パイ日和
コムトゥジュール『ミルフィーユ』『タルトタタン』『パスティス』
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作成日時 : 2006/10/23 22:46
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北山通を西へ賀茂川を渡ってすぐのところにある「コムトゥジュール」さん。
蜂谷シェフが開業して、もう10年になるそうです。いまや京都を代表する人気店ですね。
一度訪れれば、その人気を支える実力のほどがショーケースから伝わってくることでしょう。生ケーキの彩りの豊かさに加えて半生の焼きっぱなしケーキの棚、焼菓子の棚にもじつに生き生きした表情のお菓子たちが顔を揃えています。
嬉しいことに、シェフは「うちの一番大切にしている生地はパイです」と言い切っておられます。
ただ、夏場にかぎって看板商品の『ミルフィーユ』はお休み。「夏ごろお伺いした時はなかったので」(05年7月25日登場、その時は『さくらんぼのタルトレット』)と言うと、申し訳なさそうに「ほんと自分のわがままですみません」ととってもやさしいお答え。
夏場は冷蔵ケースの湿度がより高くなるのか、パイが湿気やすく「自分のパイがこの程度と思われたくない」ということだそうです。思い入れの強さが分かります。
こちらは、小麦粉はすべての商品、100%国産小麦を使用。生地本来のうま味を大切にされているのですね。そして、リキュールで味付けして風味の足りない果物を使うことが大嫌いだそう。
いい素材を選び、素材の風味そのもので勝負をしておられるからこそ、シンプルな『ミルフィーユ』を看板商品にする自信が生まれるのですね。
これまで食べ損なっていた、本命の『ミルフィーユ』にやっと今回出会うことができました(やった〜!)。これを中心にパイを3種ご紹介しましょう。
●『ミルフィーユ』 8.5×4cm 高さ6.5cmほど。
うわぁ〜、なんと香り高く、よく浮いたハラハラとした生地であることか。蜂谷シェフの思いのたけがパイ生地の姿を見るだけで伝わってきます。
パイ生地の香ばしさが格別なのは小麦のせい? 折りの技のせい? いやいや、焼きが素晴らしいから? きっとすべてが揃わないと成り立たないのでしょうね。
4つのパイの層の間に下からフランボワーズのジャム、カスタード(生クリーム、バター少々入り)、生クリームの順にサンドされています。パイとクリームを存分に味わえるオーソドックスなミルフィーユですが、単調にならないようにと、フランボワーズの甘酸っぱさが添えられています。なんとも心憎い配慮。
パイにナイフを入れると、刃の先が当たるだけで層がハラハラと剥がれて、食べる時には1層1層を単独で意識してしまう感じです。
サクサク心地よい食感・生地の旨味。カスタードのこく、さらりとした生クリーム、そして合間にフランボワーズの軽い刺激。
ああ、なんという繊細でいて力強いパイなんだろう。なんて心憎い計算なんだろう。一口ごとに舌が喜ぶだけでなく、心が踊ります。心に刻まれるような味わい、お見事です!
●『タルトタタン』 一辺11cm 高さ3cmほど。
リンゴは紅玉しか使わないそうです。十分な酸味ととろとろに溶ける口当たり、これこそリンゴだ、ということですね。
そして遠慮なく加えた砂糖でリンゴの旨味を最大限に引き出すことに成功しています。薄ーくクレームダマンドとスポンジを敷き込むことで、底のフィユタージュもサクサク感を保ったまま。
口に入れると、たっぷりの芳醇濃厚なとろとろリンゴ。それに香り高いさくさくのパイが響き合って…、しばし陶〜然。濃厚にも関わらず、澄んだきれいな味わいです。
なお、ご本人は途中で変化が欲しくなるそうで、生クリームとクリームチーズを合わせたクリームが添えられています。これも至福の味。1個を食べ進む時間経過、味の印象の経過を綿密に考え抜いているのだなぁ、と感じました。
●『パスティス』 底の直径6.5cmほど。
薄い紙をクシャと丸めたような姿、可愛いですね。パートフィロのパリパリと崩れる、はかなさの快感。まるで羽のような軽やかさ。
年甲斐もなく、また“最高!”と叫んでしまいました。
なかは薄いパイ生地とスポンジを敷いてあり、その上にリンゴのスライスと味を強調するためのリンゴジャム。
果実の濃縮されたジャムによって、リンゴの鮮烈な酸味がさーっと広がります。
いいですよぉ、屈指のできばえです。
最近の京都の洋菓子界は生地ものに優れていることで目立っています。全国的に有名な某店のオープン以来、その傾向が強まった感があります。ですが、蜂谷シェフはそれ以前からこの路線を邁進していたのですから、敬意を表したいですね。
いずれも、真摯な姿勢と細かな気配りで、素朴で力強い「食」本来の姿を追求していると感じさせます。
私たち、蜂谷シェフのこと、パイの名手、と勝手に名付けました。 世に少ない“まっとう”がここにはあります。
●『ミルフィーユ』380円 『タルトタタン』420円 『パスティス』350円
●「コムトゥジュール」
京都市北区小山元町50-1
TEL075-495-5188 定休日/水曜
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