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zoom RSS 初登場! パティスリーフィル(1)『スリーズ・ピスターシュ』『タルト・オ・シトロン』

<<   作成日時 : 2016/06/30 21:29   >>

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当ブログ初登場の新星、「パティスリーフィル FiL」さんです。2014年10月オープンだというのにやっとこちらに辿り着きました。“甲子園の南に新しいお店があるよ”とは聞いていたのですが、阪神ファンではない身にとっては同じ市内に住んでいながら一番遠く感じてしまう土地なのですね。
と言い訳をしたところで、早速ご紹介しましょう。

フィルとは仏語でFiL、糸のこと。人との結びつきをイメージして付けられたそうです。
オーナーシェフは津田宗俊さん(1976年生まれ)、販売担当は甲子園が地元の奥様、裕美さん。ご夫婦お二人だけのお店です。
シェフは、お姉さんがお菓子づくりをしていたこともあってご自分もお菓子好きになり、寝屋川の高校を卒業後、「辻エコールキュリネール」へ進み、最初は料理の道へ。
卒業後は大阪の老舗パティスリー「ポアール」(勤務地は宝塚)で5年ほど、その後神戸のイタリアンレストランで料理の修業をし、やはり“料理は趣味・お菓子が仕事”と再認識。
再び方向転換し、芦屋の老舗「アンリ・シャルパンティエ」へ。そこでは、長らく商品開発に携わってきたそうです。勤務13年のうち、パリのラボにも2年間という経歴の持ち主。

シェフの宗俊さんは開発部門の俊英だったとみえ、顧問のかのクリストフ・フェルデール氏が来日する度に連絡してくれるそうで、ショーケース奥のなにも描かれていない黒壁に、白の油性マーカーで彼のサインが達筆で記されています。
お二人の楽しそうな写真もその場でタブレットから見せてもらいました。奥様によると「子供のように可愛がってくださっているのですよ」とのこと。うんうん、親子のように仲がいいのが手に取るようにわかる笑顔写真でした。

「アンリ」の資材発注部門にいた裕美さんも、試食を繰り返し厳選した食材を発注。プロとしての目利きの腕を持っています。なかでも果実、とくに苺に掛けては並ぶものの無いほどの苺マイスターだとシェフが太鼓判を押しています。
ということで、お二人ともなんだか凄いキャリアなのですが、少しも偉ぶることのない、朗らかでオープンマインドのご夫妻。初めてお会いしたというのに冗句も飛び出し、ぎゃはは〜と賑やかなひとときを過ごしたのでした。


●『スリーズ・ピスターシュ』  径6.5cm 高さ4.5cmほど。
画像
パートブリゼにクラフティ生地を流し、中にシロップで炊いたグリオットチェリーと乾燥させたセミドライレベルのグレープフルーツのルビーを潜ませています。
チョコのジェノワーズを挟み、アングレーズベースのピスタチオのムース(バヴァロワに近いまったりした食感)、グリオットチェリーとグレープフルーツのグラッサージュ。
トップにグリオットチェリーの半割2個とピスタチオの細粒、ヴァニラの莢の細切りを飾りに。

グラッサージュの渋い赤に惹かれますね。
グリオットのたっぷりした甘酸っぱさをグレープフルーツの大人味、ほろ苦さで落ち着いた味わいにしようという狙いでしょうか。

チェリーとピスタチオの組合せは割とよく見るようになってきていますが、ピスタチオの野趣あふれる香りと油脂感の中から鮮烈な甘酸っぱさが飛び出してくるという構図のものが多いですね。

ところがこちらのものは、ピスタチオの鮮烈さがグレープフルーツによって少し抑えられていることと、ピスタチオのムースから杏仁香が痛烈(!)に香って来るので、さらにチェリーのイメージが抑えられ、ピスタチオの甘さと一体となった甘酸っぱさ、ほろ苦さという、落ち着いた世界に。
ブリゼのほどのよい塩気も味わいの深さに貢献しているようです。

うーむ、先入観を心地よく裏切られた感がありますね。味わいの設計を見抜くのに少し時間を要しましたが、全体の味覚のバランスをきめ細かく整えて来ることが伝わってくる緻密なケーキ。
これひとつ食べただけでパティシエのケーキに対する理解の深さ、技術の洗練が分かります。
お主、やるな!




●『タルト・オ・シトロン』  径7cm 高さ4.1cmほど。
画像
パートシュクレに湿気防止のホワイトチョコをコーティングしているのでしょうか。
その上にクレームシトロンを流し、イタリアンメレンゲを絞っています。

所謂、定番の作りです。
が、クリームもメレンゲも少し手が込んでいます。

クリームは檸檬のゼストを加えて炊いて香りを移すのですが、食感の邪魔になるので、漉してゼストを取り除きます。バターたっぷりのコクの深いクリーム。
メレンゲは一般に甘ったるくなり過ぎるので、かなり砂糖を減らし、ライムの微細なゼストを加えて爽やかさを強調しています。
シュクレはホワイトチョコも手伝ってか、しっかりした甘さ。よく焼き込まれていて芳ばしく、サクサクッと噛むごとに香りが立ち上ります。アーモンドカラメルっぽい香りなので、生地にはアーモンドプードルも入っているのかな。

一口サクッといけば、ふぅ爽やか! 
初夏の風がすっと身体を通って行くような、そんな印象です。

それに、じつにバランスがいいですねえ。刺すような酸っぱさではなく、角の取れた酸っぱさで酸味好きも納得させる強度。
メレンゲは狙い通りの爽やかさ。ライムが冴えた香りを広げてくれています。シュクレも存在感があって、タルトを食べる意味を感じさせるのに十分。

清らかで、品がいいですねぇ。圧倒されるというのではなく、手放したくない想いがふつふつと湧いて来るような、強い愛着を覚える味わいです。
いいなあ、惚れ惚れします。お見事。




津田宗俊シェフは今年40歳。ベテランの域に差し掛かるかどうかという年齢ですが、開発畑で長く錬磨されたこと、フランスでもトップクラスのシェフの薫陶を受けたことで、年齢以上の知識と経験を積み、感覚を研ぎすましているようです。裕美さんの絶対味覚とともに、ブレのない洗練のケーキと出会えること間違いなし。
洋菓子の町・西宮に、またしても期待大のお店を発見した歓びで、クラッ!



●『スリーズ・ピスターシュ』500円  『タルト・オ・シトロン』430円 (※外税)

●「パティスリーフィル FiL」
  兵庫県西宮市甲子園九番町3-25  TEL0798-81-3785  定休日/水曜、火曜不定  営業時間/10:00〜20:00

  ※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらの生ケーキをご紹介しています。

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