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zoom RSS エミル(1) 『ナポレオンパイ』『タルトシトロン』『エッケタルト』『ブタのミミ』『ムシェル』

<<   作成日時 : 2015/07/15 19:08   >>

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神戸市灘区、阪急神戸線・六甲駅から南東へ5分ほどのところにある「 Zuckerbacker Emil 」(独語/お菓子を作る人 エミル)さん。2014年9月にオープンした新店です。
オーナーシェフの奥村豊さんは1965年生まれ、今年50歳。最近では遅い独立といえるでしょう。ほぼ30年に渡って、神戸の老舗「フロインドリーブ」で修業した腕っこき。
修業中、研修でドイツをはじめ、ヨーロッパ各国を巡った様子。退職後はイタリア菓子店、フランス菓子店のシェフとして体験を広めています。

ドイツ菓子、ドイツパンの修業歴が長かったことに加えて、奥様もドイツ人(ちなみに店名 Emil は、奥様のお父さんの名前だとか)ということで、商品名にドイツ語がよく使われていますが、お菓子はヨーロッパ各国のものが混在しています。ドイツ菓子があるかと思えば、イタリア菓子、フランス菓子…と、ヴァラエティ豊かな品揃え。
ドイツ的なお菓子がベースにあるけれど、国境を越えた他国のお菓子であっても、美味しいものは素直に取り入れています。
現代ドイツの都市部のお店の在り方を反映しているといえるかも知れませんね。
では、心弾ませながら、いただきまーす。


●『ナポレオンパイ』 3×8.3cm 高さ4.5cmほど。
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ミルフィーユですが、古巣「フロインドリーブ」のネーミングにしたがっています。

というのも、奥村シェフが最初に美味しいと思った原点であり、パイ生地とクリームだけのシンプルな味わいにこだわりたかったから、とのこと。

そうそう、たしか「フロインドリーブ」の『ナポレオン』は、パイ生地上下2枚、間はクリームたっぷりのスタイル。
所謂『クリームシュニッテン』に近いタイプです。
ただ、パイ生地2枚のオリジナルのバランスではお客様にアピールしにくいとのことで、3枚に。

普通折り。強力粉のみ、塩はかなり強めですから、しっかりグルテンを出した強い生地を作りつつ、3つ折りの回数を減らして、浮きを良くしています。
強い味わいと同時に、軽やかな生地を生み出しています。

そして、ヴァニラビーンズ入りのクリームは濃縮乳を使い、風味の強い濃厚な味わいで、パイの強さに対抗。ポッテリとした重い食感ですが、バターも加えることで滑らかな口溶けも手に入れた欲張りな仕上がり。

早速、カットすると、ほぅナイフの入りがとても軽やか。期待が高まるというものです。

サクッ、ザクサクッ! 
小気味いい食感とともに香ばしいパイが口一杯に。単独で食べれば酒のツマミになりそうなほどの塩気です。

でも、クリームと一緒に食べていると、塩気は少しも気になりません。クリームの優しい味わいに覆いつくされて、表へでることなく、深い味わいとして作用しているのです。
それだけクリームは優しくしていながら、意外と強い味わいなのですね。生地が5ミリほどの厚さしかないことにも意味がありそうです。厚くなればクリームを凌駕してしまうということでしょう。

見事な腕前、さすがパイで有名な「フロインドリーブ」30年の経験は伊達ではありません。
とくに生地でもクリームでも、強さと繊細さの相反する性質を同時に達成する技は、まさに練達の域。頭が下がります。

感心すれば感心するほど、パイ2枚のバランスでも食べてみたくなりますね。





●『タルトシトロン』   辺9cm 高さ4cmほど。
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シュクレに薄くフランジパーヌを敷いて、ミルクチョコとヘーゼルナッツの小さなダイス、フィヤンティーヌを混ぜたものを塗り、カスタード、スポンジ、カスタード。
トップには、レモンクリームをきれいに絞って。
レモンのクリスタリゼっぽいものを飾りに。

目を惹くのは、チョコレートを合わせているところ。
タルトシトロンにチョコという組み合わせはあってもちっともおかしくないのにあまり見かけません(ホワイトチョコはよくあります)。
でも、レモンとチョコは相性がよくて当然。レモンピールのチョコ掛けは好物なのです。

奥村シェフは自分の味覚に忠実な人で、酸っぱいのが苦手ということで、少し酸っぱさを和らげる役割としてチョコを組み合わせた模様。
レモンクリームもよくあるレモンカード風にすると「卵臭さが残るので」と、フレッシュのレモン果汁を使いつつ、絞れるタイプのクリームに作り替えています。
しかも、チョコと合わせていながら、味が混ざらないようにと、間にスポンジをかませ、両側にカスタードを塗る慎重さ。

さてさて、酸っぱいのが苦手という割には、へぇかなりの酸っぱさです。
カードにしない、大甘メレンゲを使わないという甘さ控えめの作りなので、酸味が負けることなく清らかに伝わってきます。
レモンを満喫した頃にようやくチョコが利いて来て、後口まで酸っぱいという印象を断ち切ってくれるのです。
酸味一辺倒ではなく、コクというか、奥行が出ているように感じました。うん、たしかに絶妙の構成。

シュクレは後述の『エッケタルト』よりは浅めの焼き込みで、レモンの爽やかさの邪魔をしないレベルでサクサクと軽快だし、カスタードはコアントロー?(聞いていませんので不確かです)の香る懐かしい味わいだし、チョコのおかげで酸っぱいだけでなく、味わい深さが出ているし。

芸の細かい技ありタルト、素晴らしいですね。





●『エッケタルト/ピスタチオとチェリーエッケ』  5.5×7.5cm 高さ3.7cm
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切り菓子ですから、ドイツ風のネーミングで言えばシュニッテンとなるところですが、見た目からエッケ (Ecke 角)という言葉を使ってオリジナリティーを主張しています。

なんでも、シェフの造語だとか。昔からあった言葉のように、うまくハマッていますね。

常時6種類ほど用意されているようです。
今回はその中から、『ピスタチオとチェリー』を選んでみました。

シュクレにダマンドピスターシュ、サワーチェリーとピスタチオのダイス、ピスタチオのペースト入りのシュトロイゼル。

ワオッ、香ばしい! シュクレがよく焼けていますね。サクサクと小気味いい食感。ふっくら、しっとりとしたダマンド。
あぁなんて豊かな香りなのでしょう。アーモンドとバターの芳しい香り、ピスタチオの香りに満たされます。
ザクザクとしたシュトロイゼルの食感も利いているし、ここでもピスタチオが追い打ちをかけてきます。

そしてサワーチェリーがいいですねぇ。
ちゃんと酸っぱくて、全体に円やかで大らかな味わいの中で、キリッと引き締め効果のある鋭い酸味が点描されて、一挙に目覚ましいタルトへ。

一口ごとに、タルトの満足感が立ち上がってくるのは、シュクレやダマンドの生地作り、焼き込みが優れているからですね。いやあ、お見事。




●『ブタのミミ』  縦8cm 横9.5cm 厚み0.8cmほど。
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出身店「フロインドリーブ」の『大ミミ』を思い出しますね。

パイ生地にたっぷりのグラニュー糖を撒いて、両側から巻き込んで小口から切って焼くのが、基本の作り方。

時折見かける、焼き上がりをカラメリゼするのと違って、パイ生地と砂糖との絡みがいいようです。
バターと砂糖が溶け合った香り、生地の香りも加わって、食欲全開の香りをまき散らします。

生地の塩気がかなり強く、たっぷりの砂糖でようやく美味しく感じられるバランス。

ザクッカリッと強い歯触りから、サクサクとした軽快さへの移行が楽しいし、その間にジワジワと美味しさが広がる感覚がたまりませんね。





●『ムシェル』  長さ8cm 幅8cm 厚み2.6cmほど。
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見た目そのもの、Muschel 貝殻。

独語の商品名を貰っていますが、イタリア菓子の『スフォリアテッレ』で、馴染みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
イタリア菓子店のシェフも務めたことがあるそうなので、お手の物なのでしょう。

一般に、この極薄パイ生地はシュトゥルーデル並みに難しい生地、と云われています。

薄く延ばして、ラードを塗り、折り畳んで、丸めて棒状に細くして、小口から切り分け、間にクリームを挟んで畳み込む。生地がずれて、貝殻の縞模様になる。
熟練の技と、広いキッチンが必要。

バリバリ、バリバリッ!   固く痛快な歯触り、ふふふっ〜。

生地はラードで揚げられるようなかたちになるのです。細かく砕けるとシャリシャリと繊細さも感じられます。
クリームはダマンドにオレンジピール、リコッタチーズ、クリームチーズ。クリームの温和さが、個性的な生地を人懐っこいものにしてくれるのに力があるようですね。

いいなあ、これ。
作っているお店は少ないですし、こういう家では真似の出来ない、珍しいものは見つけたら、即買うべし。





プリンやシューの定番のほかに、生ケーキは9種類ほどの品揃え。レジ横の焼きっぱなしのケースには、『エッケタルト』が6種ほど。焼菓子数種類。
訪れた日はまだ30℃を越えてはいませんでしたが、パイやタルトが当然のように並んでいたのは、嬉しかったなぁ。『ナポレオンパイ』は年中作るというし、秋冬になればもっとパイの種類は増えるとのこと。ふーむ、老舗で鍛えた底力、やはり頼もしいですね。
通りすがりに、おっ知らない店があると、好奇心で入ってみたのですが、一見ファミリー向けの外観、品揃えに見えながら、端倪すべからざる実力の持ち主だったのでした。なんだか発見の喜びもあって、今後の展開に期待が持てますね。



●『ナポレオンパイ』356円  『タルトシトロン』454円   『エッケタルト』346円   『ブタのミミ』162円   『ムシェル』324円   (※内税)

●「エミル」
  神戸市灘区日尾町2-3-17  TEL078-843-1880  定休日/水曜  営業時間/10:30〜19:30


  ※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらの生ケーキをご紹介しています。

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