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zoom RSS ●特集6/2011年 初秋雑感「ピスタチオ党!? になりたいなぁ」ピスタチオのお菓子、集めました

<<   作成日時 : 2011/09/21 17:40   >>

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ついついナッツ類には季節がないと思いがち。保存食ですからね。
でも、アーモンドにしてもクルミやピスタチオにしてもそれが実る季節があります。漠然と秋というのは解るでしょう。それがピスタチオの場合、意外と早くて8月下旬から9月上旬なのだそうです。いま旬真っ盛りということのようです。
ナッツ類のなかで、栗だけは旬を尊びますが、それ以外は季節感とは関係なし。何故なのかしらん。 
ということで、胡乱なことにいつ食べるべきなのかも明確にできないまま、ともかくピスタチオの収穫時期だからということで、ピスタチオをクローズアップ。
今回の特集は、ピスタチオを使ったお菓子を集めただけの、いかにも安直な発想です。“ピスタチオ党”と名乗りたくなるほど好きなので、お許しを。

*   *   *   *  *

私たちがピスタチオに出会ったのは、もっぱらスナックとしてのもの。殻付きの塩煎りしたものが、スナックのスナックとしてよく出たものです。おやつにもしてましたけどね。
次に俄然目覚めたのが、20年ほど前、パリの「エディアール」に立ち寄った時の、ピスタチオ入りの板チョコとの出会い。なんとピーナッツチョコのように、これでもかとゴロゴロ入っているのです。アーモンドチョコの一山に一個鎮座まします、なんてものではないのです。もう本当にゴロゴロ、“もっとチョコレートを”と叫びたくなるほど。美味しいとかなんとか言う以前に、その量に堪能しました。パッケージもお洒落できれいだったですしね。
そうそう、そこのフランス人販売員の兄ちゃんに、“ピスターシュ”と言うんだよと教えてもらった思い出も蘇ってきました。ふぅ、懐かしいなぁ。

ケーキに使われたピスタチオではじめて感心したのは「ジェラール・ミュロ」の『パレルム』だったような気がします。画像
ムース系のお菓子で、ピスタチオの濃厚な味わい、ねっとり感、そして何より風味が強かったのです。例の殻付きをポリポリ食べるのよりもはるかにピスタチオらしいと感じさせる力。これが、われわれ二人にピスタチオ熱を植え付けたに違いありません。
以来、お店に入ってピスタチオのケーキを見つけると疼いてしまうのです。
ということで、いままでに出会ったピスタチオの数々をご紹介しましょう。






若いシェフから順次ご紹介していきましょう。

●「メツゲライ クスダ」の『ピスタチオのタルト
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じつは、このタルトは赤ワイン煮の洋梨がメイン、と言い切っていいでしょう。
それを支えるフランジパーヌにピスタチオペーストが加わっています。
シチリアの無添加・無着色の高級素材が使われているというもの。しっかりした洋梨の味わいを受け止める以上に、存在感を発揮しています。素材の力なのでしょう。
ただ、シュクレの香り、赤ワインと洋梨の香りが強く、シュトロイゼルに使われているアールグレイ、シナモンの香りとも競合しているというのは、高級素材の使い方としては少々もったいない気がします。
このタルト自体は大変良くできていて、とても美味しいのです。
が、厳選した上質なピスタチオと聞くと、そのものだけを味わいたいという願望がムクムクと立ち上がるのを抑えられません。ピスタチオが主役に躍り出たタルトを、もう一品開発してくれませんか? 宇田さん、ぜひ!



●「ルシェルシェ」の『デリス オ ピスターシュ
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新人らしくない安定感を感じさせる村田シェフ。どれも素晴らしく、しばし陶然としてしまうケーキばかりです。
彼は、季節に鋭敏に対応するタイプでもあります。気候、季節にあったより美味しいものを、と真摯に取り組んでいるのが好感もてますね。
さて、このケーキも涼しい間はトップがピスタチオペースト、暑くなるとフランボワーズのクリームと姿を変えています。
ピスタチオの濃厚さを活かしながら、生地もクリームも軽くし、フランボワーズの爽やかさを押し立てることで、夏向きのケーキに変身させた由。
そろそろ涼しくなってきたし、“旬”と聞けばおそらくピスタチオメイン版に切り替えてくるのではないでしょうか。嗚呼、早く食べたいなぁ。



●「マウンテン」の『ブリュレ ピスタチオ
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チョコレートのワールドカップの覇者、水野シェフだけあって、チョコレートがメイン。
ピスタチオのペーストを使ったブリュレを、ミルクの香りたっぷりのチョコムースで包んでいます。
シンプルな作り。
ピスタチオは香らせて、個性を発揮させています。ブリュレにすることでねっとり感を狙っているのかと思いきや、意外にもスッキリ。
ピスタチオから濃厚さではなく、軽やかさの部分だけを取り出し、これまたスキッとしたミルクチョコと合わせてみせるのですから。
素材の美点の抽き出し方の上手さと、年齢に似合わない落ち着いた完成度。
最近の若い人はやることがスマートですね。





●「カファレル」の『チーズとピスタチオのムース』『ピスタッチオのムース』
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神戸に山本剛史有りと、必ず指を折りたいシェフの一人。
味の鮮度、キレの良さが尋常一様じゃないのです。濃厚な味わいすら爽やかに感じさせてしまうほど。ほとんどマジック。
さて『チーズとピスタチオのムース』。
チーズとの組合わせは他でまだ味わっていません。これがピタリと合っているのです。
しかもパッション風味を加えるなど、ピスタチオを殺しそうなことを平気で企みます。それが不思議にマッチして杏露酎のような風味に変化。
ピスタチオの風味も満喫しつつ、別の味わいも添えてみせる離れ業。いやはや。
『ピスタチオのムース』はその原型となったもので、バニラのブリュレの濃厚さと合わせたもの。この時からすでにパッションは使われていましたね。




●「シュエット」の『ベルシー
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兵庫県三田市のパティスリーといえば、やはり、ここ。
水田シェフの作るケーキは、ご本人同様、毅然とした強さのなかに、どこか人懐っこさを感じさせます。
ダコワーズ生地とフランボワーズのムース、ピスタチオクリーム、フランボワーズジュレという組合わせ。量的にもフランボワーズがメインのケーキ。
最初、フランボワーズの口溶けが勝り、爽やかさが口いっぱいに広がり、やがて遅れて溶けはじめたピスタチオの濃厚さに覆われて行きます。
この交替劇が見事。爽やかさが失われるのではなく、濃厚さと両方が同居するという曲芸的な合わせ技。ふぅ。これほど軽やかで食べ応えのあるケーキもめずらしい。
水田さん、センスもいいし腕利きですね。しかも、集中力がまっとくとぎれていないところも素晴らしいですね。




●「プラン」の『デリス ピスターシュ』『ケーク オ ピスターシュ』『クレーム ピスターシュ
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佐古井シェフは、洗練されたきれいな味わいが持ち味。
ピスタチオへの迫り方にも余裕が感じられます。なにがなんでもピスタチオと凝り固まっているのではなく、生地からフッと香る程度に抑制されているのです。
デリス ピスターシュ』はピスターシュのプードルが入ったスポンジと、ピスタチオ風味のホワイトチョコクリームを交互に重ねたもの。淡い美味しさのなかから、フッと。
ケーク オ ピスターシュ』はふわふわ柔らかタイプのケークに、白いちじくとともにやはりプードルが用いられています。ここでも、いちじくのプチプチ感を楽しんでいると、フッと。
そして『クレーム ピスターシュ』ではクレームブリュレのとろり、ねっとり感を強調するいいペーストとして使われています。そのとろとろねっとりを楽しんでいるとまたしても、フッと。
そう、この人のお菓子は軽やかなスマートさが魅力。
それでもピスタチオ。軽い世界が現実から遊離してどっかへ飛び去らないための錘りなのかもしれませんね。



●「シャルルフレーデル」の『ノアゼット ピスターシュ
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本格的フランス菓子の品揃えと、副材料も手作りするという姿勢で大阪随一と言っていいお店。門前シェフも脂が乗ってきています。
これは、圧倒的に強い組合わせ。
ヘーゼルの力強い味わいの生地とピスタチオのムースではなくクリームを合わせ3回繰り返し。間に1層だけカシスのコンフィチュール。
濃厚なナッツの香りと油脂に由来する強い味わい、そこへキリリと酸味の利いたカシス。
カシス・マロンという組合わせが定番であるように、この酸味はナッツと合うのです。
ペーストで濃厚な味わいをキープすることで、この大胆なまでの落差の世界が完結しているとみていいでしょう。
うーん、いいですね。




●「オ・タンプル・デュ・グゥ」の『アプソリュー
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オープン当初から百貨店進出を図ったお店ですが、細谷シェフの生ケーキはまったくブレることなく洗練と強さを兼ね備えています。
チョコレートムースの名品。
ショコラフランボワーズのムースという時点で勝負合った、という感があります。
ムースの場合ほとんどがチョコレートとフルーツそれぞれのムースを合わせるに止まっています。
こちらの場合は生地物のプチガトーでは当たり前になっているショコラフランボワーズをムースの世界に横滑りさせています。
ピスタチオのブリュレも含めて重厚な世界を一気に軽やかな新世界へ滑り込ませ、鮮烈な印象へ。
トップに絞っているのがシャンティではなくメレンゲであることも、味を濁らせない鋭い選択だと思います。中に潜んでいるフランボワーズのコンフィチュールとともに冴え切っていますね。




●「W.ボレロ」の『ケーク ピスターシュ エ アブリコ
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渡邊シェフの作るケーキはつねに“過剰”がテーマになっているといっても過言でないくらい。
それが味の濃度だけでなく、神経の使い方、繊細さへの意識など多方面に渡って貫かれているのです。
だからこのケークでも、たっぷりのバターを使ったリッチな生地に、アプリコットの酸味が強く利いて、爽やかさも感じられる味わいを作り出しています。
ピスタチオもしっかり香って、どうしたことかこの組合わせで、濃厚なのに品がいい、という小さな驚きのあるケーキに仕立て上げています。
繊細さへの“過剰”な意識がやや勝っているということでしょう。ふふっ。




●「ラ・プラージュ」の『ピスタチオ カライブ
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林正人シェフのピスタチオ使いは大人しい顔をして、印象的。
ブログを始める以前に食べていて、こちらの定番でもある『デュオピスターシュ』も濃厚な味わい、ねっとり感の生きたケーキだった(ような)と記憶しています。
そしてこの『ピスタチオカライブ』はチョコレートのカライブのムースがメイン。
トップにホワイトチョコで伸ばしたピスタチオのペースト。
あまり華々しく香るわけではないのですが、ないと寂しい、チョコレートの濃厚さにダメを押すような使い方。
ピスタチオを求めて食べると物足りないけれど、林シェフの味わいの方程式で求められた最終“解”だということがよく理解できます。





●「ジャック」の『ノエル ピスターシュ』『ピスタ アンタンス
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こちらはもう何を食べても感心させられてしまうお店ですが、ピスタチオ使いもやはり大したものでした。
ノエル ピスターシュ』は季節を無視して、夏に発売開始されていました。ジャック流シュトーレン。
カトルカール生地にドライフルーツがたっぷり。ピスタチオ以外にもアーモンド、レーズンなどが生地より多いくらいにたっぷり。状態のいい粒で入っていて、コリッと弾ける香りがたまりません。単純きわまりないけれど、究極の味わい方かもしれません。
ピスタ アンタンス』。 intense は、強烈な、卓越という意味。ベルコラーデ社のクーベルチュールにその名の付いたものがありますね。
ヘーゼルとピスタチオ、二つのムースの間にフランボワーズのジャム。ベースはこれだけを食べつづけたいと思わせるほどの魅惑のチョコスポンジ。ムースのねっとり感の魅力が全開。香りも味わいも濃厚。ヘーゼルも負けずに頑張っていますが、チョコだけでなくピスタチオも、卓越しているという意味になるようなバランス感覚。ピスタチオに華がありますねぇ。
いずれも、それぞれの頂点を究めたような、堂々たる味わいです。



●「H.スミノ」の『トレフル
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大ベテラン住野シェフがパティシエ歴48年目の時に、息子さんの結婚式の引出物に開発したケーキ。
まだまだ意欲的に名品を開発しつづけているシェフですが、ステージを考えても、一つの結論を提示すべく力の入ったものと考えて間違いありません。
しかし、肩の力は完全に抜けているのです。さすが。
パンドジェンヌピスターシュに薄くシャンティを塗り、同じ生地のクラムをまぶしただけのもの。四葉のクローバーに見立ててトレフル(trefle )と名付けたセンス、その色合いの淡さ。
そして何より味わいと、軽い食感、スルリと溶けて行く口溶け。淡いけれども、ピスタチオのナッツを食べているという満足感にいつしか包まれます。食べたものを幸せにする、まさに幸運なケーキ。
パティシエたるもの生地が焼けなくてどうする、素材の持ち味を抽き出せなくてどうする、と後輩たちに突き付けた静かな挑戦状と受け取れるかもしれませんね。


*   *   *   *  *

ピスタチオにも他の素材同様、シェフによっていろいろな使い方が開発されています。それぞれの美味しさに納得するのですが、まだまだ同工異曲の感を免れないような気がしないでもありません。
ぜひ、旬の今、ピスタチオの美味しさを自分なりに極めて欲しいですね。いつの日か“参りましたぁ”と言わせてほしいなぁ。


※ご紹介したピスタチオのお菓子の情報は、ブログにアップした時点のものです。すでに製造していなかったり、価格も変わっているかもしれません。ご了承くださいませ。

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