのです。
カラメル、シナモン、ラム酒、林檎。相性のいいもの同士が主張したり、引き立てあったり。
主役は林檎という設定だと思うのですが、脇役のレーズンの凝縮した甘酸っぱさが目立ついい役回り。林檎の円やかな旨味に包まれていなければ、これほどの効果には至らないのでしょう。
この組合せ、常識的なようでいて、これほど美味しく感じたのは初めて。いゃあ、いいですねぇ。

定番のシブーストクリームを使っていたら、これほどフルーツが明確に主張することはなかったでしょう。カネルカシアの圧倒的な魅力ある香りですら、ベタ甘の世界とは異質で、魅力を発揮できなかったかもしれません。
この大成功は、フレンチメレンゲにして甘さを控えたからこそ。香りもガルニの味わいもクッキリと浮き上がらせる効果を大いに発揮しているのです。

この他にもオレンジ、ピスタチオ、チョコレートなどいくらでもバージョンがあるようです(前2点は紹介済み)。どれもメイン素材の個性が明確に伝わる良さがあり、しかも食後感が軽快。
シブーストによって開発されたのが19世紀半ばなのですから、このような改良が行われない方が、むしろ変かも。
このアレンジは大賛成、うんうん、お見事です!



いつもながら、好き嫌いの激しい(逆に言えば、自分の作り出したい味覚が明確な)シェフですが、あくまでフランス菓子の範疇で再生させてしまうところが凄い。
この偏狭さを支えているのが、シェフ以上に頑固だという奥様の享子さん。ご夫婦の掛け合いを見ていると、よく分かりますね。恐るべし、最強のご両人。



●『林檎とキャラメルのシブースト』540円   (※内税)

●「パティスリールグリニョタージュ」
  大阪府箕面市西小路3-1-9  TEL072-725-6600  定休日/水曜  営業時間/10:00〜20:00

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