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zoom RSS フランス菓子工房 ムーラタルト(14) 『ガレットデロワ』

<<   作成日時 : 2015/01/24 21:59   >>

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大阪、日本一長い商店街として有名な天神橋筋で、本格的フランス菓子を定着させて16年目という古株のお店「ムーラタルト」さん。私たちも長い付き合い。その間、たくさんのお菓子を繰り返し食べてきていますが、一度として裏切られたことがないのは特筆すべき美点でしょう。
吉野シェフ、ちっともブレないのですね。秀でた味を長期にわたって安定的に維持する精神の持続力、見上げたものです。

さて、話はちょいと回り道をします。
辻調理師専門学校が辻製菓を立ち上げたときの初代講師陣には意欲溢れる若手が集まっていました。フランス料理の急速な浸透に対してお菓子の方は出遅れていたので、その穴を埋めようという意欲が強かったと云えるでしょう。
その中の一人が、和歌山に1988年に「リヨン」を興した矢田さん。正統フランス菓子のパティスリーです。
91年には、その同僚である阪口さんと中野さんのコンビが大阪・阿波座に「ア・キャトル」(A・4 辻調理師学校フランス校で学んだ時の班名)をオープン。センセーショナルといえるほどのデビューで、一世を風靡したものです。人気は強固なもので、北新地店、豊中店と次々に支店を出したほど。その後、中野さんが独立してパワーがやや落ちた(主に中野さんがメディアに出ていた)こと、後続のお店が次々に出来てきて存在感が薄れてはいましたが、明らかに大阪のフランス菓子を牽引した偉大な存在でした。
その「ア・キャトル」の閉店が、「ムーラタルト」を訪れたその日の朝、吉野シェフに阪口シェフから電話で伝えられたのでした。
というのも、吉野さんは北新地店の店長を務めたもっとも優秀な弟子だったからです。閉店の理由はサイドビジネスが好調で、引き合いの話をお店があるからとの理由で断っていたのが、断りきれなくなってきたという、明るい転身話。悲しむべきことではないのかも知れません。それだけ商才に長け、周りの人がほっといてくれない人だということなのでしょう。
お菓子ファンの我々としては、名店が無くなることは残念ですが、辻製菓の直系、王道を歩むシェフが「ムーラタルト」に遺されたということで、安心できるのがなりより嬉しいところ。吉野シェフは基本に忠実ですが、「ア・キャトル」以上に先鋭な部分、深く掘り下げたところなどがあり、より現代的だというのが頼もしいですね。

そんな彼が大得意の『ガレットデロワ』をご紹介しましょう。大好評で、1月いっぱいは焼いているそうですよ。



●『ガレットデロワ』  径14cm 高さ2.3cm 200gほど。
画像
こちらの定番のパイ菓子『ピティヴィエ』と構成的には同じ。
生地もクリームも同一のものです。

ただ、『ガレットデロワ』らしく、より平たいものに焼き上げるために、生地が浮かないように圧えて焼いているそうです。なるほど、1cmほど背が低いですね。
もちろん、フェーブと王冠が付いています。

こちらでは最近の流行だから焼いているのではなくて、オープン当初の、ほとんどの人が『ガレットデロワ』の存在すら知らない頃から出し続けているのです。
だからファンも多く、年明けから2週間は毎日、大、小サイズを用意し、3週間目からは小のみになりますが、1月中は焼きつづけるとのこと。
今年は約3週間の時点で大30台、小130台の売れ行き。
ひゃあ凄い! ここ数年の記録を破る勢い。

画像
オープン初年度から出していて、“何これ?”という反応にも関わらず、3〜40台程度を売ったとのこと。
まだまだ扱う店が少なかったので、噂を聞きつけたフランス人も多かったそうです。
それが今では“これ中になんか入ってんねんで”と友達に自慢しながら買って行く常連が増えているとのこと。
あっぱれな奮闘ぶりですね。




さぁて、いただきましょう ……… あぁいつもながら美味しいなぁ。
画像サクッサクサクッ。ダマンドもふっくら甘くて、バランスいいですねぇ。
おや、セミドライのイチジクが1個入っています。フェーブの代わりですね。

圧えられたにも関わらず、サクサクの生地。バターの香りも豊かだし、カラメリゼの甘さもいいですね。
上等な餡を思わせるようなダマンドの優しい甘さが人懐っこい美味しさです。しっとり感もあって食べやすいし、イチジクの濃厚な味わい、プチプチ感がアクセントになっていいですねえ。

ベーシックな味わいの中に、軽い遊びもあり、退屈しません。
分かりやすくて飽きのこない味。
これだからこそ、万人を納得させられ、リピーターを増やしつづけられるのでしょう。お見事です。



『ミルフィーユ』『ピュイダムール』『ミルクティーのシブースト』『タルトモンテリマール』『赤い実のクラフティ』『ばなぁぬ』『タルトゥショコラ』などのプチガトー、『クロワッサン』『パンオショコラ』『ショソンオポム』などのヴィエノワズリー、焼きっぱなしのタルト類や『ガトーバスク』『キッシュ』『フィナンシェ』『ダクワーズ』『フロランタン』などの焼菓子。
どこをどう見ても王道のフランス菓子。さらに、どれも推敲を重ねられた鋭角的な味わいがあり、しかも、安定している。庶民的な商店街で、吉野シェフのお母さんが販売する家庭的な雰囲気に包まれ、おフランスなどとはつゆ知らず、本格的フランス菓子を当たり前に、ただ美味しいお菓子として愛着を感じて皆買い求めに来ているのです。
フランス菓子を一般に定着させるという意味でこれほど成功しているお店がほかにあるでしょうか。
メディアに取り上げられたり百貨店に出店する機会は少ないので、ご存知ない方もおられるかと思いますが、天満の街の誇りというべき存在。このようなあり方こそが“本当の豊かさ”だと思います。
「ア・キャトル」の分まで、末永く頑張って欲しいですね。



●『ガレットデロワ(小)』2000円  (大3000円)        (※内税)

●「フランス菓子工房 パティスリームーラタルト」
  大阪市北区天神橋3-1-6  TEL06-6242-7177  定休日/月曜  営業時間/10:00〜20:00(日曜のみ〜19:00)

※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらの生ケーキをご紹介しています。

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