|
滋賀県守山市でにわかに全国的な注目を集めている「W.Bolero(ドゥブルベ・ボレロ)」さん。テレビ番組のお土産で『アイアシェッケ』が大人気となり、お取り寄せブームが起こっているのです。 これを書くと一見浮ついたお店のようにも感じますが、じっさいに行ってみて分かるのは、お菓子への真剣な取り組みは当然のこととして、一人ひとりの客への温かい愛情がじんわりと伝わってくる、じつにいいお店だということ。 販売スタッフ、フロア担当の全員がさりげなく、客に優しい目を向けてくれているのが感じられます。厳しく教育されたというより、全員がこのお店で働くことの喜びに満たされている豊かさがあって、そのことがこちらの心にも感応し、とてもゆったりと寛いだ気分で食べられるのです。 しかも、商品知識もしっかりしているし、分からないことがあっても、嫌な顔一つせずに、ニコニコと“聞いて参ります”と軽いフットワーク。心からもてなしたい、そんな気持ちが溢れているのです。こんなに楽しく、打てば響く買い物体験は本当に稀少。 では、気分のいいところで、美味しいのはもちろん、ときめきを覚えたケーキの紹介と参りましょう。 ●『タルトシトロン』 径6.8cm 高さ1.8cmほど。 ![]() パートシュクレにミルクチョコガナッシュ、そしてレモンクリームという構造。 レモン色の背景に、飾りのみずみずしいグロゼイユの赤・ミュールの黒紫、ハーブの緑。色鮮やかです。 添え書きに“ヴェルベイヌ”風味、とあります。 レモンの香りのするハーブ(英名でレモンバーベナ)。レモンクリームにはハーブの小片がちらちらと入っているのが見えませんか? サクッと一口。 レモンの酸味と香り、豊かにゆっくりと広がっていきます。クリームとガナッシュとのねっとりとした舌触り、タルト生地のさっくりとした食感。あぁいいですねぇ。 一つひとつを特定できるほど強く風味が香るわけではありませんし、香りに対する感受性が敏感というわけでもないので……ただ、レモンにしてはどこか複雑なような、奥の深い香りが。HPで確認すると、さらにミルクチョコにはカラマンジーというフィリピン産のライムも使っているとのこと。ふむ、手が込んでいるのですね。 全体にこれでもかという強烈さではありません。どこか優雅さを感じる、とても満ち足りた味わい。抑制が利いていて受け入れやすく、すべてのバランスがピタッととれているために満足感がある。 いや、満足感は知的な部分からもやってきているような気もします。 レモンの風味の複雑さ、ミルクチョコの隠れた酸味。サクッとしたタルトの控えめな存在感。食べている間に感じることがいっぱいあるのです。 この特別の美味しさって? いままで食べたことある? 嬉しい困惑に満たされるひとときです。 ●『ルバーブと木苺のタルト』 径6.8? 測り忘れ ![]() パートシュクレにクレームダマンド、ルバーブの炊いたもの、ジャムを詰めたフランボワーズが9個。 トップには、甘みのないクレームシャンティ(粉糖がパラパラと)がたっぷりと。 ルバーブ独得の鋭い酸味を活かしつつ、木苺のやや円みを帯びた酸味とのグラデーションが分かるレベルに、うまくコントロールされています。 二つの酸っぱいものを支えるのが、極力甘みを抑えたタルトとダマンド。 そして、対照的にたっぷりの生クリーム。おそらく無糖だと思うのですが、クリーム自体の乳糖の甘みとふくよかな香りが、酸味を手馴づけるのに十分な力を発揮しています。 ショーカードを見ると、木苺にはどうやら、1個1個、ジャムが詰められていたようです。食べているときには気が付かず、マリネしたものだと思い込んでいました、はははっ〜。 吟味して食べたいと思いつつ、好きな味だとするっと食べてしまういつもの癖がでて、後からなるほどと頷いた次第。 酸っぱいもの大好き、ルバーブ好きとしてはもっと鋭くきつくても平気ですが、抑制の意味がよく分かる、分別のあるケーキとして評価したいですね。 いやいや、こちらがルバーブに反応し過ぎているのであって、これは木苺が主役のケーキなのでしょう。一番手を掛けられているのだし、姿もそうだし。ルバーブは酸味を単調から防ぐため、幅を持たせるための存在。 なるほど、そう考えると全体がすっきりまとまって受け止められる感じです。 (※ルバーブもハーブガーデン(店先にあり)のものなのでしょうか。帰りに植わっているのを確認しましたが安定供給できる量ではなかったようですし、どうでしょうか) ●『プレッツェル』 6.5×8cm 厚み1cm 45g(2個)ほど。 ![]() ドイツ、オーストリアで定番のお菓子。 固焼のパンもありますが、お菓子屋さんのプレッツェルは紐状のクッキー生地とパイ生地を縒り合わせて、独得の形に編み上げます。 ここでのパイ生地の役割はクッキー生地のサクサク感を強調する程度のもの。パイ菓子というよりはクッキーとして楽しむべきものでしょう。 こちらのものは、まさにクッキー。 浅い焼き色から分かる通り、パイの芳ばしさはあえて出さないようにして、クッキーの美味しさを引き立てているようです。 表面の粉糖は柔らかな甘さ、そしてサクサクホロホロと軽やかに、繊細に、崩れる心地よさが身上でしょう。 材料にはめずらしくマーガリンも表示されていますが、ちっとも気にならず、むしろバターとバニラのいい香りが楽しめます。 スタッフの話によると、厨房スタッフは、玄関まわりの掃除とハーブガーデン(入り口までのアプローチにあって、まず、ハーブや花が客を迎えてくれます)の世話がしっかりできるようになるまで、キッチンに入れて貰えないのだそうです。お客をもてなす気持ちと、材料を粗略に扱わないように、作る人の身になれる心が育ってから、ということなのでしょうか。 農家が手塩にかけて育てた材料を使って、お客の喜ぶ顔を見るために、中間に立って洗練された技術をふるう。 際立った個性を発揮しているのに、どこまでも優しさを感じさせるお菓子は、それを実現する技術は、こんな突き詰めた精神によって育てられているのだと思いました。 また行きたいな、でもなかなか遠くて…。本来私は、お店に足を運んで店構えを見たり、人とのやり取りの中で、何かを発見したり感じたりするのが好きです。が、有閑マダムでもない身分としては現実は厳しく、時間と予算の壁が大きく立ちふさがっています。 今回やっと、世間の人もすなる“お取り寄せ”というものをしてみんとてするなり、という気持ちになりました。秋限定の『マロンパイ』に、今から気もそぞろ。 ●『タルトシトロン』399円 『ルバーブと木苺のタルト』420円 『プレッツェル』147円 ●「W.Bolero(ドゥブルベ・ボレロ)」 滋賀県守山市播磨田町48-4 TEL077-581-3966 定休日/月曜(祝日の場合は火曜) ※ブログ「パイ日和・おまけ」(http://pie-omake.at.webry.info/)にも、このお店のタルト以外のケーキを紹介しています。よかったら、どうぞ。 |
| << 前記事(2008/08/13) | ブログのトップへ | 後記事(2008/08/20) >> |