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zoom RSS W.ボレロ(ドゥブルベ・ボレロ) (7)  『タルトポワール(ラ フランスのタルト)』

<<   作成日時 : 2011/11/27 22:06   >>

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滋賀県守山市の名店「W.ボレロ(ドゥブルベ・ボレロ)」さん。当ブログのお馴染みさんです。
どこまでも微に入り細に入りこだわる渡邊シェフの世界を一度体験してしまうと、もう後戻りはできません。
そのひとつが、この『ラ・フランスのタルト』。仲秋から晩秋にかけての季節は、なんといっても、洋梨。秋の風物詩的タルトと云えるでしょう。
私たちも、洋梨といえば……まず、こちらのものを一番最初に思い出してしまう、とても大好きなお菓子です。
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数年前にもご紹介したのですが、カットしたものをいただいただけ。美味なる味の記憶は年々大きくなるばかり。もっと食べたい、もっと存分満喫したいという気持ちが、紅葉が燃える頃になるとむくむくと。いや、悶々と。

えぇい、今回は、子供買いの私たちとしては珍しく、ホールでいってしまおぅ。
それに、シェフから長い長いメールで詳しくお話を伺うことができたので、当ブログに、再登場することになりました。私たちだけで独り占めするなんて、もったいないですしね。

ということで、いざ。ナイフを握る指先まで、甘美な歓びで震えそうです。


●『タルト ポワール』 径18cm 高さ4cm 680gほど。
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よく焼き込んだ少し厚めのブリゼ生地。クレームダマンド。
そして、主役の完熟ラ フランス。山形産有機栽培。契約農家から毎年選りすぐりの物を送ってもらっているそうです。
その上から、アプリコットのナパージュをたーっぷり。

その洋梨農家は、山形の蔵王の麓。
渡邊シェフの修業先である「レザンジュ」でも取り引きしていたところ。シェフ本人は、実家の洋菓子店に戻ったときからのお付き合いだそう。
土作りに異常にこだわる頑固親父の農家さんで、シェフも現地を訪ねて、美味しさの源を確認しているそうです。

最大の工夫は、ラ フランスの処理。皮を剥いて形を整え、洋梨のブランデー(ポワールウィリアムス)などを使い、コンポート(熱は加えないんだけど)にすることで味を深くしているとか。今年は出荷が遅れ、追熟もままならなかったようで、この“秘密の工程”にかなりの努力が払われたと仰っています。
シェフ曰く“洋梨触って20シーズン近くになりますが、洋梨はチーズの熟成のように奥が深いと思います”。 私は、えぇ、ここまでされているの? という驚きを覚えました。

シンプルにフルーツの味わいを押し出すタルトですが、“美味しいラ フランスをさらに美味しく”という、パティシエ本来の仕事に執念を燃やしています。
「レザンジュ」で最初に出会った味を想い出の中で美化している部分もあるでしょうが、近年、フルーツがすべて薄味になっていく傾向もあるので、信頼している契約農家といえども、しっかり手を掛けなければ気が済まなくなるのでしょう。その結果は、上々吉。

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豊満ボディのタルトですね。
おっ、食べる前から、すでに香りが馥郁と立ち上ってきています。果樹園の深い呼吸、といえるでしょうか。
口へ入れると、じゅわ〜と迸る熟しきった、とろとろの洋梨に……しばし、陶然。
溢れんばかりのジュースを湛えた果肉は、ほとんど抵抗なく、しゅるっ〜と舌の上で消えてなくなり、濃厚な甘味と懶惰な気分に誘う酩酊感を含んだ香りを残すばかり。ふうぅ。

クボタはアプリコットのナパージュの酸味がシャープなエッジとなって、すっきりとした印象を深めているといいます。私イワモトはむしろややくどさと、せっかくのラ フランスを覆ってしまうような気がするので、もう少し量を減らしても、とちらっと思いました。
まぁ、でもそれはささいなことです。というのも、洋梨を包み込んでいる土台も素晴らしく、濃厚さをうまく受け止めてくれているからです。

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コクのあるダマンドがどっしりとした土台を築いています。ジュースを吸って、しっとり。果肉と同様に、スルリと喉を通ってしまいます。
こちらはアーモンドはマルコナ種のものを使っているはずで、とても香りが高い。
おまけに、杏仁香も強く、香りの奥行きはとても深いですね。もぅ、くらくらするほど。

そして、厚めのブリゼ。
ダマンドがジュースをしっかり受け止めているので、生地はザクザクッとした強い歯触りをしっかり残しています。しかも、ところどころ果汁が周りに滴り落ちて、周囲の生地をこんがり焦している箇所もあったりして、そそる度も満点。
あぁ奇麗なコントラスト。芳醇な香りを振りまきながらシュルッと消える上部に、香ばしさと強いリズム感を与える重要な役割を果たしています。生地のほのかな塩気も、甘いばかりになるタルトに味わいの立体感を作り出しているようです。

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ラ フランス自体がもう素晴らしいのですが、そこに加えた一手間、二手間。ほかのパーツもその水準に負けないように、高められている。
見事というしかないタルトです。逸品です。


最後に。やはり、お値段のことにも触れておきましょう。
正直なところ ホールで購入しても、この満足感なら少しも高く感じません。 むしろ、安いなぁと、はしゃいでしまいました(8カット取れるので1ピース420円)。ボンボンショコラ一粒選ぶのに逡巡してしまう、私が です。
晩秋を満喫できる逸品が、この価格で存分味わうことができるなんて、なんたってお買得。
ふーむ、なにからなにまで、大満足のタルトなのでした。




渡邊シェフの凄いところは、ケーキの完成を認めないこと。どれだけ満足できる味わいを創造しえていても、つねにさらなる上を目指しつづけているのです。一歩でも立ち止まったら最後、味わいは停滞し、何処かから古びて行くのでしょう。
“より美味しいケーキへの妄執。シンプルなタルトだからこそさらに、という執念” これこそ、パティシエに課された責務なのではと思います。

40代も半ばともなれば、人生の終盤が見え始め、安定、安住を誰しも欲するもの。そんな平凡な願望などかなぐり捨てて、ストイックに美味しいお菓子への高ぶった気持ちを燃やしつづける。渡邊シェフのタフネスぶりをみれば、あと2、30年は意欲が持続しそうですね。
……シェフ、なんだか恰好良すぎますよ!



●『タルトポワール』3360円(18cmホール)
  ※11月2日〜12月19日までの販売。1日限定20台。お取り寄せも可能です。

●「パティスリー W.ボレロ」
 滋賀県守山市播磨田町48-4  TEL077-581-3966  定休日/火曜


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