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神戸・御影の「セセシオン」さん。05年6月以来の再登場。 行く度にほれぼれとする洗練の商品たち。生ケーキも焼きっぱなしのケーキも完成度が高く、凛とした姿をしています。大好きなのに、訪問がほとんど10ヵ月ぶりなので、禁断症状が出ていました。 こちらの商品が素晴らしいのは、商品開発にじっくりと時間をかけているからでしょうか。発想から店頭に並ぶまで1年はかかることもあるそうです。お店でいつも静かな優しい語り口でお相手をしてくださるディレクターの吉谷さんと、気さくな飯田シェフの黄金コンビが厳しく吟味を繰り返しているのでしょう。ショーケースを飾ったときには、味はもちろん、姿も、食感もすべて完璧といえる水準に到達しています。 役割分担をお聞きしたわけではありませんが、お店全体のコンセプト、品揃えと味わいの方向性の指示などがディレクターとしての吉谷さんの役割でしょうか。そして、一つひとつの商品の澄み切った味わいを作り出す磨き抜かれた技術と感性の飯田シェフ、そしてスタッフ全員の熱意で素晴らしいレパートリーが誕生するのでしょう。どれ一つとっても感心しきりです。 最近は派手な経歴のシェフばかりもてはやされますが、まずは自分の舌を信じて食べてみることから始めませんか? 「にしむら珈琲」の喫茶店のケーキだから、と高を括っていたら損をするのはあなたです。これだけ満足感が高く当たり外れのないパティスリーは、関西でも数えるほどです。 今回は撮り溜めしてきたパイを一挙大放出、「セセシオン」のパイの水準の高さをたっぷりご紹介しようと思います。 前回は『チェリーと赤すぐりのプルンダー』だったのですが、今回もプルンダーをまとめて5種類。こちらの“顔”とも言うべき商品ですから、ちょっと力が入ります(とはいえ、最高!という印象だけは強く残っているのですが、細部の記憶があやふやで…)。 ●『紅玉のプルンダー』 10cm弱×7cm 90gほど(これは昨年のもので、今年のものとは若干異なるようです)。まず、ブルンダーのなんたるかを、少し。独語でデニッシュのことを指す言葉です。折り込み式醗酵生地のこと。パン屋さんでよくある、サックリした表面にふわったした中味。もう定番の味ですね。 でも「セセシオン」のプルンダーは明らかに違います。醗酵を抑えた生地をしっかり焼き込んであるので、ザックリ、ザクザクとした歯応え。フィリングに頼らなくても、生地自体に豊かな味わいと香りがあります。個性の強い生地です。 神戸に「フロインドリーブ」という老舗のドイツ菓子とパンのお店がありますが、このプルンダーのレシピはそこに由来するもの。飯田シェフの出身がここ。フロインドリーブ出身のお店「TARO'S」さん(名店でしたが、惜しくも閉店。今でも話題にのぼることが多いお店ですね)も、よく似たプルンダーを焼いていました。「TARO'S」で修業した「グーガムーガ」さんもそう。遺伝子が受け継がれるように、この特殊な生地への強い愛着が確実に受け継がれています。 それだけ、この生地が美味しく香り高く、一度この味を知ったら普通のふわっとしたデニッシュには戻れないということなのでしょう。 前置きがすっかり長くなってしまいました。『紅玉のプルンダー』へと話を進めましょう。 紅玉は皮付きのままスライスしたもの。ほのかにシナモンの香りもします。網目の表面にはフォンダンとスライスアーモンドがちらほら(今年のバージョンは写真のものよりアーモンドどっさりです)。 個性の強い生地に負けないためには、フィリングも十分な強さが必要ですが、さっぱりとした紅玉のさわやかさだけで、しっかり太刀打ちできています。 つい甘味を多めにすることで酸味を際立たせたくなるところですが、ぐっと我慢した判断力は大したものです。 大きなサイズなのに、ペロッと平らげてしまいました。 ●『洋梨のプルンダー』 径9cm 高さ3cmほど。洋梨は同じ洋梨のブランデーでフランベし、クレームダマンド、生クリームと合わせてあります。洋梨は水っぽくならず、コクがあって生地に対抗できる強さが生まれています。 飾りのアーモンドスライスも味・食感の重要なアクセント。際立っています。 ●『焼き林檎のプルンダー』 7cm×7cmほど。ふう〜っ、林檎のルビー色の美しさといったら…、ちょっと比較するものがないくらい。見蕩れてしまいます。 5時間以上かけてじっくり窯で焼いてあるので、林檎の風味が凝縮。じんわりと舌を覆ってくれます。 軸に見立てたバニラスティックの香りも甘く、生地の香ばしさとのハーモニーが楽しめます。 あっそうそう、ピスタチオも葉っぱに見立ててあるようですね。 ●『信州クルミのプルンダー』(写真上) 7cm×7cmほど。 ●『黒胡麻とココナッツのプルンダー』(写真下) 7cm×7cmほど。 信州クルミと黒胡麻は、香ばしさという点では、どちらもプルンダーと同系統の香り、歯ざわりで、二乗の美味しさを狙ったような感じです。果物系が対比なら、こちらは同調。プルンダーの活かし方にもいろいろあります。その一つひとつに、いつも小さな驚き、食べるごとに感心が絶えません。 こんなことって、ちょっとないですよ。それはもう、このお菓子の水準かいかに高いか、その一点に尽きます。 ![]() 「セセシオン」では、焼き菓子こそ鮮度が大切と、つねに新鮮なものを提供してくれるので、歯ざわりも香りも最高のものが味わえます。 そして、プルンダーを一口食べれば、焼き菓子の奥行きの深さ、窯でしっかり火を入れることの魅力を、たちどころに得心することができるでしょう。 ●『木の実のミルフィーユ』 10cm×3cm 高さ4cmほど。このパイも香ばしさを満載した、蕩けるような気分にひたれるミルフィーユ。 ナッツのクリームもカラメルクリームもあまりに美味しくて、お皿に残ったクリームをなめたくなるほど(じつはキッチンでこそっとなめました)。 もちろんパイ生地はサクサク。鮮度もよく、湿気ゼロの香り100%。このアトリエを訪れた人なら体験している、あの香りの高さは、最高の素材を使っているから。このパイにも最高級のバターが使われているのでしょう。 木の実はおもにヘーゼルナッツ。記憶が定かではないのですが、クルミも入っているような気がします。よく煎られた木の実の香ばしさは、セセシオンが鮮度にこだわる店だからこそ。そんじょそこらでめったに出会うことのできない香りです。 パイ生地、いろいろなナッツ入りのガナッシュ、カラメルクリームの組み合せ。そしてトッピングにヘーゼルナッツとクルミ。パイ生地はそれぞれチョコレートでコーティングされています。どの部分も研ぎすまされた味わい。 ヘーゼルナッツ(またはアーモンド)とチョコレートはジャンドゥヤとして知られるように、古典的な組み合わせ。そこへさらにキャラメルとパイ。香りとコクを足していって、味が濁らないところが最高の技と言えるでしょう。素晴らしいッ! 「セセシオン」さんは、一見、おとなしい品揃えの店に思えるかもしれません。焼き菓子やチョコレートなど、ダークな色合いもその印象を深めているでしょう。 でも、派手さはなくとも、伝統的なお菓子に新しい息吹を吹き込みつづけていることを思えば、阪神間でいま最も革新的なお店。そう私たちは位置づけています。 ●『紅玉のプルンダー』(価格失念) 『洋梨のプルンダー』380円 『信州クルミのプルンダー』350円 『黒胡麻とココナッツのプルンダー』350円 『焼き林檎のプルンダー』380円 『木の実のミルフィーユ』430円 ●「セセシオン」 神戸市東灘区御影町御影字城ノ前1486 TEL078-854-2678 定休日/水曜 ※ブログ「パイ日和・おまけ」(http://pie-omake.at.webry.info/)、はじめました。よかったら、どうぞ。 |
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